本研究では,河川堤防が決壊に至る進行的に発生するすべりに着目し,その発生に関係する要因の解析的検討を試みた。具体的には,変形の進行形態が再現できる粒子法の一種であるSPH法を用いて,進行性のすべりが観測された大型模型実験を対象に再現解析を実施した。再現解析では,飽和領域の間隙水圧と不飽和領域のマトリックサクションを取扱い可能な土水連成方法を提案し,変形強度特性の影響を考慮できるモールクーロンモデルを採用した。本検討より,1) 堤体内浸潤線の位置が低い場合は,不飽和領域のマトリックサクションが卓越した変形の進行形態,堤体内浸潤線の位置が高い場合は飽和領域のすべり面が卓越した変形の進行形態が再現された。2) 泥濘化による法尻強度低下,締固め不足による塑性変形時の過剰間隙水圧の発生が,河川堤防の進行性破壊につながる可能性があることが解析的検討により示唆された。