地学雑誌
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特殊土壤および水理と地質との関連についての研究
-三重県桑名地方における調査結果を中心として-第 2 部 : 地質と水理
渡辺 和衞
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1955 年 64 巻 4 号 p. 135-146

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抄録

(1) 三重県桑名地方における調査結果を中心として, 本地域の地質および地質構造と水理との関係を記述したものである。したがつて地質および地質構造に関しては, すでに第1部に記してあるのでそれを参照されたい。
(2) この調査の問題点および結果は次の通りである。
1) 本地域の水理は, 町屋および朝明の2つの構造盆地の地質および地質構造に支配されて, それぞれ特徴をもつている。
2) 河川の流量測定は直前降雨の影響を除去して考察しなければ, かれこれ比較して水理を論ずることは無意味である。
3) 2水系についてそれぞれ unit-hydrograph を作成して, 洪水の状態を推測した。なおSynderの方法が本地域の実状に適していることを認めた。
4) 水系の判別に新しい方法を適用してみたが, 未だ決定的のものとまでは断定できなかつた。
5) 水質の方面から2, 3の新しい事実が認められた。なお温泉について, この温度の上昇可能度を取扱つた。
6) 土地災害については小規模な崩土を認めたのみであつたが, 地たりの発生しない理由を最上地区と比較しつつ論じた!粘土鉱物のなかで, illiteが地辷りを発生させる相当主要な原因であることが推定された。たゞしilliteのみではあまりたらないが, montmorillonite との共存によつて辷るのであろう。
本地域内の水資源を論ずるにあたつて気づくことは, 本地域の養老・鈴鹿両山脈に囲まれた比較的単純な構造であることである。それゆえ水理地質を考えるのに誠にまとまりがよく, 1つの模式地としての価値が甚だ高い。加うるに3.00°の等年代線によつて示されるように, 大きな構造盆地をなし, これが2つの単元に分けられている。しかも両盆地の境界をかなり大きな断層 (A-B) が通過してやゝ複雑性を与えている (第1部附図参照) 。

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