本研究では,既設盛土の耐震診断において弱点箇所を抽出するスクリーニングへの活用を目的として,既設盛土材料のせん断強度を概略的に設定する手法を検討した。概略診断に使用する物性値は土質ごとに検討し,粘性土は既設盛土の採取データから求めた平均値と標準偏差の差分から,砂質土は粒度特性と密度を考慮した内部摩擦角の推定値と不飽和強度特性を考慮した粘着力からせん断強度定数を設定する手法を提案した。提案手法の適用範囲を検討するため,鉄道盛土の設計に用いる円弧すべり法による安定解析を行った結果,粘性土は盛土高さ 4.5 m 程度まで,砂質土は分級された土質材料において,密度が高い場合では盛土高さ 6.0 m 程度まで L1 地震時の盛土体の安定を満足し,実際の既設盛土の耐震性能と整合する適用範囲が明らかとなった。