地学雑誌
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指宿市山川(いぶすきしやまがわ)の伏目海岸に自噴する温泉
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2022 年 131 巻 6 号 p. Cover06_01-Cover06_02

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抄録

 鹿児島湾の湾口部に位置する阿多カルデラの西半分は陸地にあり,カルデラ内には池田湖・鰻池などの第四紀更新世以降に形成された火山地形が多く見られる.近隣には指宿温泉をはじめとする複数の温泉や噴気地帯も多く分布する.写真は,大隅半島西側の伏目地区の砂浜で,干潮時にだけ沸騰した湯の噴出が観察できる温泉である.すぐ横の崖には約6300年前に池田湖を火口とする噴火時に噴出・堆積した池田火砕流堆積物が露出する(川辺・坂口,2005).この地区内にある山川地熱発電所の開発に関係して,この地域の熱水系の研究が多方面から行われ,2000 mの掘削深度から330°Cを超える超高温熱水が発見されている(例えば,吉村・伊藤,1994).その始原熱水は海水がこのような高温で反応して生まれるが,上昇過程で陸域からの地下水に希釈され,またさまざまな鉱物の沈殿によって,湧出する熱水の水質は変化していると説明されている(例えば,Okada et al., 2000).周辺には市営の温泉施設・砂蒸し風呂温泉のほかに,かつて温泉水を蒸発させて製塩していた塩田跡などもある.背後に見える独立峰は日本百名山の一つ開聞岳(標高942 m)である.この地域は火山と地熱を体感できる地質学・地球化学の第一級の研究フィールドである.

(写真・説明:益田晴恵)

© 2022 公益社団法人 東京地学協会
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