日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第52回大会・2009例会
セッションID: B3-5
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口頭発表
英国の家庭科における環境教育の最近の動向
*井元 りえ
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抄録

目的:イングランドの家庭科関連科目であるPSHEとデザインとテクノロジー(D&T)における環境教育の最近の動向を探ることを目的とする。 方法:2007年9月にイングランドの2地域において、初等学校1校、中等学校5校を訪問調査し、インタビュー及び授業参観を実施し、その結果を分析した。また、2009年3月に、ロンドン市立大学の教員へのインタビュー、及び初等学校1校において追跡調査を行い、その結果を分析した。 結果: 1. 初等学校 D&Tにおいて、教師は、課題を作らせる際に、健康と安全の視点から、環境に配慮しながらふさわしい材料や道具を用い、計画を注意深く行っている。PSHEでは、調査した学校では、環境教育はあまり含まれてはいなかった。しかし、ナショナルカリキュラムにおいては、PSHEと他教科との関連について指摘があり、「地理」の内容と関連させて、「地域の環境を改善する方法を議論する機会を提供すること。また、フェアトレード組織、コミックリリーフ(1985年から毎年3月に行われる英国芸能人による慈善企画)、ユニセフなどの目標についても議論すること。」としている。また、学校全体としてエコスクール活動が行われている。これは、英国の特に初等学校全体に広がっている活動である。調査した学校では、学校生活において省エネルギー(電気を計測し変化を評価)、水やゴミの節約、生ゴミのコンポスト化、鳥の巣箱かけ、靴や衣服のリサイクルを進めていた。 2. 中等学校 (1)公立  PSHEではテキストは使わず、学校集会の中で行ったり、学年ごとに年に3日まとめて行っていた。市民性教育(Citizenship)は週2回の授業を行っている。方法は、ビデオを用いて様々な学校生活や家庭生活における問題の解決方法について考えたり、議論したりしていた。例えば、「学校とは何のためにあるのか?」という課題について生徒が議論していた。D&Tの授業では、古いシャツにろうけつ染めをして、新しく生まれ変わらせる実習をしていた。 (2)私立  私立学校では、ナショナルカリキュラムに従わず、独自の教育がなされている。D&Tは、中学1年生の授業では、木工で車のデザインをする内容であった。また、高校3年生の授業は、週に35分の授業が7回あり、生徒6名が1年間かけて一つの作品(椅子など)を作っていた。 3. エコスクール活動  授業以外の環境活動として注目されるのが、初等学校で進められていたエコスクール活動である。英国政府は、2020年までにすべての学校が持続可能な学校になることを目指しており、子ども・学校・家族局は、2006年に持続可能な学校の枠組みを開始した。エコスクールは、環境教育財団によって国際的に運営されている5つの環境教育プログラムのうちの1つであり、世界中の46カ国の4万校以上が参加している。子どもセンター、保育園、初等学校、中等学校、特別学校などが参加している。エコスクールに登録すると、学校は、7つのステップで環境テーマに取り組む。テーマは、ゴミ問題、健康な生活と生物多様性など様々である。子どもたちは、エコ委員会をつくり、活動の推進役となり、計測と監視を行う。活動に応じて、銅賞、銀賞及び最高位のグリーンフラッグ賞の3つの賞が与えられる。銅賞と銀賞は、ウェブ上で適格審査に合格すると得られる賞であり、グリーンフラッグ賞はENCAMS (Environmental Campaigns)の外部評価により得られる賞である。ENCAMSは、環境チャリティーであり、英国をきれいにするキャンペーン(Keep Britain Tidy campaign)を50年以上にわたって行ってきている。

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© 2009 日本家庭科教育学会
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