地学雑誌
Online ISSN : 1884-0884
Print ISSN : 0022-135X
ISSN-L : 0022-135X
表紙
紀伊半島南岸の「フェニックス褶曲」
ジャーナル フリー

2023 年 132 巻 3 号 p. Cover03_01-Cover03_02

詳細
抄録

 紀伊半島南部に分布する古第三系~新第三系の牟婁(むろ)層群佐本川(さもとがわ)層は,四万十帯南帯の付加体を構成する砂岩・泥岩互層である.そのなかには堆積物がまだ未固結時に形成されたさまざまな規模の褶曲構造が見られる.写真は和歌山県西牟婁郡すさみ町口和深(くちわぶか)付近の海岸で観察される褶曲の好例である.かつて重力性のスランプ褶曲と考えられていたが,場所によって褶曲軸の倒れる方向が正反対のものもあることから,現在では付加体形成時の高間隙水圧下で形成された構造と判断されている.とくに目を引くこの褶曲露頭は,付近の小字(こあざ)の地名である天鳥(あまどり)にちなむ「フェニックス褶曲」という愛称をもつ.中央の「>」状褶曲上部の水平部分の長さは約5 mあり,迫力のある景観を提供している.ちなみに,この露頭を観察するためには,事前に南紀熊野ジオパークセンターを通じてガイドツアーに申し込む必要がある.

(写真・説明:小松原純子 2023年3月28日撮影)

© 2023 公益社団法人 東京地学協会
次の記事
feedback
Top