抄録
ストレスや怒りの感情は,時に怒りをぶつける形のストレスコーピングとして表出され,この回避は重要である.一方,心身健康科学は心身相関に関し文化的視点を含め,Knowledge for well-beingの創出を目的とする.
そこで本研究では聴取型音楽を用い,特に成人女性の「怒り」に及ぼす影響を検討した.また心身健康科学的観点から,育児ストレスコーピング法として聴取型音楽の有用性を類推した.
方法は,乳幼児保護者を含む成人女性計43名を音楽使用・未使用の群に任意区分し,聴取有無別に気分変化をProfile of Mood States短縮版(以下POMS)を用い類推し,統計学的処理を経て分析を行った.
結果,1.下位尺度「活気」の増加,「混乱」の減少,2.「怒る」「すぐかっとなる」の減少,3.音楽以外の要素も下位尺度,設問項目の一部の減少の効果を認めた.
以上より聴取型音楽は成人女性の気分変容効果があり,怒りをぶつけるコーピング回避に有用と類推された.また心身健康科学の観点から,育児ストレスの解消においては適宜音楽聴取体験の活用が有用と考えられた.