日本老年療法学会誌
Online ISSN : 2436-908X
原著
地域在住認知症高齢者のADL能力と要介護度との関連
―生活行為工程分析表(PADA-D)を用いた横断的探索研究
下木原 俊 田平 隆行堀田 牧
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2024 年 3 巻 論文ID: 2024_002_OA

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抄録

【目的】本研究では,地域在住認知症高齢者のADL能力を詳細に評価し,要介護度との関連性を探索的に検討することを目的とした。【方法】対象者は,国内の外来及び通所施設を利用する地域在住認知症高齢者とした。対象者のADL能力は生活行為工程分析表(PADA-D)にて評価した。多変量解析にて,要介護認定無しおよび要支援群と軽度要介護群(要介護1-2)の2群で,ADLと要介護度との関連性を検討した。さらに,要介護度の重症度と有意な関連を認めた各ADL項目を構成する工程の点数を比較した。【結果】解析対象となった地域在住認知症高齢者は105名(平均年齢80.36±8.41歳,女性73%)であった。PADA-DのADL項目のうち,調理・家事・買い物・洗濯・服薬管理・金銭管理にて,要介護度の重症度と有意な関連を認めた(p<.05)。各ADL工程の点数比較では,家事の「寝具管理」「ゴミ捨て」,買い物の「目的の売場に行く」「商品選択」,洗濯の「洗濯機に入れる」「スタートさせる」,金銭管理の「日常の現金使用」が要介護1-2の高齢者でより障害されていた(p<.05)。【結論】地域在住認知症高齢者では,手段的ADLのうち確認・操作・管理の要素を含む工程障害が要介護度の悪化との関連性が高い可能性がある。認定症ケア従事者は,PADA-Dのような詳細なADL評価を行い,環境・人的側面から自立支援を行う必要がある。

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© 2024 一般社団法人 日本老年療法学会
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