地学雑誌
Online ISSN : 1884-0884
Print ISSN : 0022-135X
ISSN-L : 0022-135X
中国西部, カラコルム山脈北部の海成中部ジユラ系カラチグ層と, その構造発達史上の意義
姜 春発水野 篤行〓 民朱 志直于 菁珊
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 102 巻 7 号 p. 836-848

詳細
抄録

中国西部, カラコルム山脈北部のカラチグ地域に分布する海成中部ジュラ系をカラチグ層と呼ぶ。カラチグ層は, 厚さ約2,200mを持ち, 次の3部層に区分される。すなわち, 下位から上位に向かって, 砕層岩部層, 塊状石灰岩部層, 薄層理石灰岩部層である。多数の二枚貝類, 腕足類などのほか, アンモナイト類は, 本層が中期ジュラ紀における浅海相であることを示している。カラチグ地域における本層と下位の下部二畳系・上部三畳系, 上位の上部白亜系との層位学的関係に加えて, カラコルム山脈からチベット高原中北部にかけての諸地質系統の層序・地質構造を広域的に検討した結果, 後期古生代から中生代にかけての東部テチスの構造発達史の主要な様相と, そのなかでのカラチグ層の位置づけが明らかにされた。カラチグ層は, 後期三畳紀のカラコルム-ホーシル海 (新しく提唱) がインドシナ運動によって閉じた後に, 中期ジュラ紀に東部テチスの北縁浅海部に広く堆積した主として石灰岩相の一部にあたるものである。カラチグ層と上部白亜系との間の不整合関係は後期ジュラ紀の燕山運動がカラコルム山脈北部に及び, それによって同地域の先白亜紀の基本構造ができ上ったことを示す。カラチグ地域の全地質構造は第三紀のヒマラヤ運動によって完成したものである。

著者関連情報
© Copyright (c) 東京地学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top