抄録
当院に来院している高齢者(75歳以上85歳以下)のフレイル(オーラルフレイル含む)の現状を知るため,質問紙法による調査を行った.
調査内容は,交通手段,残存歯数・歯周病の進行状況の理解,口腔の認知度,体重・歩く速さ,缶の開けにくさ,食事,会話,口腔の機能,社会活動,口腔機能検査や口腔機能トレーニングの希望の有無,今後の心配事,について個別面接または配票調査法にて調査した.結果について調査対象者のうち現在歯数20歯以上の者(20歯以上群)と20歯未満の者(20歯未満群)を比較した.
残存歯数,歯周病進行度を理解している者は,それぞれ16%,21%であった.体力面では,歩く速度で,60%の者が遅さを感じていた.口腔では,口渇55%,唇・舌・頰を嚙む38%,むせ・誤嚥35%の者に症状があり,フレイルの存在をうかがわせる結果であった.
20歯以上群は,自分で運転してくる,口腔の認知度,体重の変化なし,なんでも食べられる,口渇なし,むせ・誤嚥なし,社会活動を何かしている,の項目で20歯未満群よりも比率が高かった.逆に舌・頰・口唇を嚙む,口腔機能検査希望ならびにそのトレーニングへの興味,では20歯未満群のほうが高かった.歩く速度,蓋の開けにくさ,食事にかかる時間,思いどおりに喋れる,食べこぼし,ではあまり違いがみられなかった.通院が困難になって一番心配なことは,交通手段をどう確保するかであった.