地学雑誌
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道路網の階層化システム静岡西部地域の例
土井 重彦
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1975 年 84 巻 5 号 p. 277-285

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抄録

最近の交通地理学の研究は地域の空間的組織, つまり空間的構造と空間的過程を解明する一側面として進められている。その多くは交通網に関するものであり, とりわけその連結性と結節点の相対的近接性を測定し, 評価するといつた網全体および結節点の諸性質の分析に焦点をあてている。しかし, 交通網の一方の構成要素である連鎖線の性質に関する分析は上記の2分析と同様に重要であるにもかかわらず, ほとんどなされていない。この分析に基礎を与えるのは, 交通網内での連鎖線の相対的重要性を測定, あるいはそれを階層的に分類することであると考える。それによつて連鎖線に関連した一連の分析が計量的に処理可能となろう。
このような階層的分類のシステム化はいくつか試みられている。たとえば, WALLACE (1958), KISSLING (1969), アメリカ合衆国交通局 (1969), 建設省 (1972) 等がある。それらはいずれも複雑な交通流のデータと計算を要求しており, 実際には非常に困難な問題をともなつているのが常である。ところで, 地形学, 水文学で用いられている水流次数化システム (榧根, 1973) を直接的に応用することによつて, 比較的単純に交通網の連鎖線を階層的に分類することが可能となることを示したのがHAGGETT (1967) とRIDDELL (1973) である。それらはいずれも強力な単一の結節点に着目しての分類システムである。しかし, 実際の交通網は水系網に比べて, いつそう複雑であり, 複数の結節点を持つている。
そこで, 本論では水流次数化システムをさらに拡大することによつて, 複数の結節点を含んだ地域的道路網の連鎖線を階層的に分類するシステムを提示する。また, このシステムを実証する意味で, 階層化された連鎖線と交通流の関係を, 静岡西部地域の道路網を例に述べることにする。

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