地学雑誌
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鹿児島県喜界島志戸桶ビーチに漂着した伊豆小笠原弧福徳岡ノ場火山2021年8月噴火の軽石ラフト
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2022 年 131 巻 1 号 p. Cover01_01-Cover01_02

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抄録

 伊豆小笠原弧福徳岡ノ場火山は気象衛星の観測によると2021年8月13日6時頃から噴火を開始し,噴煙高度が16 kmと対流圏界面に達する大規模噴火となった(気象庁火山活動解説資料令和3年8月).噴煙柱は300 km以上離れた小笠原諸島からも観察された.さらには15日に海上保安庁が実施した航空機からの観察によって,1986年の噴火以来35年ぶりに新島が誕生していることが確認された.また衛星写真から,噴火開始と同時に海面下に変色域が出現し,その後,海面上に軽石が浮上しているのが観察された.

 軽石は多孔質の火山砕屑物である.気泡に空気が入ることによって比重が海水よりも小さくなり,筏(ラフト)のように海面上に長期間浮いて海流や風によって漂流する.この噴火によって発生した軽石ラフトは黒潮反流にのって西に流され,10月以降,大東諸島や琉球諸島に続々と漂着し,海運や漁業に大きな影響を与えている.

 喜界島は奄美大島の東方約20 kmに位置し,新第三系の島尻層群を琉球層群の石灰岩が覆う平坦な島である.島の最高地点(標高約200 m)を構成している百之台のサンゴ化石からは約10万年前の形成年代が報告されており(稲垣・大村,2006),急速な隆起によって島が形成されたことが示唆される.隆起によって形成された複雑な入り江の奥深くまで軽石が入り込んでおり,軽石が長期間滞留することが懸念されている.

(写真・解説:谷 健一郎 2021年10月16日撮影)

© 2022 公益社団法人 東京地学協会
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