超音波医学
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症例報告
乳腺matrix-producing carcinomaの1例
山口 実紀小原 正巳磯部 幸子小川 ゆかり加藤 寿美子本間 加奈子里見 理恵若杉 聡戸崎 光宏
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2011 年 38 巻 3 号 p. 291-296

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抄録

症例は51歳,女性.右乳房腫瘤を主訴に2007年5月に他院を受診した.細胞診でclassVと診断され,同年に当院を紹介受診した.視触診で右CD領域に円形,表面不整,可動性のある硬い腫瘤を触知した.マンモグラフィで境界不明瞭な腫瘤を認めた.超音波検査で2.5×2.0 cm大,境界明瞭粗糙,内部不均一な分葉状腫瘤を呈し,ドプラ法で辺縁に豊富な血流を認めた.MRIではT2強調像で2.6 cm大の高信号腫瘤を認め,病変は辺縁のみが造影された.内部に広範な壊死を伴う腫瘤,もしくはmatrix-producing carcinoma(以下,MPC)が疑われた.針生検でMPCと診断され手術となった.MPCは,乳癌のmetaplasic carcinomaの一亜型であり,比較的稀な腫瘍である.本症例では超音波像と病理組織像を一対一で対比した.腫瘤辺縁部の癌腫上皮成分は低エコーであった.基質に富み癌細胞の少ない領域は,音響学的には一様なため,超音波像では内部のきわめて低エコーないし無エコーの領域に相当すると考えた.粘液腫様基質で癌細胞の多い領域では,癌細胞が基質の中に浮かぶように存在するために後方散乱を来し,高エコーに描出されると推測した.これまでMPCの超音波所見についての報告は少ないが,MPCの内部組織構造の把握には超音波が有用である可能性があると考えられた.

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© 2011 一般社団法人 日本超音波医学会
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