抄録
スクールカウンセラー制度は導入から30年以上が経過し,全校配置が行われるなど普及が進み,現在も配置増加が進められている。その一方で,スクールカウンセラーの質と成果について疑問視する声もあり,研究が進められている。本研究ではこれらの結果も踏まえながらスクールカウンセラーの質と成果について,働き方も含めながら今一度検討することを目的とした。第一に,スクールカウンセラーの成果を示す指標が難しいことが指摘された。例えば事象の発生数を指標にするならば,現状,事象発生後の対応に当たるスクールカウンセラーが多く,予防活動には手を出せていないスクールカウンセラーも多いからである。事象の改善による現象数減少は認められるが,新規発生数との間で相殺されることもあるだろう。これはスクールカウンセラーの働き方が多様化しており,相談件数が多く相談活動に終止するスクールカウンセラーも多いことに起因する。そして,教員へのコンサルテーションや心理教育などの予防活動を求められているスクールカウンセラーはその準備や活動のために相談活動を抑制されることもあるほど負担が大きいことが示された。また不慣れな活動であることから困難を感じ,調整に戸惑うスクールカウンセラーもいる。これらのことから,相談活動の多いスクールカウンセラーに関しては配置時間数の増加が必要であり,実情にあわせた配置の改善が行われるべきであろう。また,その他のスクールカウンセラーに対しても予防活動の心理的・時間的負荷を下げるための工夫が必要であり,スクールカウンセラーの行う心理教育についてもっと周知することが必要であることが示された。