抄録
精神保健福祉・医療の現場では,調理して会食する一連の行動である「料理」はすでに施設の活動のひとつとして定期的な料理教室や調理実習の形で,あるいは,年間行事のひとつとして実施されているケースが多い.しかし,料理はその日常性や必然性ゆえに対象者に対して,「療法」としての目的ではなく自立のための「作業訓練」,あるいは作ったものを食べる会食を主な目的としている.したがって,対象者は料理を他者との「コミュニケーション」の場としていたり,「レクリエーション」の一環と捉えている.
そこで,これまで作業訓練や参加者同士のコミュニケーション,または,レクリエーションとして実施されてきた「料理」を「療法」として捉え,効果的なプログラムとして実践するならば,「料理療法は成立する」との仮説をたてて,精神保健福祉・医療の現場における,「料理療法」実践のための課題と展望について検証を試みた.
本研究では,全国の精神保健センターにおいて自立支援を目的として活動している現場の担当者へアンケートを実施した.その結果,参加者及び担当者の「料理療法」への期待は高く,「料理」の「療法」としての効果検証データを積み重ねていくことと,そのためには,「料理」を「療法」のひとつとして実施するための施設やスタッフなどの協力体制を築き上げていくことが,今後の課題であると考察された.