冷痛発現中の追加された冷痛増強刺激によって惹起する脳ネットワークの変化と感情反応の関連性を明らかにすることを目的に,健常者15名を対象に冷痛刺激(6-7℃)を加え,11項目で構成した感情尺度と頭皮上の脳波の変化から検討した.感情尺度の結果で因子分析を行い,「覚醒度」と「感情価」の2因子を抽出した.この2因子は,覚醒度が高い群と低い群,不快度が高い群と低い群に区分された.パワー値の変化が認められたθおよびLow β帯域の脳内信号源をsLORETA法で推定後,制約付き主成分分析にて機能的脳ネットワークの構成とその活動度を算出した.追加的な冷痛増強刺激時の主要となる脳ネットワークは,注意機能等の認知的処理に関連する前頭部内側面の活動が,覚醒度と不快度の増大に関与する一方,痛覚の認知処理に対する調整機能を反映した刺激対側の島皮質の活動の減少は,疼痛刺激による不快度の抑制に影響することが明らかとなった.