地学雑誌
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ランドサットTM画像を用いたアマゾン川における水域の推定
西田 眞景山 陽一肥田 登
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1998 年 107 巻 1 号 p. 61-76

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抄録

アマゾン川中下流の河川水位の変動差は, 例えば, アマゾン川河口から約1,300km上流に位置するManaus付近では年平均約10mに達し, 高水位時に水没する氾濫原はvárzeaと呼ばれている。várzeaは土壌の更新性, 漁獲量および優れた輸送条件などといったさまざまな利点を備え, アマゾン川流域においてもっとも人間活動に密着している地域である。
本研究は, アマゾン川中下流域においてvárzea域に代表される水没範囲の変化などといった水文環境の変化を念頭に置き, リモートセンシング技術を用いたvárzea域の面積推定を目的としている。várzea地域のような季節により土地被覆状況が変化する地域を推定する場合, 多時期に得られた複数の画像を用いることが一般的とされているが, 土地被覆状況に着目することで, várzea域を含む水域の推定が可能になると思われる。アマゾン川流域周辺は雲量が多いため, SAR (Synthetic Aperture Rader) データを用いた解析方法も報告されているものの, データ量および時系列的な観測といった点を考慮すると, 光学センサであるランドサット TM (Thematic Mapper) センサにより取得された画像を用いて水域を推定する手法を確立する必要がある。
そこで, 本研究では土地被覆状況に着目することにより, 1枚のTM画像からアマゾン川における水域の面積推定を試みた。具体的には, エッジデータと各画素におけるクラス占有率からミクセルとピュア画素の判別を行ない, クラス分類を行なった。クラス占有率の推定には種々の「あいまいさ」を表わすのに適するとの考えから, 簡略化ファジィ推論法を用いた。次に, 解析結果に基づいて高水位時および低水位時における水域の推定分布図を作成し, データが得られなかった高・低水位時における水域の分布状況をTM画像上から推定した。さらに, 解析領域を広域とし, その範囲においても同様の処理を施してvárzea域の推定を行なった。その結果, 本研究で設定した解析領域 (Parintins周辺) における水域は, 低水位時に比較すると高水位時では約58%増加する可能性のあることが示された。

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