地学雑誌
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JERS-1 SARデータとLandsat TMデータを用いたアマゾン川における水域推定結果の比較
景山 陽一西田 眞肥田 登
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1999 年 108 巻 5 号 p. 552-561

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抄録

アマゾン低地のような広域を対象とする場合, 衛星データを用いたモニタリングが一般的とされる。しかし, 受動センサであるランドサット5号のThematic Mapper (TM) センサにより取得された画像データ (以下, TMデータと略記する) は雲の影響を受けやすく, 雲量の多いアマゾン川流域で利用可能な複数のデータの入手は困難といった問題点を有していた。一方, JERS-1の Synthetic Aperture Radar (SAR) は気象条件・昼夜に関係なく地表を観測できるとともに, 地上分解能の高い画像データ (以下, SARデータと略記する) を取得できるため, 時系列的に地球環境のモニタリングを行なう一手段として期待されている。しかし, TMデータは測定波長域の異なる計7バンドのマルチスペクトル情報を有しているため, 土地被覆分類が比較的容易であるのに対し, SARデータは単一輝度レベル情報を有しているにすぎない。従って, 一時期に取得したSARデータから詳細な土地被覆分類を行なうことは, TMデータと比較し困難である。しかしながら, 多時期に取得された複数のSARデータを用いて解析を行なう場合でも, データ取得時における土地被覆物の特性を解析し, 詳細な土地被覆状況を把握することは必要不可欠であると思われる。
そこで本研究では, 分解能 (18m) の高いSARデータにおいて, 土地被覆状況の相違を表し得る局所フラクタル次元を用い, アマゾン川中下流域における水域推定を行なった。さらにSARデータおよびランドサットTMデータの輝度レベル情報を用いた分類結果との比較検討も試みた。その結果, SARデータの局所フラクタル次元および輝度レベル情報のどちらを用いた場合でも水質状況の判別は困難であったものの, 局所フラクタル次元を用いることにより, データ取得時の細かな土地被覆状況を再現できることを明らかにした。なお, 今回使用したSARデータとランドサットTMデータは取得時期が異なるため, 推定結果に明確な一致は認められなかったものの, SARデータの局所フラクタル次元を用いた推定結果と現地調査により得られた知見との間に矛盾点はなく, むしろ良好な対応が得られた。また, SARデータの局所フラクタル次元を用いて解析を行なった結果, 対象地域の水域は約34.2%と推定された。

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