地学雑誌
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日本の都市の中心商店街とその店舗
杉村 暢二
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1958 年 67 巻 4 号 p. 208-218

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抄録

以上述べてきたことは, つぎの如く要約されるであろう。
(1) 都市内部において, 周辺部から中間, 都心地域えと及ぶにつれて, そこにおける中心商店街は, 衣料, 身廻品および文化品を主とする買廻り品で構成される割合が著しくなり, これと同じ傾向は, 小都市から大都市へ進む, 都市規模の変化において認められる。
(2) 中心商店街における小売店舗の売場面積とその間口, 奥行との関係をみると, 巨大大都市の中心商店街では, 小売商の売場面積の平均坪数は大きく, また, 通りの商業的価値に左右され, 間口に対する奥行が広くなり, したがつて, かかる店舗の形態に適する文化品店舗が選ばれる。かかる傾向は都市地域においてもみとめられる。
(3) 中心商店街の店舗の専業化と百貨店とは密接な関係があり, 都市における百貨店の使用面積 (人口1 人当りの坪数) の増大と共に, 人口1人当りの売上高は高くなるという傾向がおおむね指摘される。
なお, 都市で消費される小売金額からみた後背地人口率の増大と, 前述の百貨店の人口1人当りの売上高との関係が見出される。さらに, 百貨店の位置について考えると, 中心商店街の及ぶ中央か, 入口附近にあるものが, 概して売場面積に対する売上高が一層高い傾向にある。
(4) 中心商店街の店舗構成に関する変質作用について, 一般にいえることは昭和 10 年に比較して, 今日では洋服商が増加し, これに対して, 呉服商が減少を示していることである。
さらに, 都市規模によつて検討すると, 巨大都市では, 価格の比較的一定した薬品, 化粧, 書籍, 文具などが著しく減少してきたことが看取される。 中心商店街の歓楽的性格をそなえる喫茶, 飲食店の増減についてみると, 東京の盛場銀座では, 戦後急激な増加を示しているが, これに対して, 大阪の盛場心斎橋筋, 横浜の伊勢佐木, 名古屋の広小路などは著しい減少となつている。また, 中心商店街に占める事業所の数は, 3分の2に減少していることが看取される。

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