日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
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  • 山崎 真澄, 池﨑 喜美惠
    セッションID: A1-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]
    「親になることについての経験や学習」を学校の授業で学んだと回答した男性は1.8%(NWEC2005年調査)であり、多くの場合は特に何もしないと回答した男性は52.5%と多い傾向にある1)。学習指導要領には「乳幼児との触れ合いや交流などの実践的な活動を取り入れるよう努めること。」とあるが、全寮制の高校であり、平日の外出が管理上で難しいという学校の特性上、保育体験学習を実施することが困難であるため、保育分野の授業では視聴覚教材を用い、乳幼児の様子を授業に取り入れている。子どもと接することが好きな人が「子どもを育てたい」と思うだろうが、父親となった際、子育てをするとしたらどのようなことをしたいか。と問うたところ、「一緒に遊ぶ」と回答した生徒が多くいた。周囲の子育てをしている父親も、初めは子育てに参加したいが育児の方法が分からなかったりする人も多くいる。そこで、本研究では男子高校生が子育てに対しどのように考えているのか調査し、保育の授業で親の役割と子育てについて認識を深めさせるための有用的な授業方法の検討を行う。
    [方法]
     調査時期は2018年1月K高等学校生徒233名に対し、子どもに対する意識や子育ての印象について5件法で回答させた。また、子どもの頃、一緒に遊んでいた人については4件法で尋ねた。さらに、自由記述により子育てをするとしたら、どのようなことをしたいかについて調査した。アンケート実施後、「ママたちが非常事態シリーズ2(NHK)」を視聴し、子育てに対する感想を記入させた。分析方法は統計ソフトSPSSを使用し、単純集計やクロス集計等を行った。
    [結果及び考察]
    1 子どもが好きな生徒は、子どもが「かわいい」96.6%、「柔らかい」89.8%、「嬉しい」66%、「美しい」22.3%、「あたたかい」86.4%と回答し、子どもが嫌いな生徒との間に有意差が認められた。
    2 子どもが嫌いな生徒は、子どもが「面倒くさい」80%、「汚い」64%、「邪魔」40%と回答し、子どもが好きな生徒との間に有意差が認められた。
    3 子どもが好きな生徒は、「成長を見るのが楽しい」94.7%、「触れ合いが楽しい」93.2%、「家族の絆が深まる」89.8%、「生活に張りがある」75.7%と回答し、子どもが嫌いな生徒との間に有意差が認められた。
    4 子どもを好き嫌いに関わらず、多くの生徒は育児の関わり方として「一緒に遊ぶ」を挙げている生徒が多く見られた。その中でも、小さな子どもと接する機会のある生徒は育児の関わり方としては「ごっこ遊び」「おむつ替え」「寝かしつけ」等具体的なことを記入していた。
     DVDを視聴し、子どもが好きと回答した生徒が育児に関して感じたこととしては「育児=楽しい、幸せではないと感じた。しかし、育児をすることによって得られるものも多くあるということを知った。」や「子育ては大変だが、夫婦で考えることで家庭内の絆がより深まる。父親になったらおんぶ等積極的に子育てに参加したい。」という具体的で好意的なことを感想で述べていた。
     子どもが好きと回答した生徒が約90%と高い割合であるため、子どもに対し好意的な意識の生徒が多く、保育分野の授業を実施しやすいという特性がある。保育分野の授業に高校生が子どもと直接接しなくても、子育ての大変な面を見せたとしても、その内容の解決方法が具体的に用いられているような内容のDVDを用いることにより、生徒の子育てに対する考えを深め、好意的なのイメージを持ち、積極的に子育てに関わろうとする姿勢をみることができる。この育児に対する姿勢を今回の授業を体験した生徒が5年後、10年後に実践したという感想を聞けるとより授業の効果が見えてくると思う。
    1)牧野カツコ編 国際比較にみる世界の家族と子育て ミネルヴァ書房 2010 P130
  • 叶内 茜
    セッションID: A1-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
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    【背景と目的】
     中学校家庭科では、3年間で87.5時間という限られた授業時間の中で多岐にわたる内容を教える必要がある。現行の学習指導要領の「A家族家庭と子供の成長」については、全日本中学校技術・家庭科研究会(2016)の調査結果より16~20時間を配当している中学校が最も多いことが明らかになっている。領域Aのうち保育に関する内容のみに絞ると学習時間はさらに少ない。また、学習指導要領に示されている内容をどのように教えるのかは教師の裁量によるところが大きいといえる。過去10年ほどの中学校家庭科保育学習に関する先行研究の多くは、ふれ合い体験について扱ったものが中心である。これは、現行の学習指導要領より幼児とのふれ合い体験が必修化されたことの影響が大きいと考えられる。しかし、ふれ合い体験そのものに充てる時間は2時間程度であることが多く(岡野ら,2012等)、ふれ合い体験以外の部分の保育に関する学習について、どのような学習が行われているのかはあまり明らかになっていない。本研究ではこの点を明らかにしていきたい。
    【方法】
     家庭科の学習では教師によって使用する教材が異なるが、教科書の発行に関する臨時措置法第2条によって、教科書は「教科の主たる教材」として位置づけられている。そのため、教科書の内容を分析することで保育に関する学習内容を整理することを試みる。
     はじめに、現行の平成20年告示の中学校家庭科の学習指導要領解説では保育領域についてどのように規定されているのか、その内容をカテゴリーに分けて整理する。
     次に、現在中学校で使用されている平成28年度~平成31年度用の中学校技術・家庭(家庭分野)の教科書では、学習指導要領に記載されている保育領域の内容についてどのような記述があるのか、先に整理した学習指導要領解説のカテゴリーをもとに明らかにする。分析に使用する教科書は、中学校技術・家庭科(家庭分野)の教科書として出版されている全3社3冊(開隆堂・教育図書・東京書籍)である。分析にあたり、教科書の内容と学習指導要領との対照および各教科書の特色を把握するため、各出版社が公開している編修趣意書を参考とした。
    【結果と考察】
     学習指導要領解説については、内容A(3)のア~ウについて、カテゴリーに分けることができた。内容エについては、ア~ウのすべてと関連が深いため、独立したカテゴリーは設けないこととした。
     教科書については、発展的な学習内容の記述を含め、教科書の総頁に占める保育領域頁の割合は11.2~13.1%であった。教科書の内容のうち基本的生活習慣については、基本的生活習慣とは何を指すのかが中心に書かれているものと、年齢の目安と出来る内容が細かく載っているものに分かれた。学習指導要領解説では「大人が適切な時期と方法を考えて身に付けさせる必要があることを理解させる」と示されており、幼児は発達の個人差も大きいことから中学校段階でどこまで理解させる必要があるのかは検討が必要である。
     各社で頁数の配当に最も差があったのは、幼児とのふれ合いに関する内容であった。最も少ないものが6頁、多いものが12頁であった。各社とも幼児とのかかわり方のポイントや注意事項について書かれていた点は共通していたが、頁数の多い教科書ではふれ合い体験の全体の流れが細かく記載されていた。
     学習指導要領解説では示されていないが、「社会的生活習慣」や「子育てを支える機関や施設」「子どもの権利条約・児童憲章」についてはいずれの教科書でも扱われていた。
    【今後の課題】
     今後は中学校での学習内容と小学校や高等学校での保育領域の学習内容との系統的な学びについても検討していきたい。

    本研究はJSPS科研費17J08852の助成を受けたものである。
  • 松岡 晃代, 倉持 清美
    セッションID: A1-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
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    【目的】
     中学生が幼児と関わることについては、現行学習指導要領からすべての生徒に履修することとされ、新学習指導要領でも、「幼児とのよりよい関わり方について考え、工夫すること」と引き続き示されている。また、同学習指導要領解説書には、直接的な体験を通して関わり方について考え、関わり方を検討できるようにすることが示され、直接的な体験が推進されている。また、2017年1月には内閣府、文部科学省、厚生労働省の3者連名で、各都道府県・政令指定都市教育委員会、児童福祉主管課、少子化対策主管課等宛てに、「乳幼児触れ合い体験の推進について」事務連絡も発出され、関係部局で連携を図りながら、積極的な直接的体験の実施を求めている。少子化対策とも関連を図りながら教育・福祉の両面から触れ合い体験を推進していこうという国の施策としての方向性を感じる。
    一方、実際に授業を実施する中学校家庭科教員は直接的な体験の実施についてどのように捉えているのかについては、学習指導要領上触れ合い体験がすべての生徒が履修することとされてなかった時代に伊藤(2007)が、現行学習指導要領移行措置期間に新垣ら(2010)が検討している。両研究からは、直接的な体験実施における課題が示され、実施の困難性が明らかになっている。そこで、本研究では、その課題解決につなげるため、現場教員が直接的な体験実施のために何を必要と考えているのか明らかにすることを目的とする。その際、現行学習指導要領実施から5年以上経過し、現場での実践も積み重ねられた今、直接的な体験実施に向けて教育委員会の支援を受けている地域の教員と、そうでない地域の教員の意識の比較も可能と考え実施する。支援有無により、教員が必要と考える支援に違いがあるのかについても検討していきたい。
    【研究方法】

     本研究では質問紙調査より、直接的な体験実施のために中学校家庭科教員が必要と考える事項を調査し、推進方策を探った。方法は郵送調査法(2市)と集合調査法(4市)で実施した。(調査時期2017年1月~8月)調査紙は、触れ合い体験実施について教育委員会からの支援を受けている群(3市:209名)と、そうでない群3市:215名)に配布し、回収率は合計50.9%(216名)であった。うち、欠損値のない有効回答率は合計45.3%(192名)であった。質問項目は、「勤務校での勤務形態」「平成28年度の直接的な体験実施有無」ならびに「実施形態」、「直接的な体験を実施可能とするため、もしくは実施継続していくために必要と考える事項」について4件法で回答を求めた。また、直接的な体験実施のために必要な支援や、実施する際に役立った支援について自由記述形式で回答を求めた。

    【結果及び考察】

    アンケート調査の結果、「平成28年度の直接的な体験の実施」については直接的な体験を実施した教員は全体の68.8%だった。4件法で回答を求めた直接的な体験を実施するために必要と考える事項については、教育委員会の支援有無に関わらず、共に、保育施設の存在や理解ならびに職場の同僚の理解・協力が上位にあがっていた。また教員が必要と考える事項について、支援有無による差があるかを明らかにするためにt検定を行った。結果、支援を受けていない教員では、触れ合い体験を実施する学習集団規模の必要感が上回っていた。直接的な体験実施のために必要な支援や、実施する際に役立った支援についての自由記述では、4件法の結果と同様に保育施設の理解や協力、地域保護者との関係について多くの記述が見られた
     本調査から、支援のない教員は、学習集団規模の段階で立ち止まり、次への一歩を踏み出せない状況が伺えるものの、支援有無にかかわらず直接的な体験実施のために必要と考える事項は、就学前施設や学校内での理解・協力が得られるような環境を整備することであるということを明らかにすることができた。
  • 西岡 里奈, 阿部 睦子, 金子 京子, 倉持 清美, 妹尾 理子, 望月 一枝
    セッションID: A1-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    <背景と目的>
     学習指導要領の改訂により、平成29年3月に告示された小学校学習指導要領から、小学校家庭科でも「A 家族・家庭生活(3)家族や地域の人々との関わり」の中で幼児又は低学年の児童との関わりができるよう配慮することが求められている。中学校や高等学校では、幼児や小学校低学年児との関わりは行われている。しかし、小学校では特別活動などで異学年との交流は行われているものの、家庭科の授業では少ない。そこで、本研究では六年生と一年生でスイートポテトを作る交流調理実習を行うことで、新たに小学校低学年児との関わりを取り入れた授業を開発し、小学校家庭科で異なる世代の人々との関わりを学ぶことの効果を検討する。



    <方法>

    ①対象: 東京都内国立小学校六年生全3クラスのうち、1クラス34名を対象とした。このクラスについて全7時間(一年生との交流は2時間)の授業を開発した。

    ②ナラティブ分析:交流調理実習後に六年生が交流を思い出してナラティブを作成した。書かせる際には「文章で書くこと。時間の流れに合わせて、始めから終わりまで書くこと。そのとき自分が思ったことや、相手の様子・思っていることを書くこと。」とした。 

     一クラス分のナラティブを6人で読みあい、児童によるナラティブの特徴と、授業の効果をカテゴリーのまとまりとして確認した。カテゴリーは、中学校で小学校低学年児と交流を行った論文(倉持ら,2009)を用い、他のカテゴリーが抽出できる場合は、その点について話し合った。



    <開発した授業>

     六年生と一年生の交流を取り入れた学習として、以下のような授業を開発した。

    第一次:一年生の特徴を考えると同時に、自分の成長を実感できる授業を設定した。一年生との縦割り班(特別活動の異学年交流)やお世話での経験をふまえて、自分たちと一年生の違いを考えると同時に、自分が一年生だった頃の写真を見て自分の成長を実感する場を設けた。

    第二次:六年生だけで試し調理としてスイートポテト作りを行った。自分たちで試し調理を行うことで、一年生と一緒に行うときに気をつけることやどのように関わっていったらよいかを実際に調理を通して考えられるようにした。(2時間)

    第三次:試し調理をふまえて、一年生を楽しませるために交流調理実習を行うときのポイントや関わり方を考える場を設定した。

    第四次:一年生と一緒にスイートポテト作りを行った。(2時間)

    第五次:ナラティブを記入し、一年生と交流調理実習をして、一年生の様子で気付いた点等や自分の関わり方についてまとめを行った。



    <授業の効果>

     中学生のカテゴリーに当てはめて、六年生の記述を分類した結果、「問題解決」に関わる内容として、「接し方」「調理安全」「前次の学び」に細分化することができた。「接し方」とは、一年生との関わり方に言及したもので「待ち時間にあきてしまわないように、たくさん話しかけるようにした」などで、「調理安全」とは調理の際の安全に関わるもので、「前時の学び」とは「前回の授業で、一年生に楽しんでもらうために、調理器具の名前クイズをするとあったので、実際にやってみました」など既習事項を活用したものである。このことから、六年生が一年生との交流を通して様々な問題に直面したが、一年生に楽しんでもらうために自分達で課題に対して向き合い、解決していったことが分かった。
  • 金澤 良汰, 藤田 智子
    セッションID: A1-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
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    【目的】
     「家族」のかたちは時代とともに変化している。家庭科は「家庭」について学ぶ教科であり、「家庭」は「家族の人びとの生活の場」と定義されるため(牧野1993)、「家族」の学習は、「生活」の学習とともに重要な位置を占める。しかしながら、家族が多様化している現在、「家族」を定義することは難しく、高等学校家庭科教員が、家庭科で「家族」をどのように教えればいいのか、困惑している状況も指摘されている(片田江2010:三住2012)。
     これまでの研究で、家庭科の学習は、生徒たちの「家族」に関する意識や態度に少なからず影響を与えていることが明らかとなっている(中西2002)。また、家庭科における「家族」の学習は、「家族」領域だけではなく、他領域とも密接に関連しているといわれている(日本家政学会1988:牧野2006)。しかし、近年の家庭科の「家族」の学習に対する研究は、授業や教材、教員を対象にしたものが中心であり、学習者である高校生が「家族」に関する学習をどのように捉えているかは明らかとなっていない。
     そこで本研究では、現代の高校生の、家庭科における「家族」の学習に対する意識や経験について明らかにすることを目的とする。

    【方法】
     東京都内に在学している高校生10名(男子4名、女子6名)を対象にインタビュー調査を行った。一対一の半構造化インタビューで、所要時間は30分~65分である。対象者はスノーボールサンプリングによる有意抽出によって選定した。調査期間は2017年7月~12月である。対象者に了承を得た上でICレコーダーに録音し、文字起こしを行い1次データとした。大まかな質問項目ごとに、共通するキーワードに着目してコード化し分析を行った。

    【結果】
     家庭科で印象に残った授業について尋ねたところ、調理や裁縫が多く挙げられた。「家族」に関連する授業を挙げたのは、「私が個人的にそういう問題に興味があるんですけど」と、元々「家族」に関する学習について興味を持っている一人のみであった。
     「家族」に関する学習の経験については、核家族についてなど「家族」領域の授業を挙げる者が多かった。一方で、「変な詐欺みたいなのに引っかかったときに(中略)家族とどう話すかみたいな」と、他領域の内容と「家族」を結びつけた授業や、「そんな家族について話し合うみたいな授業はなかったんですけど、(中略)先生の一言で家族のこと意識したりみたいなのはあって」と、他領域の授業における教員の発話によって「家族」を意識したと語る者もみられた。
     家庭科の学習全般が、生徒自身の「家族」に対する意識や態度へどのような影響を与えたかについては、「家庭科の授業が私の考えを変えるというよりかは、家庭科の授業が私に何かを考えるきっかけをくれたって感じですね」と、「家族」に関する情報を得て、自分の価値観を形成する機会になったとの語りがあった。一方で、「もし自分がひとりになったときに、暮らせるある程度の力は、ついていると思う」と、将来を考えたときに、生活に必要な力が身についたと語る者が多くみられ、「料理とか調理実習とかしていたら、何だろう大変だなあみたいに思ったから、(中略)少しは手伝おうかなみたいなとかを思ったりはします」と、生活に必要な力を形成する経験が「家族」に対する貢献や理解につながったと語る者もみられた。
     以上のように、①高校生は、「家族」に関する学習が「家族」領域だけではなく、他領域でも行われたと考えており、②家庭科の学習が高校生の「家族」に対する意識や態度へ与える影響は、「家族」領域だけではなく、他領域の授業を通してもみられた。家庭科における「家族」に関する学習を、「家族」領域だけではなく、家庭科全体として包括的に行うことで、高校生は「家族」についてより深く学ぶことができるのではないか。
  • 土屋 善和, 千葉 眞智子
    セッションID: A1-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
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    1.研究の背景及び本研究の目的
     現在の日本は、高齢化率27.3%と、約4人に1人が高齢者という超高齢社会をむかえている。そうした時代の中、中学校の新学習指導要領解説家庭編(2017)には、「A家族・家庭生活(3)家族・家庭や地域との関わり」の中で、「高齢者との関わり方について理解すること」、また内容の取扱いでは「高齢者の身体の特徴について触れること」と明記された。つまり、現行学習導要領では高校段階の学習内容であった高齢者について学ぶことが、学習指導要領の改訂に伴い中学校段階にも位置づけられたことで、系統性を持たせてより深く学ぶ必要があることが読みとれる。
     そこで、高齢社会に関する内容の深い学びを促すために、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れた授業が望ましいと考えた。アクティブ・ラーニングは主体的・協働的・対話的な学びであるため、学習者にとって身近に感じることが困難である高齢者及び高齢社会について深く学ぶ上で、有効な手立てと考えられたからである。
     以上を踏まえ、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れた高齢社会を題材とした授業を考案し実践した。そして、今後の家庭科における高齢社会の学習の充実に向けた、深い学びにつながる新たな授業提案が、本研究の目的である。
    2.研究方法
     神奈川県内の私立中高一貫女子校に通う高校2年生を対象に、2時間構成の授業を行った。実施時期は、2018年2月中旬である。本実践では、アクティブ・ラーニングの視点を取り入れた学習として、「知識構成型ジグソー法」及び「KP法」を取り入れた。そして、授業の効果を把握するために、「高齢社会を生きる上で,私たちは何をすべきでしょうか」という問いに対する学習前後の生徒の記述を分析・考察した。
    3.授業概要
    (1)知識構成型ジグソー法(1時間目)
     高齢社会及び高齢者に対する基礎的な理解を促すために、知識構成型ジグソー法を取り入れた。メインの問いは「高齢者はどのような暮らしを望んでいるだろうか」と設定し、問いに迫るために4種類のエキスパート資料を用意した。なお、エキスパート資料のテーマは以下に示す。
    ・エキスパート資料A:日本の高齢化の動向…高齢化率など
    ・エキスパート資料B:高齢者の暮らし…高齢者の世帯構成など
    ・エキスパート資料C:高齢者の身体的特徴…バリアフリーなど
    ・エキスパート資料D:活躍する高齢者…高齢者インタビューなど
    (2)KP法(1時間目)
     メインの問いに対する答えについて生徒同士が協働で考えるために、KP法を取り入れた。KP法(紙芝居プレゼンテーション)は、グループの意見を端的に用紙にまとめ、紙芝居形式で発表をする手段であり、グループの思考整理のツールとしての機能を持つ。本実践ではメインの問いに対する答えをグループで考え、A4用紙4~6枚にまとめ、3分程度で発表をするという方法をとった。
    4.結果および考察
    (1)発表内容の分析
     発表内容をみると、それぞれのエキスパート資料に記載されている用語が用いられており、ジグソー学習で得た知識や意見を取り入れて考えている様子がみられた。それだけではなく、若者と高齢者の共生や地域とのつながりなどエキスパート資料を統合した考えも表出されていた。さらに、高齢社会を生きる上で必要なことや課題・問題に対する解決方法にまで思考を巡らしていたこともうかがえた。
    (2)生徒の記述の分析
     学習後の記述における抽出語をみると、「関わる(関わり)」、「コミュニケーション」、「交流」といった語が学習前に比べて頻出しており、人(地域の人、家族、若者と高齢者)との関わりに着目した意見が挙げられるようになった。また、「地域」、「身近」、「近所」といった単語も頻出するようになり、生徒が自身の身の回りの生活にも目を向けるようになったことがうかがえる。生徒が学習内で得た知識や意見を取り入れ、新たな考えを創出しており、本実践で取り入れたアクティブ・ラーニングが、生徒の深い学びにつながったものと推察される。
  • 瀨川 朗, 河村 美穂
    セッションID: A2-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
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    【目的】 本研究は,高等学校の家庭科教師の「私的生活経験」がカリキュラム・デザインに関する信念や知識にどのように結びついているのかをナラティヴ・インタビューにおける語りをもとに明らかにしようとしたものである。

     教師の成長・発達に関する近年の研究では,職業上の経験だけでなく,一見教育実践と直接的な関係が薄い私的生活経験,すなわち日常生活経験や家族関係における経験と関係も注目されている。例えば,Elbaz(1983)は,教師の実践知をとらえるには私的生活経験を含む「生活経験」が重要であることを指摘している。またGoodsonら(1994)は,学校内で身につけた知識・経験だけでなく「家庭,学校そしてより広い社会的な場で起こった過去および現在の出来事や経験」へと視野を広げることが教師研究に必要だとしている。さらに家庭科教師にあっては,教科内容が直接に家庭生活を対象とすることから,私的生活経験に着目してその発達・成長のプロセス,とくにカリキュラム・デザインに関する知識・信念の形成過程について私的生活経験も含めて検討することが必要だといえる。

    【方法】 研究デザインは混合研究法であり,質問的調査により家庭科教師のカリキュラム・デザインの全体的傾向を把握したうえで,複数の教師を対象に授業観察およびインタビュー調査を行った。

    (1) 質問紙調査

     2016年10~11月にかけて,無作為に抽出された高等学校720校に調査票を郵送し,家庭科教師に回答を求めた。質問項目は5つの大項目から構成され,「カリキュラム・デザインに用いる知識・経験」では,18種類の「知識・経験」についてリカート式尺度(6件法)により重視する度合いを尋ねた。そのうえで因子分析により私的生活経験の位置づけを明らかにするとともに,クラスタ分析を行い「知識・経験」の活用パターンによる教師グループを生成した。

    (2) 授業観察およびインタビュー調査

     2017年4~2018年3月に,質問紙調査で得られた各グループに属する教師2名ずつに協力を依頼し,授業観察およびインタビュー調査を行った。授業観察は食生活および家族領域について2時間以上実施し,フィールド・ノーツを作成した。その後,エピソード・インタビュー(Flick, 1998)の手法を参考に,ナラティヴを導くインタビューを行い,カリキュラム・デザイナーとして「大切にしていること」について尋ねた。インタビュー終了後に逐語録または聞き取り記録ををもとにテーマ分析(Riessman, 2008)を行い,カリキュラム・デザインとその背景となる経験に着目してコード化したうえで,複数のコードからなるカテゴリを生成した。

    【結果と考察】 協力が得られた341名の回答をもとに因子分析を行った結果,「知識・経験」について解釈可能な4因子が生成され,それぞれ「I 生徒との関係・日常生活における経験」「II 教科書・教材から得た知識」「III 家族関係における経験」「IV 教育実践に関する専門的知識・経験」と命名した。さらに,クラスタ分析から「知識・経験」の活用パターンが異なる4つの教師グループが得られ,うちグループ2を「私的生活経験重視度高群」,グループ3と4を「低群」とした。

     「高群」「低群」に属する2名ずつ計4名のインタビューのナラティヴ分析を行ったところ,「低群」の教師の私的生活経験とカリキュラム・デザインの関連についての関連づけは希薄であったが,「高群」の教師は日常生活経験を意識的に参照したカリキュラム・デザインを試みていることが明らかになった。また,「高群」の教師のナラティヴ・アカウントからは公的カリキュラムに付加するオリジナルな部分に「失敗談」などの日常生活経験を活用することがうかがわれたほか,カリキュラム・デザインの根幹にも家族から受けた影響があるとした語りもみられた。今後は,今回対象としていない教師グループからの事例も加え,理論の構築を目指したい。
  • 荒井 紀子, 鈴木 真由子, 綿引 伴子
    セッションID: A2-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
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    目的 わが国では2017-2018年に小、中、高等学校の学習指導要領が改訂され、資質・能力をベースとした思考・判断・表現重視のカリキュラムが施行される予定である。新学習指導要領では、知識習得型学習から探究型学習への転換が求められているが、実際の授業構成や評価方法については必ずしも明らかではない。探究型学習への転換は評価方法の変更と連動するが、教師にとってこの点を理解し実践を進めるのは容易ではない。本研究では、探究型の学習を奨励し、その評価基準を明示化した2011年改訂のスウェーデン家庭科シラバス(以下、2011シラバス)に着目した。学習目標の到達に関わるパフォーマンス評価への教師の理解促進を図るために開発された学習モデルについて、題材の構成と内容、実施方法等について分析し、その意義や有効性について検討する。
    方法 2011シラバス改訂に対応して開発された2つの学習モデル『タコスの夜』『持続可能なランチ』について、1) 教師用解説書やシラバス関連資料の検討、2) 学習モデルを活用した授業の参与観察(2014年、2015年)、3) 学習モデルの開発を担当した家庭科教諭への面接調査(2014年、2015年、2017年)をもとに分析する。
    結果 1.スウェーデンでは、思考判断を重視する新シラバスにおいて、子どもの生きて働く力を育てることにつながる教科別の評価基準を明示化し、その到達にむけて学習の工夫が試みられた。
    2.家庭科は、「食物・食事と健康」「消費と金銭管理」「環境とライフスタイル」の3つの領域で中核的内容が設定されており、領域ごとに6段階の評価指標(ルーブリック)が示されている。
    3.2011シラバス改訂に先立ち、教育省の委嘱を受けて大学教員1名と家庭科教員4名、助言者2名からなる作業部会が組織され、授業と評価を連動させた2つの学習モデルプランが作成された。
    4.各学習モデルは、「授業資料」「評価手順」「教師用手引き」の3分冊からなり、教育庁のウェブで公開され、家庭科教師が自由に閲覧できるよう設定されている。また、2011シラバスへの改訂後、作業部会のメンバーが講師となり、各地区の家庭科教師への説明会が開催された。学習モデルの活用は強制ではないが、多くの教師は各学校の生徒の実状やカリキュラムに応じて柔軟に活用している。
    5.2つの学習モデルのいずれにもパフォーマンス課題が組み込まれている。このうち『タコスの夜』は、スウェーデンの家庭でよく作られるタコス料理について、「健康」「経済」「環境」の3つの視点から食材を選択し、その選択を生徒同士で検討・改善するとともに、その食材で各自が調理し、結果を省察・評価するという学習である。他方、『持続可能なランチ』は、同様に3つの視点を考慮して献立を各自で作成し、食材を選択して調理し、省察・評価を行うものである。『持続可能なランチ』は『タコスの夜』に比べ、メニューや食材選択の幅が広いため、生徒の思考や体験のスケールはより大きくなる。但し、時間数もより多くを要するため、現場では「タコスの夜」を活用する例が多い。
    6.教師用手引きには、学習モデル授業の評価基準であるルーブリックが示され、「健康」「経済」「環境」の視点からの生徒の記述例が詳細に掲載されている。生徒の思考・判断や論理的な表現力をどう測るか、教師の理解を助ける手立てがとられている。
    7.教師への面接調査では、以下のような指摘がみられた。(1) パフォーマンス評価の困難さを乗り越えるにあたり、とりわけ生徒の記述について教師が評価するうえで、本学習モデルは参考になる。(2) 本学習モデルを組み込んだカリキュラムを実施することを通して、以前に比べ生徒に考えさせ自主的に活動させることに目が向くようになった。以上のことから、本学習モデルは、授業にパフォーマンス評価を取り入れるうえで、また、生徒主体の授業づくりにむけて教師自身の授業観を育むうえで一定の有効性を持つことがうかがわれる。
  • 中村 誉子, 鈴木 明子
    セッションID: A2-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     高等学校家庭科に必修内容として位置づくホームプロジェクト(以下,H.P.と略記)は,自らの生活課題を追究して解決していく問題解決的なプロジェクト学習であり,主体的で深い学びを習得する学習の場である。しかしながらこのH.Pが本来の機能を発揮しているとは言い難いと考えられる。またこれまでH.P.の効果的な学習方法についての先行研究は多くみられるものの,H.P.をカリキュラムの軸として構想し,その成果を検証した研究はみられない。そこで新学習指導要領の改訂の方向性を踏まえ,H.P.学習の本質にせまり,その本質に基づいたカリキュラムを追究する必要がある。本報告では,高等学校家庭科教師のH.P.学習に関する意識と取り組みの実態を調査することによって,課題を明らかにすることを目的とし,今後のH.P.を軸としたカリキュラム提案の検討に生かしたい。

    【方法】
     広島県の国公私立あわせた全日制高等学校125校,定時制高等学校22校,通信制8校の合計155校の家庭科教師155名を対象に,高等学校家庭科におけるH.P.の指導に関する意識および実態を質問紙調査により問うた。得られた結果を分析し,H.P.学習指導の困難点及び課題,効果的と考えられる指導上の工夫などを整理し,カリキュラム構想を試みた。調査時期は2017年8月~9月,回収率は51.0%,有効回答率は100%であった。

    【結果】
     H.P.学習後の生徒の家庭科に対する関心は,「関心が高まる」と「さらに次の課題へ意欲が高まる」を合わせて56.2%で,生徒の認識の高まりを認めている教師が多く見られた。具体的なH.P.学習活動は1~2時間の事前指導によって意義と方法について指導した後,8割以上の学校が夏休みの課題として実施されていた。夏休みのH.P.学習活動中は質問に来た生徒に関わる程度の指導で済ませる場合が6割であった。これらH.P.の成果は,必履修の科目においても選択科目においても授業での紹介やコンテスト応募などに活かしているという実態も明らかになった。広島県の家庭科におけるH.P.学習は「夏休みの課題で終える」という実態がみられ,H.P課題を提出させることが最終目標となっていると推察できる。
     さらに半数以上の教師が行っている事前指導は,H.P.学習の意義の伝達と方法の説明であった。生活課題を捉えにくくなっている生徒にとって,生活課題を見出すための時間を十分にとり,適切なテーマ及びその追究方法について説明を受け,実施可能な計画まで見通すことが最も必要な事前指導と考えられるが,1~2時間程度しか時間がとれないことから,事前の学習は適切に行われていない状況が伺えた。テーマ設定から実施計画を作成するプロセス全てを生徒自身の主体性と能力に委ねる形となり,夏休み課題として実践される中で,遂行につまずく生徒も多く,効果的な学習とはなり得ていない状況が推察できた。自由記述の分析からもH.P.学習の指導上の困難点は,時間数の少なさを指摘する意見に集約できた。またカリキュラムの問題において「様々な分野の必修内容を扱うためH.P学習に時間を費やすことが難しかった」等の意見から家庭科を内容ベースでしか捕らえられていないことも指摘できる。生徒の置かれている生活状況や生活課題に対する関心の低さを指摘する意見や生活が困窮している家庭に踏み込むことの人権モラル的な配慮が影響していることも明らかとなり,複数の要因が関連し合ってH.P.学習の困難さを感じている教師が多いことが明らかとなった。以上の広島県の実態を踏まえて,年間を通した継続的指導による本質的課題を追究できるカリキュラムを構想した。
  • 柴 静子
    セッションID: A2-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【研究の背景および目的と方法】本年3月末に公示された新高等学校学習指導要領では、「政治や経済,社会の変化との関係に着目した我が国の文化の特色、我が国の先人の取組や知恵、武道に関する内容の充実、和食、和服及び和室など、日本の伝統的な生活文化の継承・創造に関する内容を充実したこと」が改訂の眼目とされている。発表者が平成26年度に行った広島県と山口県の高等学校の家庭科教師を対象とした調査では、その時点で既に95%の教師が、「家庭基礎」や「家庭総合」において,「衣食住の文化や様式について授業をしたことがある」と答えていた。それらは,浴衣の着装やたたみ方・帯の結び方の実習、外部講師による着付け講習、刺し子のコースターやランチョンマットの製作、日本の伝統文化である着物や風呂敷についての解説、備後絣や柳井縞についての解説、着物解き布のはぎれを使用した小物製作などであった。これらは生徒の興味を喚起する実践であるが、上記の指導要領改訂の際に考慮された、「先人の取組と知恵を知り、社会的・歴史的視点から衣生活文化を継承・発展させる」という視角から見ると、再考の余地があるように思われる。全国を見廻すと、かつて生糸や絹織物の名産地であった埼玉県秩父市や群馬県伊勢崎市においては、総合的な学習として「銘仙」を取り上げている小・中学校がいくつかある。伊勢崎市立境北中学校においては、「伊勢崎銘仙によるふるさと学習」が中学2年生の衣服分野と絡めて実践されている。平成 26年度は、家庭科の授業で、伊勢崎銘仙について専門的知識を有する外部講師を招き講話をしてもらったこと、および数多くの銘仙を準備し、実際に着用してよさを実感させたこと、さらには他地域のものと比較ができるように、多様な伊勢崎銘仙を展示するといった環境づくりをしたこと、その結果、生徒は感動し、興味関心は高まった、という報告がなされている。このように「銘仙」に焦点を合わせて、衣生活の伝統と文化に関する学習が実践されていることは、この着物への国内外からの注目が高まっている今日、意義深いことと考える。銘仙は、大正期から昭和戦後期にかけて、長期にわたり大衆向け着物として衣生活を支配した、歴史的・社会的に見て特別な意味をもつ着物である。そのように考えると、銘仙についての学習は、特定の地域に限定されるものではなく、着物の文化に関する学習として広く全国の学校に普及させる価値があると思われる。そこで本研究においては、銘仙の実物収集と考察、国内外の関連文献の検討およびはぎれ布を使用した教材見本の製作を通して、銘仙に焦点を当てた衣生活の伝統・文化の学習の創造に向けての基礎的資料を提供することを目的とした。
    【結果】1.銘仙の五大産地として、伊勢崎、秩父、足利、桐生、八王子が認められているが、これらに限定されず日本全国で生産されており、中には品質に相当問題があるようなものまで流通していた。2.1932年までの銘仙生産量は、伊勢崎が他の地域を圧倒していた。伊勢崎銘仙の特徴は「併用絣」にあり、他地域の銘仙に比べて色の鮮やかさで抜き出ている。伊勢崎銘仙には「馬首印(マーク)」や「正絹マーク」が付けられており、収集した着物や羽織、反物や洗い張りの中にも、このようなマークが見られるものがある。3.銘仙の大きな特徴は、アール・ヌーボーやアール・デコの影響を受けた、まるで絵画といってもよいデザインにある。ボストン美術館、ミネアポリス美術館などの海外の美術館には、相当数の銘仙が収蔵されているが、それらのデザインの多くはこの範疇に入る。4.近年、海外のコレクターが銘仙を収集し、写真・図を中心とした大型本を出版するなど、活発化している。色鮮やかで大胆な模様の伊勢崎銘仙(併用絣)が数多く取り上げられているが、収集した銘仙の中にも類似のデザインのものがある。5.本研究から、銘仙は、国際的、歴史的、社会的、文化的要素を入れて教材化することが可能であることが示唆された。
  • 安川 あけみ, 日景 弥生
    セッションID: A2-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    中学校技術・家庭科の衣生活分野の授業において,被服製作の内容は徐々に簡易になっている。この理由として,家族の着用する衣服を各家庭内で製作する実態がほとんどないこと,それに伴い生徒の裁縫経験が少なくなり技術が低下していること,家庭科の授業時間数が減少していること,男女共修により性別にとらわれない題材が選択されていること,教員自身の技術力の低下などが挙げられる。そのような状況の中,被服製作の題材としてのパンツは,パジャマの一部のロングパンツ,短パン,ハーフパンツと時代とともに丈は変わるものの,過去35年以上にわたり中学校家庭科教科書に掲載され続けている。そこで本研究では,中学校の被服製作のパンツを取り上げ,どのような変化をたどってきたかを明らかにする。その結果を元に,現状に即して教材として取り入れやすいパンツの製作方法を提案する。

    【方法】
    ①文献調査:昭和55年検定版以降の中学校家庭科の教科書について,被服製作の題材として掲載されているパンツ製作に焦点を絞り,4~6年ごとの改訂により,どのような変化をたどったかの調査を行った。現在パンツ製作を掲載している2社の教科書を取り上げ,時代による比較と出版社による比較を行った。パンツ製作のために掲載されている図と説明文を元に,デザイン,縫製順序ならびに縫製方法について検討した。 ②部分縫いの製作実習:3種のウエスト回りの縫製方法,すなわち,(a)「縫い代4 cm,ゴムテープ1本,上部のミシン縫いなし」,(b)「縫い代4 cm,ゴムテープ2本,上部のミシン縫いあり,ゴムテープを通す部分の幅1.2 cm」および(c)「縫い代5 cm,ゴムテープ2本,上部のミシン縫いあり,ゴムテープを通す部分の幅1.7 cm」を設定し,大学生11名による部分縫い製作を実施した。また,厚さの異なる5種の布を用いて上記(b)の方法により部分縫いを作製した。以上の部分縫い作品について,6種類のひも通しを用いて8コール(0.7 cm幅)のゴムテープが通るかどうかを検証した。③上述した①および②の結果から,中学校家庭科の被服製作に適するパンツの製作方法を検討した。

    【結果と考察】教科書におけるパンツ製作の変遷を調べたところ,デザインに関しては脇縫いの有無およびポケットの有無,縫製順序に関しては股上と股下の順序およびウエスト回りと裾の順序,そして,縫製方法に関してはウエスト回りの縫い方とゴム通し口の縫い方について,時代や出版社によって相違点が認められた。第一に,脇縫いについては,脇縫いを省略することにより作業工程を減らす方法を維持してきた,あるいはその方向に変更されてきたと考えられるが,これはゆったりしたデザインの流行と中学生の技術水準を考えれば時代に即したものであり,脇縫いなしのデザインが中学校家庭科の教材に適すると考えられる。第二に,ポケットについては,作り方と付け方について「参考」など補足的な箇所では必要であるが,パンツ製作の工程や主となる説明図には不要と考えられる。これは,エプロン等他の題材でポケットの説明があるかどうかにも左右される。第三に,股上と股下の縫製順序については,股上が先の方が直線に近い形で縫え,適すると考えられる。第四に,ウエストと裾の縫製順序では,縫製に慣れている者ならばいずれが先でも問題はないが,経験が浅い中学生では,できるだけ難易度の低い裾の始末を先に,ウエストの始末を後にする方が適すると考える。第五に,ウエストのゴムテープは1本でよく,布の厚みや中学生の縫製技術による誤差を考慮すると,ゴムテープの通る部分の幅は最低1.7 cm必要であると考えられる。第六に,ゴム通し口は股上を縫い合わせる際に一部を縫い残し,垂直(縦)方向とするのがよいと考えられる。この際,ウエスト上部にミシン縫いがあるとよい。
  • 大塚 吏恵, 池﨑 喜美惠, 鳴海 多恵子
    セッションID: A2-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
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    研究の背景と目的
     高等学校家庭科は、1989年に男女共修となり1999年に「家庭基礎」が導入され衣生活領域の実習時間が大幅に削減された。小学校,中学校では布を使った生活に役立つ物の製作となり、被服製作の内容として基礎的な知識と技能が重視されるようになった。近年の児童・生徒の手指の巧緻性の低下は、被服学習の進度に影響を及ぼし、学習内容の検討を余儀なくされている。また、生活環境も大きく変化し、合理性や利便性が優先され、親が子どもに教える頻度は低く、子どもたちの家庭での布を使ったものづくりの体験は減少している。
     学校教育で身に付けた、被服製作の基礎的知識と技術は、生活に役立つ補修のためだけでなく、衣生活を創意工夫するためにも必要な技術と捉えられる。そのため、家庭科教員を目指す大学生が将来指導者として、子どもたちにものづくりの楽しさを伝え、主体的な学びを実現させるためには、十分な知識と技術を身に付ける必要があると思われる。
     そこで、本研究では、大学生の小・中・高校家庭科の被服製作学習の基礎的技術の定着状況を明らかにし分析することと、被服製作の基礎的知識と技術の定着を促す教材を研究し、その効果を検証することを目的とする。
    研究の方法
     大学生の手縫いの基礎的技術の定着の現状を調べるために実技テストを実施した。調査項目は、「玉結び・玉どめ・まち針の打ち方・かがり縫い・三つ折り・しつけ・まつり縫い・本返し縫い・ボタン付け」である。調査対象者は、T大学家庭科選修・専攻の1年生27名である。調査時期は、2017年4月の授業時で、被服製作の専門的授業を受講する前とした。小・中学校の手縫いの基礎的知識と技術が復習できる教材として考案した「手縫いで作るバッグインポーチ」の製作授業を、2016年と2017年に実施した。製作の資料には、知識を深め技術の応用につながると思われる理由や目的など、学習できる内容を加えた。授業対象者は、T大学家庭科選修・専攻の2016年の1年生29名と2017年の1年生26名である。製作時間は約3時間である。製作後に再度アンケート調査と実技テストを行った。また、現職の家庭科の先生12名にも、同作品を製作してもらい、手縫いの基礎的知識と技術の定着を促す教材として適当であるか評価してもらった。
    結果及び考察
     実技テストの結果、9点満点中平均5.3点であった。最も定着率の低かった項目は「まつり縫い」で、できた者は27人中2人だけだった。知識の定着を調べるアンケート調査(大塚 2017)では、「まつり縫い」は56%の者ができていたが、実際に手を動かしてみると、理解できていないことが明らかになった。「まち針の打ち方」は、まち針を横にして打っているものや三つ折りから外れて打っているもの、向きが反対のものが目立った。「本返し縫い」は、最初の針を入れるところで迷い、表と裏が反対になってしまった者が7人いた。「かがり縫い」は、6人がブランケットステッチを行っていた。
     「手縫いで作るバッグインポーチ」の製作の結果、知識については、事前の平均得点は7点満点中3.7点で、事後は5.1点となり有意に高かった。技術については、事前の平均得点は9点満点中5.3点で、事後は6.9点となり有意に高かった。したがって、「手縫いで作るバッグインポーチ」の製作は、基礎的知識と技術の定着に有効であると考えられる。また、現職の家庭科の先生からは、「小学校から中学校で学習する手縫いの基礎的技術が、すべて含まれているため手縫いの復習になる」「資料の中の理由が理解の向上と応用につながる」「内袋を付けているが難易度は高くはなく、完成度が高いため製作後は達成感があった」「手持ちの材料を利用して製作できるため経済的で、生活にも役立つ作品である」という評価を得られた。しかしながら、短時間で製作させるための教員側の事前準備の負担が大きいという課題が明らかになった。
  • 遠藤 大輝, 堀内 かおる
    セッションID: A3-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【問題の所在と目的】
     2017年の学習指導要領の改訂において、「社会に開かれた教育課程」が掲げられ、学校と社会が接点を保ちながら教育を展開していくことが重要課題の一つとされた(文部科学省 2015)。国際的な課題の一つとして、学校の学びが社会といかにつながりをもっていくかということは、以前から議論が重ねられてきた(ハーグリーブス 2012、小玉 2013)。特に、先進諸国では、学校での学びが外の世界に開かれておらず閉鎖的なものとなることへの危惧が指摘されている(ウィッティ 2004)。
     日本国内では、学校と社会のつながりが子供の学力向上(志水 2014)や学校運営の向上(露口 2016)の要因であることが証明されており、関心の高い課題として取り上げられている。しかし、学力向上や学校運営の向上という側面での一効果は確認できるものの、学校での学びが学校の外でどのような価値を持ちうるかという点については今後の課題として残っている。
     家庭科教育は、これまでに学校外部の人材と連携することで社会とつながりをもった実践を積み重ねており、これから必要とされる教育の文脈の中で、その実践を分析・考察していくことは家庭科教育の捉え直しのみならず、これからの学校教育へ示唆を与えるものとなるだろう。
     以上のことより、学校外部の人材(以下、ゲスト・ティーチャー)を取り入れた家庭科教育の実践を考察し、ゲスト・ティーチャーが授業にもたらす効果を明らかにすることを本研究の目的とする。
    【研究対象と方法】
     研究の対象となるのは、2016年6月に神奈川県下の私立S高校で行われた「家庭総合」の授業で(2年生45名)、ゲストに男性家庭科教師を招いて実施された。ゲスト・ティーチャーが教師と生徒にもたらす効果を分析するために、教師へのインタビュー調査、教師とゲスト・ティーチャーによる授業前カンファレンスの談話分析、授業内容の記録、授業後の生徒による振り返り用紙の記述分析を行った。
    【結果および考察】
     対象授業は教師がゲスト・ティーチャーへ質問をしていくインタビュー形式で行われ、その後、生徒はグループでゲスト・ティーチャーへの質問を考え応答してもらうという流れで行われた。教師は「男性家庭科教師」という自分には代わることのできない存在を生徒と出会わせることにより、生徒の考えに変化が起きることを期待していた。
     授業前カンファレンスから明らかになったことは、授業目標や内容を共有するだけではなく、ゲスト・ティーチャーが効果的に機能するため、互いにどのような役割で授業を行うのかを確認していた。ゲスト・ティーチャーに授業を委ねるのではなく、教師にとって授業のパートナーという位置づけであった。また、ゲスト・ティーチャーの意見を授業に取り入れることにより、授業が精緻化されていたことも大きな効果の一つであった。
     生徒の振り返り用紙の記述分析を行ったところ、ゲスト・ティーチャーは生徒にとって①思考を深める契機を与える、②社会を表すロール・モデル、③自分の生活について考える契機を与える、④社会と出会う経験をもたらす、⑤自分の意見を社会に開く契機を与える存在となっていたことが明らかになった。ゲスト・ティーチャーと出会うことにより、授業で学んでいた「性別役割分業意識」という知識に具体性が付与され、自己や社会について思考を深めていたことは、もっとも大きな効果と言えるだろう。
     また、教師が、学習内容に適した質問事項を設けてインタビュー形式で行ったことが、生徒の気づきを促した要因として考えられる。教師がゲスト・ティーチャーの言葉を引き出すことにより、ゲスト・ティーチャーの存在を生徒の目前に示すことができていた。
     以上、実践分析を踏まえると、ゲスト・ティーチャーは教師にとって授業パートナーとして位置付けることができ、授業づくりという授業外の部分でも教師に影響を与えていた。また、生徒にとって、ゲスト・ティーチャーとの出会いを通して、学んだ知識を自分や社会とのつながりの中で捉え直していたことが明らかになった。
  • 渡瀬 典子
    セッションID: A3-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】小学校家庭科では「みそ汁」が学習内容に位置づけられ,現行学習指導要領「内容 B 日常の食事と調理の基礎」では「米飯及びみそ汁の調理ができること」として「だしをとること」を児童は学習する。新学習指導要領では「内容 B 衣食住の生活 食生活」の「内容の取扱い」において「和食の基本となるだしの役割についても触れること」が付記され,「だしのとり方」よりも踏み込んだ学習を児童に求める記述になっている。同箇所の解説を見ると「(だしを生かして作ったみそ汁とだしのないみそ汁の比較をして)観察して気付いたことなどを,実感を持って言葉で表現したりする学習活動」を促している。そこで本報告は,小学校家庭科の授業における「味わって」「おいしく」食べる内容について,「みそ汁」の味わいに大きな影響を与える「だし」に焦点を当て,課題把握と教材解釈を試みる。分析にあたり,鍵概念として「マインドフルネス」と「味覚教育」を設定し検討する。「マインドフルネス」とは,臨床心理学や精神保健学など,様々な分野で応用的に用いられている考え方である。熊野によれば,この概念は2600年も前にブッダが提唱した,悩みや苦しみから自由になるための心の持ち方を指し,「今,ここにある現実をあるがままに知覚する心の在り様」を表す。本報告では「味わって」「おいしく」に係る視点として援用する。2つ目は「味覚教育」である。「味覚教育」はフランスのジャック・ピュイゼ氏によって提唱されたものであり,五感を使って食べものと向き合うことを入り口に,「自分で感じて考える力」,「感じて判断する力」,「感じたことを表現して人と分かち合う力」を育成するという。本報告では,ジャック・ピュイゼ氏の理論に基づいて,日本で味覚教育を推進している石井克枝氏の実践をもとに検証をする。また,マインドフルネスの考え方から,うまみをしっかりと味わい,受け止めて,心の安寧へと導く学びへのヒントを得ることを目的とする。
    【方法】本研究は2つの内容で構成される。(1)みそ汁の「だし」に関する児童の学習状況分析(2017年10月実施,岩手県内のA小学校5年生29 名)小単元「おいしいみそ汁について考えよう」の児童の学習記録の記述分析 (2)岩手県内の大学生対象の「だし」官能検査の分析(2018 年 2 月実施,小学校の教員免許状取得を希望する大学3,4年生 27 名)
    【結果】分析対象であるA小学校の児童の家庭で「朝食の献立にみそ汁がある」のは約 1/3 であり,彼らにとってみそ汁が日常食,とは必ずしも言えない状況にある。よって,児童が学習を深めるためには「おいしいみそ汁」のイメージの共有化・具体化を図る必要がある。授業では「おいしいみそ汁とは?」という問いから,児童に味を決める様々な要素(実,汁の状態)を気付かせ,味わいに影響を与える「みそ」や「だし」の学習へと進んでいく。また,「だし」の味わいや役割について,児童が実感から気づくことができるように,「だし入り/だし入りではないみそ汁」をそれぞれ試食させ,「見た目・香り・味」を比較することで,「だしを入れると風味や香りが増し,塩分を抑える役目も果たす」という学習の「まとめ」につなげていた。
     次に,大学生を対象に「煮干し・かつおぶし・昆布・しいたけ」を用いた2 種類(1.「だし」の味わいの表現・好み,2.うま味の相乗効果に関する「だし」の調合)の簡易官能検査を実施した。「だしの好み」では,好まれる傾向にある食材(煮干し,かつおぶし)もあったが,順位付けは人それぞれであり,グループ内で比較をすることで,他の人の味の好みを考える機会にもなった。味覚教育やマインドフルネスが提唱する,“いま(食材)”に向き合って,五感で味わいを受け止める経験は,食事が生活の豊かさや滋味深さに貢献しうることを児童に気付かせ,このような考え方を習慣化できる心性を養うものと考えられる。また,様々な食材や調理したものを観察したり,味わったりして表現をすることは,調理実習記録の充実につながる効果が期待される。
  • 浅野 和子, 堀内 かおる
    セッションID: A3-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】
     厚生労働省(2015)によると、中学生男女のカルシウム摂取量が基準の約半分であることが明らかになった。横浜市公立中学校の生徒たちは、横浜市公立小学校給食でほぼ毎日牛乳を飲んでいた。しかし、公立中学校では給食がなく、昼食時に牛乳を飲むことも無くなり、生活の中で牛乳摂取の機会が失われつつある。一方、現在の日本では、様々な種類の食品が店に並び、多くの選択肢がありながら、私たちは限られた商品を購入しがちである。また、同一種類の複数の商品について、それぞれの違いを知る機会も多くはない。それは牛乳も例外ではない。今日、牛乳は消費者のニーズに応じた7種類があり、それを基本として様々な商品が販売されている。成長期にある中学生にとって、牛乳を教材として、表示から様々な情報を読み取り、その情報を十分に活用した食品選択ができることを目指す授業を行う意義があると考えた。そこで、本研究では牛乳試飲体験を通して食品の特徴や違いに気づき、その違いの原因を食品表示から読み取る授業を計画・実施した。生徒が栄養的価値やニーズに応じた情報を読み取り、食品選択を促す授業をデザイン・実施し、その成果を検証することが本研究の目的である。
    【方法】
     研究授業対象は公立横浜市立X中学校2年生1クラス37名である。2017年7月に、飲用乳試飲体験から食品選択を促す授業を実施し、その実践授業1か月後の生徒の意識変容、食品表示の果たす役割の理解を分析し、授業の効果や意義を検討した。分析にあたり、授業前アンケート調査によって小・中学校時の牛乳摂取状況を、授業ワークシートと授業後調査によって牛乳や食品表示に対する意識変容を見取った。ここで、牛乳等にアレルギーがある生徒に対しては、豆乳(低脂肪、成分無調整、特濃等)を用意し同様の試飲体験ができるように配慮した。
    【結果・考察】
     牛乳試飲体験によって、生徒は同じように思えた食品の違いに気づき、表示から詳細情報を得ることで不足しがちなカルシウムなど、目的に応じた栄養素を摂取しようとしたり、牛乳が苦手な生徒も、好みの味の商品を選択できる知識を持とうとしたりするようになった。
     また、牛乳のみならず、その他の食品に対しても、食品表示の果たす役割に留意する様子が見られた。例えば、ジュース購入の際には原材料の果汁配分や添加物の種類を確認するようになったという意見が示されたり、調味料だけでなく原材料の種類を確認することで食品の製造過程や品質を知ることができたりするようになったという声を聞くことができた。このように様々な食品選択の場で食品表示の重要さを認識し、詳細な情報を得ようとすることで、生活に役立つ食品選択が可能となった。
     以上の結果から、授業後の牛乳に関する食品表示についての意識変容と、その他の食品選択に関する意識変容が明らかになった。小学校のときに飲んでいた牛乳の量を、生徒全員が中学生になった現在でも摂取することは難しい。しかし自分の食に関心をもち、牛乳が苦手であっても、同じような栄養素を含む別の食品を知り、その栄養成分を理解して、自分で健康管理をしようとする意識が出てくれば、牛乳以外の食材を利用して必要な栄養素を摂取することも可能となるだろう。
  • 小清水 貴子, 山下 美乃里
    セッションID: A3-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    目的
     近年,ライフスタイルの多様化から中食の利用が増加し,加工食品は調理済み食品としてとらえられる傾向が見受けられる。中学校家庭科の加工食品に関する授業実践では調理済み食品に焦点が当てられることが多く,加工食品の意義に関する指導方法は十分に検討されていない。平成29年3月公示の新学習指導要領では,生活の営みに係る見方・考え方として,生活文化の継承・創造が取り上げられた。食品を加工する技術には豊かな食生活に向けた先人の知恵が込められており,加工食品の意義を理解することは生活文化のとらえ直しにつながる。また,学習指導要領の改訂にあたり,主体的で対話的で深い学びの実現を目指した授業改善が求められている。そこで本研究は,主体的に対話を通して学びを深める指導法として,協調学習の手法を取り入れた加工食品の意義を理解する授業を開発することを目的とする。
    方法
     加工食品の意義を理解することをねらいに,「加工食品の特徴を知ろう」を題材にした授業をデザインした。協調学習として知識構成型ジグソー法を用いた。導入では「加工食品にはどんな目的があるだろう」という問いを提示した。エキスパート活動では冷凍食品,酢漬け・砂糖漬け・塩漬け,発酵食品,缶詰・レトルト食品,乾燥させた食品の5つのグループに分け,関連する食材の写真資料を配布して,問いに対する解を探究させた。ジグソー活動では配布資料を用いて話し合い,クロストークでは各班で導き出した解について発表させた。その後,配布資料をもとに加工食品の意義についてワークシートにまとめさせた。授業は2017年に実践し,調査対象はS市立中学校1学年34人(男子18人,女子16人)である。本授業の効果を検討するために,授業直後に意識調査を実施し,4件法で回答を得た。また,授業実施の1ヶ月前(授業前)と授業直後(授業後),授業半年後(以下,半年後と示す)に,「加工食品にはどのような目的があるか」の問いについて自由記述で解答を得た。また,授業後と半年後の間に,加工食品の意義の理解を問う穴埋め式のテストを実施した。分析対象者は32人(有効回答率94.1%)で,意識調査のデータは統計的処理を行い,記述データは内容をカテゴリーに分類して比較検討した。
    結果
     意識調査では,全10項目の評価平均が3.09以上であった。本授業は総合的に肯定的評価を得たことがわかった。最も評価平均が高かった項目は「②「加工食品にはどんな目的があるだろう」の課題はわかりやすかった。」で,評価平均は3.56であった。また,「⑥最初の班活動では,班の友達と一緒に資料の内容を理解しようとした(3.44)」,「⑦最初の班活動で班の友達の考えを聞くことは,資料の理解に役立った。(3.44)」,「⑧2回目の班活動では,自分の言葉で意見を述べることができた。(3.38)」の順に,高い評価を得た。配布資料をグループで協力して読み取るエキスパート活動が,資料内容の理解に役立っていた。加工食品の意義の理解について,「調理の手間を省く」は,授業前に約8割の生徒が解答していた。本調査対象者においても,加工食品として調理済み食品がイメージされていることが示唆された。「保存性を高める」と解答した生徒は,授業前が6人(18.8%),授業後が26人(81.3%)で,授業後に有意に増加した。しかし,テストで本設問を正答できたのは14人(43.8%)であった。半年後の解答者は21人(65.6%)で,その内訳をみると,授業前に同解答をした生徒は4人,半年後に初めて解答した生徒は2人であった。したがって,残りの15人(46.9%)については,本授業で獲得した知識が定着していたことが推察された。また,授業後の解答を分析した結果,エキスパート活動の影響と考えられる解答が24人(75.0%)に,ジグソー活動またはクロストークの影響と考えられる解答が10人(31.3%)にみられた。ジグソー活動に比べて,エキスパート活動の影響と考えられる解答が有意に多かった。
  • 望月 朋子, 河村 美穂
    セッションID: A3-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    研究目的
    ハンバーグは中学校家庭科の調理実習において教材として採用される頻度が高い料理である。三田ら(1975)によってハンバーグの調理実習を成功させるための着目点も明らかにされている。肉を扱う調理実習の題材として、ハンバーグは調理科学の要素が多く長く教材とされてきたが、家庭科の時間数が限られていることや、1時間で調理実習を行う必要からハンバーグを教材とする調理実習は実施されにくくなってきている。
    そこで、生徒がハンバーグの調理実習を通して何をどのように学んでいるのか、調理科学に関する知識の定着やその他の学習の成果を明らかにすることを本研究の目的とした。

    研究方法
    対象とした授業は2017年11月~2018年3月に静岡県東部公立中学校1年生2クラス60名(男子29名、女子31人)に実施した「ハンバーグを作ろう」である。本研究での分析データは1.質問紙調査と2.生徒のワークシートにおける記述の2つである。調査にあたっては、対象生徒に対して事前に研究目的等を説明し了承を得て行った。
    1.質問紙調査:授業前(2017年11月)と授業後(2018年3月)の2回に同一の質問紙調査を実施した。質問項目は、調理科学に関する知識の定着度をはかる問題である。ハンバーグの作り方における調理科学に関する9の設問に、選択肢4つの中から回答を求めた。
    2.調理実習後に生徒が記述した感想:生徒がワークシートに記述した調理実習の振り返りの内容をデータとして、カテゴリーを生成、分類して検討を行った。

    結果と考察
    1.調理科学に関する知識の定着度の正答率は、9つ全ての設問で向上し、9問の問題に対して事前33.3%から61.1%に上昇した。
    特に正答率の高い設問は(7)肉を人数分にわけ、『ハンバーグ』の形を作るまえに、自分の両手を使って、肉を何回か左右にうちつけるようにするのはなぜか:83.3%(50人)、(5)ひき肉に卵を入れてこねるのはなぜか:78.3%(47名)、(9)ハンバーグでは初めに中火で焼き、こげ目をつけるのはなぜか:71.7%(43人)であった。
    正答率の低い設問は、(8)ハンバーグの形は、小判型にして真ん中をへこませるのはなぜか:38.3%(23人)、(2)みじん切りにした玉ねぎをいためて、さましてからひき肉にいれてこねるのはなぜか:40.0%(24人)であった。
    2.調理実習後に生徒が記述した感想からは、達成感、習得した調理科学に関する知識、調理プロセスへの振り返り、協力、観察、味などのカテゴリーが生成できた。
    達成感のカテゴリーには「できるか不安だったけどうまくいってよかった」、「やった感(やりきった感)がある」、習得した調理科学に関する知識のカテゴリーには「手袋に肉がよくねばりつき」、「空気をぬこうとパンパンとしたら形がくずれそうになった」、調理プロセスへの振り返りのカテゴリーには「分量もしっかり見た」、「もう少しくぼみを深くしておいた方が良い」、協力のカテゴリーには「自分のこと以外にも手伝った」、「班のみんなにききながらやった」という記述がそれぞれ見られた。
    なかでも観察のカテゴリーには、「煮ているとさらっとしていたソースが思っていたようなソースになった」、「できあがりがふっくら」というように、生徒がハンバーグそのものをよく観察している記述と、「たまねぎのみじんぎりは、とても早くこまかくできたし、○○さんがすごい早さで包丁をうごかしていてビックリした」というように同じ班の仲間が行っていることをよく観察している記述がみられた。
    また味のカテゴリーには、「しっかりと中まで火が通っていて、やわらかくてジューシーでおいしかった」、「厚さもあって、食べごこちが良くおいしい」、「とてもフワフワして、おいしい」といったように多様な「おいしい」の表現があり、生徒自身の日常生活での経験や味と結びついていることがわかった。
  • 石川 万記子, 河村 美穂
    セッションID: A3-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    <研究目的>

     小学校の家庭科では、調理に関する基礎的・基本的な学習が行われ家庭生活で応用することが目指される。しかし、生活経験の少ない現代の児童は手順に則って学ぶことで精いっぱいであり、応用には至らない場合が多い。そこで、生活で応用することを目指しながらも、必要とされる知識・技能を問題解決力とともに学ぶことを重視し、「応用可能力」と名付けた。これは安彦(2008)が定義した活用型学習における活用Ⅱと応用の間に位置する能力と考えられ、習得した知識や技能を組み合わせるなどして、新たな知識を生みだす力であると考えた。

     昨年度の発表では、「野菜をいためる調理」において、食材のよさを活かすために食材によって下ごしらえや加熱の方法が異なるということを、児童が調理実験や調理実習を通して気付くような学習を工夫したところ、児童は自主的に応用しようという意欲を持つようになったことを報告した。

     そこで、今年度は、「じゃがいも」を調理する学習活動を通して、「応用可能力」を獲得するプロセスについて検討した。

     じゃがいもは、味が淡白であり、繊維質も少なく切り方、調理法、味つけ、他 の食材との組み合わせによって様々な料理を生み出すことができる。一方で給食などでもなじみのある食材でありながら、自分で調理したことのある児童は少ない。じゃがいもの調理法を学ぶことを通して応用可能力を習得する方法を試みた。



    <研究方法>

     小学校6年生の授業「くふうしよう おいしい食事」において、じゃがいもについて体験的に学び、最終的には児童各自がじゃがいもを入れた料理を考え、調理することとした。

     対象児童は38名(男子22名、女子16名)である。

     本研究で分析対象としたデータは、第11時(調理実習1週間後)のふりかえり記述である。児童の記述はすべてデータ化し、カテゴリーを生成して分類した。



    <結果・考察>

     じゃがいもの調理を応用という点から検討すると、以下の3点が考えられた。

     1つ目は、「その後に活かせる知識や技能」である。「じゃがいものかたさをかなり気にするようになった。」、「じゃがいもをシャキシャキ、ホクホクにする知識が増えた。」、「味付けの量を考えるようになった。」、「火が通りやすいようにニンジンはうすく切った。」など、ゆで加減や味の加減、切り方等について、調理を一般化して捉えるような記述が多く見られた。

     2つ目は、「組み合わせておいしくする工夫」である。「粉ふきいもには、色々な食材を合わせた方がいい。」、「同じ食べ物でも違う味つけをしている人がいたのはおもしろい。」、「嫌いな食材も料理の仕方によって食べられるようになるというのが分かった。」など、食材や調理法の組み合わせ方によるおいしさの追究をするような記述が見られた。

     3つ目は、「調理への関心や意欲」である。「自分の好みな料理を見つけられたりするとうれしい。」、「じゃがいもって何にでも合うんじゃないか。」、「じゃがいもをもっとおいしくできないかな。」、「じゃがいもに対しての見方が変わった。」、「次はいためるという作業があるものを作りたい。」といった、料理のレパートリーを増やしていくであろう記述が多く見られた。
     以上の結果よりじゃがいもについて学ぶ中で、児童は調理の応用性を考え、おいしさを追究して調理を家庭で行うことに意欲的になると考えられる。
  • 加賀 恵子
    セッションID: A4-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     現行の家庭科における金銭教育は、小学校で物や金銭の使い方と買い物の学習、中学校で主として自分の消費に関する金銭管理と計画的な消費、高校で生涯を見通した長期的な経済計画や家計収支が扱われてきた。小・中・高の系統性という点からは、中学校から高校へのジャンプアップが大きいという指摘があった。こうした課題やキャッシュレス化の進行への対応などから、次期学習指導要領では、中学校家庭科「消費生活・環境」の内容に「金銭の管理」が新設された。家庭の収入と支出や金銭管理についての内容が盛り込まれ、自分だけでなく家族の生活に必要な物資・サービスについての金銭の管理を扱うことになった。新設された「金銭の管理」の内容をどのように扱っていくのか、指導計画の作成はこれからの課題である。
     そこで、本研究では中学校家庭科に新設された「金銭の管理」の内容についてのカリキュラムデザインを試み、その有効性を検討することを目的とした。
    【方法】
     (1)カリキュラムデザイン:中学生の特性を踏まえた授業を構想するために実施したレディネス調査結果1)をもとに、指導計画を作成する。(2)授業実践による検討:(1)で作成した指導計画により授業を実践し、生徒への質問紙調査(自由記述を含む)によってその有効性を検討する。
    【結果】
    (1)カリキュラムデザイン
     レディネス調査では、対象の中学生には、家庭生活の中で家庭の収入と支出を意識して計画的に金銭の管理を行うための学びの機会があまり与えられていない実態が明らかとなっていた。そのため、指導計画の作成にあたっては、領域・人・実生活における実践とのつながりを重視した。具体的には、「家庭・家庭生活」の内容との関連を図り、生徒の身近な事例を取り上げたケース・スタディーを導入して、ペアワーク、グループワーク、ジグソー学習などの手立てを用いた。
    (2)カリキュラムデザインの有効性
     授業後の質問紙調査では、授業を通して「家計の収入と支出の関係や自分の家族の金銭管理について想像しやすくなった/自分のお金の使い方を振り返ることができた」とする者が70%程度見られた。また、「グループによる話し合い活動に意欲的に取り組むことができた/課題の解決策について、自分なりに考えたアイディアを出すことができた」とする者が80%程度いた。自由記述にも「友達と解決策を考える中で、自分にはない新たな視点が獲得できた」という意見が多く見られた。授業前後の消費行動に対する意識と行動に関する調査の比較では、「自分の家の収入と支出について知っておくことは必要だと思う」と意識する者の割合が有意に高くなっていた(p<0.05)。また、「商品やサービスを購入する時には、よく比較・検討してから買う/こづかい帳やアプリに、買い物の金額をメモしている/家で、生活費の話をする時に加わっている」といった行動をとると答えた者が増加する傾向が見られた。これらの結果から、領域・人・実生活における実践とのつながりを重視したカリキュラムデザインによる授業に一定の成果が得られたと考える。しかし、「一連の学習を通して学んだことを、自分の買い物や家族の生活に生かすことができた」とした者は50%程度であったことから、ケース・スタディーにおける学習課題の再検討や学習展開の工夫の必要性などの課題も明らかとなった。
    1)加賀恵子,磯村さおり,松原由加.(2017).中学校家庭科における金銭教育の検討-中学生の消費生活についての実態調査から-.大阪教育大学家政学研究会,生活文化研究,Vol.55,1-14.
  • 谷 昌之
    セッションID: A4-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/07
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】
     次期学習指導要領(2022年より実施)高等学校「家庭基礎」の内容に「消費者の権利と責任を自覚して行動できるよう消費生活の現状と課題、消費行動における意思決定や契約の重要性、消費者保護の仕組みについて理解するとともに、生活情報を適切に収集・整理できること」と記されており、教育内容の主な改善事項として「多様な契約、消費者の権利と責任、消費者保護の仕組み(公民、家庭) 」といった消費者教育の充実があげられている。
     悪質商法はIT技術の進歩なども相まって新しい手口も次々と発生して多様化している。悪質商法による被害を防ぐためにも、一人ひとりが知識を身につけるだけではなく、「怪しい」と気づく感覚を養う必要があると考える。そこで、生徒自身が「だます側」の視点に立ってシナリオを自作するロールプレイの手法を取り入れた実践を計画し授業を行った。
     本研究は、ロールプレイのシナリオ作成を通してだます側の心理を理解する活動を行うことで悪質商法に気づく感覚を養うとができたか、またシナリオ作成や発表の過程が能動的な学習として機能したかについて、有効性を明らかにすることを目的とした。

    【実践】
     2016年11月に大阪府内の公立高校(総合学科)の家庭基礎の授業(1年次必修科目・7クラス)において、生徒自身がシナリオを自作する悪質商法に関するロールプレイの実践を3時間行った。
    (1時間目)…概要の説明とチーム分け
    (2時間目)…「自分たちがだまされそうな設定」の検討とシナリ
           オ作成
    (3時間目)…ロールプレイ発表会と学習のまとめ

    【調査】
     実践前には事前アンケートを行い、(1)悪質商法に関する予備知識 (2)本人や身近な人の悪質商法被害の有無 (3)自分自身が今後悪質商法の被害に遭うと思うか (4)家庭科の授業やグループ活動についての意識 について調査した。
     実践後には事後アンケートを行い、(1)学習した上で、自分自身が今後悪質商法の被害に遭うか (2)ロールプレイを取り入れた授業の感想 について調査した。
     また、ロールプレイにおける設定や発表内容についてビデオ撮影を行い、シナリオを回収してデータとして収集した。

    【結果】
     「あなたは今後、悪質商法の被害にあうと思いますか? 」という設問を事前、事後両方のアンケートで問うたところ、「わからない」の選択肢を選んだ者が59%から48%に減少した。この結果は、学習を通してリアルな場面を学ぶことで自分のこととして考えることができた証であると考えられる。自由記述欄では「悪質商法なんかにだまされないと思っていたけれど、ちょっとの金額だとつい買ってしまいそうだと思った」「発表を見て、だまされているという感じがしなくて怖かった」などの記述がみられた。また、「グループで相談することによって発表内容が良くなったか?」「悪質商法の手口を理解することができたか?」「この授業は楽しかったですか?」という設問では肯定的な回答が多くみられた。生徒が能動的に学習に取組から悪質商法に対する知識を習得するだけではなく、どのようなプロセスで被害に遭うかという感覚についても養うことができたのではないかと考える。

    【引用文献】
     文部科学省.(2018).高等学校学習指導要領
  • 仲田 郁子, 久保 桂子
    セッションID: A4-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    1.目的
     これまで筆者らは、高校生に対する生活設計教育の指導内容について検討を重ねてきた。その中で、生活設計に必要な資金準備の方法については、種類が多く理解しにくいこと、ローンには消極的であることも明らかになった。
     平成28年度より、「大学進学」を資金準備の必要なライフイベントとして取り上げ、生活設計における資金準備の学習に取り組んでいる。授業の目的は(1)進学と金銭資源との関係を軸にして、設定された選択肢の長所・短所を検討すること、(2)自分の希望するライフコースのために必要な金銭資源とその準備について考えることの2点とした。昨年度はさらに選択肢を改良し、理解を深めるために討論の方法に工夫を加えて、再度授業を実施した。本報告では、その効果を考察するとともに、今後の課題を検討することを目的とする。
    2.方法
     授業は、本校普通科2年生6クラス(243名)及び国際コミュニケーション科1年生1クラス(40名)で実施した。科目は家庭基礎、実施時期は2018年2月である。
     「生涯の生活設計」の単元の指導計画は、(1)人生におけるリスクと生活資源の活用、(2)生活資源としての社会保障制度、(3)ライフコース別の家計シミュレーションの順で進め、その後本授業として(4)生活設計と金銭資源を実施した。本単元は、「生涯の生活設計」に加えて、「青年期の自立と家族・家庭」、「共生社会と福祉」、「消費生活と生涯を見通した経済の計画」を合わせて構成・立案した。
     本授業の流れは、まず学歴別生涯賃金、奨学金や教育ローンの実態、非正規雇用など若者の就労の実態などの資料の解説を行い、検討材料を提示する。続いて「大学に進学したいが、経済的な余裕がなく難しい」という状況を設定し、3つの選択肢を提示する。グループ討論と質疑応答を行い、それぞれの選択肢の長所と短所について検討する。最後に大学卒業後の奨学金返済の実態を示す資料を提示し、自分の考えをまとめさせた。授業実践後、生徒の振り返りの記述などから、授業の効果を検討した。
     今回の選択肢はA進学をあきらめる(後年お金が貯まってから進学することを含む)、B保護者に頼らず、自分がアルバイトをして進学する、C借金をして進学する(教育ローン、奨学金)の3つとした。
     またグループ討論と全体討論では、各グループに3つの選択肢の中の1つを割り当て、その選択肢の優位性とともに他の選択肢への批判をまとめさせ、優位性を発表させた。各グループの発表の後、相互に他の選択肢への批判を行い、議論の活発化を図った。
    3.結果
     選択肢の設定を修正したことによって、生徒の選択の偏りが緩和できた。グループ間の討論では、Aに対しては、自分の希望する職業につけない可能性が大きい、Bに対しては、アルバイトに追われて忙しく、十分に勉強できない、友人との交際にお金がかかり、資金を賄えないのではないか、Cに対しては、将来の返済が大変で就職できなかったら大変なことになるなど質問がなされた。それらに対する回答として、「付き合いを我慢する」「ブラックバイト」に気をつける」、「4年間は我慢してがんばり必ず就職する」、「高校生の今の内から少しずつ資金を貯める」などが挙がり、昨年に比べリスクのイメージが具体的になった。
     このように「借金する」または「アルバイトに追われる」というリスクと「進学したい」というライフデザインの関わりについて、より焦点化して思考を深めることができた。
  • 李 秀眞
    セッションID: A4-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    研究目的 本研究の目的は、中学生の生活時間配分を類型化し、類型別の時間管理行動、将来展望および時間使用に関する自己評価の特徴を明らかにすることである。
    分析データおよび分析に用いる変数 分析に用いるデータはベネッセ教育総合研究所の「放課後の生活時間調査(2013年)」である。調査時期は2013年11月11日から15日まで5日間であり、調査対象者は小学生5年生から高校2年生の合計8,100名である。このデータには、生活時間データが含まれているが、本稿では、生活時間の合計が1440分である中学生3,096人を対象とする。時間使用に対する自己評価に影響を与える要因を分析するために、日ごろの時間使用に関する自己評価を被説明変数として用いる。測定方法は、「あなたの日ごろの時間に使い方は、100点満点で、だいたい何点くらいだと思いますか」という質問に対し、回答は0から10の範囲で測定され、そのまま変数として分析に用いる。説明変数として、時間管理行動、将来展望を用いた。時間管理行動に関しては、Lee(2015)の研究に基づき、下位領域として、自立性、規則性、計画性を設定した。測定方法は、自立性については、‘朝は自分で起きる’、‘人にいわれなくても自分から勉強する’の2項目と構成した。規則性については、‘規則正しい生活をしている’、‘約束の時間を守るほうだ’の2項目、計画性については、‘計画的に勉強をする’、‘思いついたらすぐ行動に移すほうだ’、‘将来の目標がはっきりしている’の3項目と構成した。各尺度の信頼度 Cranbach’s α値は自立性0.846、規則性0.912、計画性0.843であった。将来展望については、‘将来のためにがまんするよりも今を楽しみたい’、‘将来は世界で活躍したい’、‘これらかの世の中をよくするためにがんばりたい’、‘将来の目標を持ちたい’の4つの項目を設定した。それぞれの項目は、「とてもあてはまる」(1点)~「まったくあてはまらない」(4点)の4件法で測定された。
    分析方法 中学生の時間配分の類型化を行うために、生活時間の中分類(8分類)を基準軸にクラスタ分析(K-means Cluster analysis)を行った。類型別の時間管理行動、将来展望および時間の使い方に対する自己評価の特徴を明らかにするために、一元配置分散分析を実施した。また、時間配分類型別に、時間使用に関する自己評価に影響を与える要因を分析するために、重回帰分析を行った。
    分析結果 第1に、中学生がどのように生活時間を配分しているのかを確認するために、類型化を実施した結果、3つの類型が抽出された。具体的に、類型1は27.45%、類型2は45.32%、類型3は27.23%を占めている。各類型別の生活時間の分布を参考に、類型1を学校外学習型、類型2を学校中心型、類型3をメディア中心自由時間型と命名した。第2に、男子学生についてみると、時間管理行動においては、規則性と計画性が時間使用に関する自己評価に影響を与えることが検証された。すなわち、規則性が高いほど、また、計画性が高いほど自分の時間使用に関する自己評価が高かった。以上の結果は、学校外学習型、学校中心型、メディア中心自由時間型ともに共通した結果であった。次に女子学生についてみると、時間管理行動においては、自立性と規則性が高いほど、自分の時間使用に関する自己評価が高く、3つの類型に共通した結果であった。一方、学校外学習型と学校中心型では計画性が高いほど、自分の時間使用に関する自己評価が高かった。さらに、女子学生のうち、メディア中心自由時間型は、学年があがるにつれて、自分の時間使用に関する自己評価が低くなることも確認できた。
  • 和田 早苗, 栗原 恵美子
    セッションID: A4-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    〈研究の目的〉
     「生活レポート」は家庭科の探究・発信型の学習実践で、小学校から大学での家庭科関連の授業の中で実施されている。小学生から大学生に至るまで基本的な進め方は同じで、各自が身の回りの生活の中で知りたいことなどから課題を見つけ、様々な調査方法を用いて調べ、用紙一枚にまとめ、発表し質疑応答を行うものである。主体的に生活をとらえ、課題を探究し、発信・共有する学習は、次期中学校学習指導要領の技術・家庭の3つの目標に関わり、特に「生活や社会の中から問題を見いだして課題を設定し、解決策を構想し、実践を評価・改善し、表現するなど、課題を解決する力を養う」ことに深く結びつく学習であろう。本研究では、中学校において実践してきた生活レポートの記録をもとに生徒の興味・関心のある内容について分析し、学習後に行ったアンケート調査を検討することで生活レポートを実施した成果を明らかにすることを目的とした。先行研究として、「家庭科における個をいかす学習の一方法―『生活レポート』に見られる子どもの関心―」(流田 1993)がある。
    〈方法〉
    1国立大学附属中学校第1学年3クラスにて2004年~2016年度に実施した生活レポート(n=1,456)の内容を分類し検討した。分類項目は次期中学校学習指導要領の家庭分野の内容および先行研究の領域区分を参考にして「家族・家庭」「衣生活」「食生活」「住生活」「消費生活」「環境」を設定し、発表内容として多く挙がるテーマの「行事」「睡眠」「病気」を項目として独立させた。複数項目の要素を含んでいるものは「総合」とした。また、参考文献に挙げられた資料の種類についても分析を行った。
    2(1)学習後の1年生に、生活レポートがきっかけとなり、興味・関心を持つようになったことの有無について調査し、生活レポートを通してためになったこと、および感想を自由記述形式で尋ねた。(2017年3月実施、n=101)
     (2)2年前に生活レポート学習を行った3年生を対象として、1年生で実施した生活レポートを通してためになったこと、および感想を自由記述形式で尋ねた。(2017年3月実施、n=107)
    〈結果〉
    ・対象とした全ての年で「食生活」の内容が最も多く、生徒達の食への関心の高さが示された。
    ・調査を始めた頃よりも増加している内容として「住生活」「睡眠」が挙げられる。住生活では収納術や片づけに関するテーマが多くみられた。世間で話題になっていることは子ども達も気になっていることが示された。
    ・「総合」に分類される内容も多く、生活を総合的にとらえていることが垣間見られた。
    ・参考文献に書籍(教科書も含む)のみを用いる数は減り、インターネット+書籍など種類の異なる資料を扱うケースが増えていた。
    ・1年生の3月に実施した調査では、生活レポートがきっかけとなり興味・関心を持つようになったことが「ある」と答えた生徒は65.3%、「どちらともいえない」27.7%、「ない」6.9%であった。
    ・3年生の3月に実施した調査では、「家事等日常の生活(掃除とか料理とか気軽にできること)で自分のレポートの事、他の人の発表で知ったことを生かせた。」「家庭科と一言に言っても、本当にたくさんの分野があって一人一人の発表が生活に役立つものでした。まとめるのは大変でしたが、知識を増やせたのでよかったです。」などの記述がみられた。
     生活レポートを通して、身の回りの様々な内容について楽しく学び合うことが、生活の中で実践してみようというきっかけとなったこと、主体的に課題を探究し、分かりやすくまとめて伝える力を培うことにもつながっていたことが示唆された。
  • 八幡(谷口) 彩子
    セッションID: A4-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    研究目的
     演者は、日本の家政学史・家庭科教育史研究の一環として、戦後、文部省の教科調査官として小学校家庭科の教育課程行政に携わった鹿内瑞子氏の旧蔵資料を読み進めている。「鹿内瑞子旧蔵資料」は、昭和26(1951)年~昭和52(1977)年の小学校学習指導要領改訂までをほぼ網羅し、小学校家庭科に関する教育課程行政の検討に不可欠な資料を含んでいる。すでに昭和20~40年代における小学校家庭科をめぐる教育課程行政、へき地教育行政、施設・設備の充実施策等について検討を進めてきた。「鹿内瑞子旧蔵資料」には、昭和20年代~50年代の全国各地における小学校家庭科の教育実践資料が数多く含まれているが、これらについては充分な検討を行っていない。そこで、本研究では、「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる全国各地の教育実践資料を取り上げ、戦後における小学校家庭科の展開過程の一端を明らかにすることを目的とする。
    研究方法
     本研究では、国立教育政策研究所教育図書館所蔵「鹿内瑞子旧蔵資料」(1,139点)に含まれる全国各地の小学校家庭科の展開過程が把握できる資料のうち、これまでに発表した「へき地教育関連資料」、施設・設備の状況等に関するものを除く、教育実践や研究発表大会、授業研究会等の資料を主な資料とする。
    結果と考察
    (1)『鹿内瑞子旧蔵資料目録』によれば、「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる全国各地における小学校家庭科関係資料は、①へき地教育に関するもの ②複式学級における学習指導に関するもの ③施設・設備の整備に関するもの ④小学校家庭科の存置や施設・設備の充実を求める請願書・陳情書 ⑤地方で開発された教科書・副読本・ワークブック・指導書等教材資料 ⑥全国各地で実施された教育課程等に関する研究発表大会、授業研究会等の資料 ⑦その他(書簡、地方行政の刊行資料等) に分類できる。このうち⑥全国各地で実施された教育課程等に関する研究発表大会等の資料は、昭和30年代以降のものが「鹿内瑞子旧蔵資料」に所蔵されている。
    (2) 上記⑥のうち最も古い資料は、小学校児童の家庭科研究発表会の発表内容をまとめた埼玉県産業教育振興会小学校家庭部「わたくしたちの家庭科研究第一集」(昭和31年2月)である(資料No.1076)。また、岐阜県小学校家庭科研究協議会による「家庭科研究集録 題材の構成とその指導 1959年度」(資料No.379)は、学習指導要領改訂に対応する目的でまとめられた実践指導案集である。
    (3) 昭和39年度より、全国小学校家庭科教育研究会が結成され、研究発表会の実施ならびに研究紀要の刊行を行っている。「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる昭和41(1966)年2月7日・8日に開催された「第2回全国小学校家庭科教育研究会東京大会要項」(資料No.317)によれば、「ボタン付け、ほころび直しの評価」「整った身なりの評価」など7件の被服分野の評価に関する研究発表が行われている。翌昭和42(1967)年2月17日・18日には「第3回全国小学校家庭科教育研究発表横浜大会」(資料No.312)が初めて東京以外の地で開催され、2つの会場において、「実践的態度を高める学習指導法」をテーマとする10本の公開授業、「生活課題をとらえた学習指導法」をテーマとする9本の公開授業が全国ブロック別研究発表5本とともに公開され、10分科会における協議が実施された。全国小学校家庭科教育研究会では、小学校家庭科が抱える問題を解決するため、毎年度運動方針を設定している。「昭和45年度運動方針」(資料No.287)は、全国組織の拡充、研究大会の推進、調研活動の推進、広報活動の強化、渉外活動の活発化の5点であった。
    参考文献:丸山剛史・左高美里・橋本昭彦(編集)『鹿内瑞子旧蔵資料目録(戦後教育改革資料19)』国立教育政策研究所(2006年)
    本研究は、JSPS科研費17K00758の助成を受けたものである。
  • 井上 えり子, 杉本 佳子
    セッションID: B1-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    目的 本研究では高校家庭科における非正規教員の勤務・教育実態について検討する。非正規教員の問題は広く知られてきたが、家庭科の非正規教員の実態は十分に明らかにされていない。よって、京都府立高校に勤める非正規の家庭科教員を対象とし、その実態を解明する。
    方法 2017年12月から2018年3月に、2016・2017年度に京都府立高校で家庭科を担当した非正規教員26人(うち男性1名)を対象として、勤務・教育実態に関する聞き取り調査を行った。なお、2017年度の京都府立高校の正規家庭科教員は62人、非正規教員は37(常勤10、非常勤27)人で、非正規教員の占める割合は37.3%である。調査内容は、勤務条件(雇用形態、勤務校の決定、賃金、福利厚生、担当科目、単位数、勤務時間)、勤務環境(施設・設備、生徒の状況、専任教員との関係性、管理職との関係性)、専門性(教員経験年数とその内容、授業内容と教材研究、研修状況、ロールモデルの有無、中学校高校および大学での家庭科に関する学習歴)、ライフイベント、家族関係などである。
    結果 対象者の雇用形態は常勤教員9人非常勤教員17人であった。非正規教員として働く理由は、20代~30代は正規教員を目指す人が多いが、40代以上は事情により退職を余儀なくされ非正規を継続する場合が少なくない。この他、同僚や委員会から依頼され、正規教員が定年退職後に非常勤を行う場合がある。非正規教員は勤務条件をはじめ多くの点で劣悪な状況にある。勤務条件の問題点としては、勤務校、時間数、賃金などについて希望を述べる場がなく管理職に決定される点が大きい。また、私立高校では福利厚生を受給できる場合があるが、公立では規定はあるものの週18時間以下の非常勤講師には適用されない点をあげる人もいた。勤務環境の問題点として、実習の準備と後片付けなどの残業が日常化している。非常勤のみの学校では家庭科室が廃止されるといった事態がみられた。また、人間関係上の問題では専任より非正規の方が経験年数や年齢が高い場合、悩みをもつことが多い。専門性については公的研修を受ける機会がなく、自己研鑽を積んでも評価されない点が不満となっており、非正規歴の長い教員ほどその傾向がみられた。
     次に、対象者を教員経験年数別に4区分し、分析した結果を示す。
     第1期は10年未満の初任期(10人)で、主として20代の独身教員である。正規教員を目指す常勤教員(5人)が多い。学習意欲は高く、第4期の教員から指導を受け自主的研修会に参加する教員が複数いる。一方、採用試験の受験勉強をする時間が取れないことや次年度の就業や将来に対する不安をもっている。第2期は10年から25年未満の中堅期(4人)で30代から50代の幅広い年齢層が含まれる。うち常勤講師(3人)は第1期と同様の問題を持っていた。正規教員として勤務したが、育児や家事を優先して退職し、子どもが学齢期となり再就職した人もいる。中高家庭科に加え他校種の教員免許をもつなど、教職に対する意欲や熱意は強い。この期では経験を積んでいるが故に、正規教員との関係に悩むことが増えてくる。第3期は25年以上の熟練期(7人)で50代から60代の既婚の教員である。4人は正規教員としての経験があり、退職して子どもが学齢期となった後に非正規として勤務している。全員が非常勤であるが、週16時間以上担当している人が4人おり労働時間は少なくない。優れた教員をロールモデルとして地道に努力してきた姿が伺えるが、正規教員との関係が難しく、自己研鑽を積んでも評価されない問題などの悩みを抱えている。第4期は35年以上の円熟期(5人)であり、60代の府立および私立高校を定年退職した教員である。意欲が高く、長年の研鑽に裏打ちされた高い専門性をもっている。うち、3人は家庭科教育研究者連盟京都サークルの会員であり、研修会を行うなど若手の非正規教員の育成に対して指導的役割を担っていた。
  • 高橋 菜月, 池崎 喜美惠
    セッションID: B1-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    〈背景・目的〉団塊の世代の大量退職時代を迎え、新規採用教員の大量採用が進んでいる。初任者育成は重要かつ急務である。一方、「生きる力の更なる充実を目指した家庭科教育への提案」(2017)において、高等学校家庭科教員は、学んできた専門領域により指導分野に「得手」「不得手」が生じていることが示された。また、高等学校家庭科教員の配属校は、専門学科設置校や家庭科担当1人配置校等様々である。初任者も配属校で1人の家庭科教員として適応し指導することが求められ、それに伴い多様な不安感を抱えていることが予想される。本研究では、初任者への支援策を検討する前段階として、高等学校家庭科初任者が抱える教科指導上の不安感を具体的に明らかにすることを目的とする。
    〈方法〉関東3県の高等学校家庭科初任者27名を対象に、各県の高等学校家庭科初任者研修会及び郵送にて質問紙調査を2017年8月~9月及び2018年1月~2月の2回実施した。質問内容は「属性」「学校業務全体の不安感(20項目)」「教科指導の際に抱く不安感(39項目)」自由記述にて「不安を抱いている分野とその理由」「1年間を振り返って教科指導に自信がついたか」等である。なお、自由記述の分析の枠組みにはSteps for Coding and Theorization(SCAT)を用いた。
    〈結果・考察〉指導経験による不安感の相違について分析した結果、「学校業務全体の不安感(20項目)」のうち「教科指導」のみ回答率に有意差があり、第2回目の方が第1回目と比較し低かった。一方、「教科指導の際に抱く不安感(39項目)」の合計得点の比較において有意差はみられず、各項目の比較において「新しい指導方法を取り入れる」の項目のみ有意差がみられ、第2回目の方が低かった。また、「講師経験」の有無と不安感得点を比較した結果、「アレルギーの子どもに配慮した授業」「アレルギーが発症した場合の対応」「危険を予想して授業」「調理実習において実演」「年間計画通りに授業を実施」「家庭生活に生かすような手立て」「体験活動の際地域との連携」の7項目において有意差がみられ、講師経験「なし」の方が高かった。以上から、第1回、第2回間の約半年の指導経験では教科指導上の不安感に与える影響は少なく、講師経験等1年以上の指導経験は不安感を軽減させうることが示唆された。特に講師経験の有無により差があった「アレルギー」に関する内容や「危険を予想して授業」をおこなうことは、生徒の安全に関わる重要事項である。初任者が事前に知識を身につけることで、不安感を軽減させる可能性が推察された。また、「不安を抱いている分野とその理由」(複数回答可)の回答率は「衣」58.3%、「食」29.2%、「住」16.7%、「消費」20.8%、「家庭経済」25.0%、「保育」16.7%、「家族」20.8%、「高齢者」29.2%であった。自由記述から最も多くの分野において【指導内容・指導方法に対する困難】がみられ、次に【知識不足による不安】及び【自身の専門外分野を指導する不安】が多くみられた。続いて【自身の能力と求められる専門性とのギャップ】等を抱えていることが明らかとなった。他の質問回答からも初任者が不安感を抱く原因として、高等学校家庭科の授業に求められる専門性と自身の知識・技術等とのギャップが生じていることが推察された。さらに、「1年間を振り返って教科指導に自信がついたか」の質問に対し「自信がついた」群(37.5%)は【周囲との関係が良好】【授業の土台づくり・先の見通し】【自己成長を実感】、「なんともいえない」の回答者(45.8%)は【成功体験の少なさ】【自己評価の結果】【組織に対する批判】、「少し不安がある」の回答者(12.5%)は【来年度の見通しがつかない】【良い授業の基準がわからない】をそれぞれの理由として挙げていた。
     今後、より詳細に教科指導上の不安感を明らかにし、初任者教員への支援策の1つとして初任者教員向けのガイドブック等の作成を検討している。
  • 計良 智子
    セッションID: B1-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    目的
    本研究は、高校家庭科教師にみる専門性発達とそれを促す環境を実践事例や実践記録に基づいて明らかにするものである。

    家庭科教師にとって、どのようにして専門性発達が促されているかは重要な課題である。この専門性発達の調査研究に、実践コミュニティが家庭科教師の成長にどのような役割を果たしたのか、そして、戦後の教育改革で誕生し成立した教科の変遷に家庭科教師たちはどのように関わってきたのかを考察した小高さほみ(2010)『教師の成長と実践コミュニティ』がある。また、教師の職能成長プロセスに焦点をあて、9名の家庭科教師のライフヒストリーを通して、個々の教師が考える「よい授業」がどのような生活体験や教師経験から培われてきたかを読み解いた河村美穂らの(2017)『9つのライフヒストリーにみる家庭科教師のくらしとキャリア』もある。しかし、小高(2010)や河村ら(2017)は、校長をはじめとして学校全体が家庭科教育にどのように関わったか、更に地域との関わりから見た家庭科教師の専門性発達はいかなるものかについては明らかにしていない。教師の成長・発展は、教育実践とその振り返りを通して促されるものであることを考えると、校長や同僚、地域などから見た家庭科教師の専門性発達についての教育実践を分析することは欠かせない。


    方法
    教師の「専門性」および「専門性発達」を構成する概念は数多くある。その中で本研究では、久冨義之(2008)にならって、教師の「専門性」を「ある職業やその仕事内容の専門的性格」と定義する。また「専門性発達」は、今津孝次郎(2008)にならって、「『経験の省察』が可能な態度・技能を獲得し, 省察の結果として新たな知識を生み出し続けること」と定義する。

    こうした先行研究の知見にもとづき、全国高等学校長協会家庭部会報を主な資料として高校家庭科教師にみる専門性発達とそれを促す環境を分析・考察した。


    結果
    全国高等学校長協会家庭部会報に記載されている内容をもとに,

    高校家庭科教師にみる専門性発達とそれを促す環境を明らかにすると以下の知見が得られた。

    事例1 校長および家庭科教師の意識からわかる家庭科教師の「専門性」(第124号)

     校長が家庭科教育に最も期待することと家庭科教師が家庭科教育で最も重要だと考えることは、「衣食住に係る実践力」で一致していた。2番目から4番目の「消費者教育」「食育の推進」「子育て教育」は、順番は異なるが同じ項目が選択された。

    事例2 地域連携型の家庭科教育と教師の専門性発達(第130号)

     スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール事業の取組として、1年目は「基礎力」、2年目は「思考力」の習得を中心に研究を行い、3年目は「実践力」の習得を中心にと段階的に積み上げ、様々な活動を実践し地域から海外へと発信している。この事業は家庭科教師が中心となり地域の行政と産業界、地域で活躍している卒業生と連携し推進する中で、教職員全員が協働し、地域との連携を一層深め、学校の活性化につなぐという成果があった。

     これらのことから、校長と家庭科教員の意識はほぼ一致して「衣食住に係る実践力」「消費者教育」「食育」「子育て教育」であることがわかった。また地域連携型の実践が教師の専門性発達に大きく関わっており、1年目は「基礎力」、2年目は「思考力」、3年目は「実践力」の習得を中心に実践へと段階的に積み上げていくことで、教師自身の研究力と実践力が飛躍的に向上し、専門性発達を促していることがわかった。専門性発達を促す環境として、学校内の人的資源だけでなく、地域の行政、産業界、地域で活躍している卒業生の存在が明らかになった。

     高校家庭科教師の専門性発達とそれを促す環境は、学校関係者だけでなく、地域行政、地域の産業、そして海外へと視点を広げる必要がある。
  • 冨田 道子, 石垣 和恵, 齋藤 美保子, 小谷 教子
    セッションID: B1-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    【目的】
     現代社会において急速に進展しているグローバル化,情報化や技術革新は,人間生活を質的に変化させつつある。とりわけ,学校教育においては,様々な背景を持つ人々が互いを尊重しあいながら協働し,多文化共生社会を実現することが求められている。
     本研究は,これまで実施してきた共生・人の多様性理解を深めるユニバーサルデザイン(以下,UDとする)授業にアセスメントの手法を取り入れることで,教員養成系大学の家政教育における授業改善へつなげる示唆を得ることを目的とする。

    【方法】
    (1)授業デザインにおけるアセスメントのための指標作成
     『家庭科UD学習手引書』(以下,手引書とする)に基づく先行研究をふまえ,学修をより質の高いものにするという視点に立ち,共生・人の多様性理解を深め,人権意識を高める授業デザインを検討するための指標を作成した。具体的には,石森広美(2013)のアセスメント概念を参考に,従来のUD授業前後に実施してきた生活意識調査,UD知識調査,UD意識調査とその内容を,教員養成系大学における家政教育の果たす役割に焦点を当てて作り直した。詳細としては,ユネスコ総会において採択された宣言等や子どもの権利条約,障害者差別解消法,パートナーシップ条例など,大学生につけたい資質・能力を確認しながら,大分類名として「態度・価値観」「知識・理解」「行動」の3つを設定し,「態度・価値観」の中分類名として『自己理解』を,「知識・理解」の中分類名として『基本的知識』『制度的知識』を,「行動」の中分類名として『コミュニケーション(個人・協働)』『問題解決』『情報収集』を設定し,その内容も検討した。

    (2)手引書とワークシートの加筆・修正
     作成した指標に従い,手引書の加筆・修正をした。

    (3)調査方法
     修正した手引書による授業実施前後に指標の知識・意識調査を行い,授業直後にはワークシートに感想を記述させた。本研究では,記述内容を類似した回答ごとに分類し,数量的把握を行うことで学生の学びを探索的に求めた。調査対象者は,東北,関東,関西,中国,九州地方の教員養成に関わる国立・私立大学および短期大学の学生193名であり,授業実施時期は2017年6月~11月である。

    【結果】
     学生の感想記述内容を先行研究で使用した分類名をもとに分析した結果,先行研究では分類名「発見(気づき)」「視野の広がり」「主体的行動」に関する記述割合が高かったが,本研究における記述は分類項目全体に散らばり,とりわけ「公平さ」の記述割合は15.8%から32.6%になった。また,「主体的行動」は一項目として捉えると割合が減少したように思われるが,結果全体を俯瞰すると,「応用する」の小項目『児童との関わり』に見られるように,学生は学校現場に出た時の自分をイメージしながら,児童とどのように関わりたいかを考え,『授業の工夫』に見られるように,多様な児童が教室にいることを想定しながら,どのような授業の工夫が必要なのかを思考し,『学習環境』に見られるように,教室あるいは学校全体に求められる環境整備に思いをはせた記述をしており,小項目3つの合計割合は0.5%から17.2%に高まった。つまり,「探してみたい」「共生社会が実現できるよう努めたい」といった行動から一歩踏み込んだ,より具体的な行動を記述していることが明らかとなった。
     参考:石森広美.(2013).グローバル教育の授業設計とアセスメント.東京:学事出版.
     本研究は,科研費基盤研究(C)17k04903の一部である。
  • 青木 香保里, 志村 結美, 日景 弥生
    セッションID: B1-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    目的
     教育職員免許法の改正に伴う教職課程コアカリキュラムの実施が目前に迫っている。
     教科教育法(家庭科教育)の授業において取り扱う教育内容として想定したのは、家庭科教諭・栄養教諭・養護教諭の連携に係る内容であると同時に家庭科と保健(体育科)の連携に係る内容である「アレルギー(食物アレルギー)」である。現在、国民の3人に1人がなんらかのアレルギー様症状を有しているといわれ、児童・生徒の場合、アレルギー疾患をもつ割合(以前にアレルギーと診断された者を含む)は約半数に上るといわれる1)
     本研究は、アレルギー(食物アレルギー)に関する教育内容を、①「教科内容」と「教職内容」、②「専門職性」と「専門性」の点から構想した授業実践をもとに、教職コアカリキュラムにおける教科教育法(家庭科教育)が扱う教育内容について、「教科内容と教職内容の接続」および教師としての「専門職性」「専門性」に関する認識の形成に向けた検討を行うことを目的とした。

    方法
    1)「家庭科」と「体育科」「保健体育科」の「保健」領域の学習指導要領、および教科書記述等の現状を把握した。
    2)学校生活における教育活動を概観し、家庭科教諭・栄養教諭・養護教諭の連携が可能な場面を抽出した。「アレルギー(食物アレルギー)」に関する教育内容を「教科内容」「教職内容」および「専門職性」「専門性」の点から整理・検討し、教科教育法(「家庭科教育」)の授業実践を行った。
    3)教科教育法(「家庭科教育」)の授業実践後の学生のコメントをもとに検討した。

    結果
    1.「家庭教育」と「学校教育」の連携
     「食物アレルギー」の理解と対応を目的に、厚生労働科学研究が発行した『セルフケアナビ 食物アレルギー お家でできること』(2008)では、「配慮の必要な場面」として、「宿泊」「行事」「運動」と並んで教科の活動である「図工」「家庭科」が挙げられている。
    2.「教科教育」と「教科外教育」の連携
     教育計画や教育課程全体を見渡し、具体的な場面を想定し、教科教育と教科外教育の連携を視野に入れ、教科の独自性や存在意義を意識した教科内容の開発がもとめられる。
    3.「教科内容」と「教職内容」の接続
     家庭科におけるアレルギー(食物アレルギー)に関する「教科内容」を指導する場合、必然的に教師としての役割や職務に関する「教職内容」を重ね合わせ、実際的な場面を想定した指導がもとめられる。
    4.「専門職性」と「専門性」に関する認識の形成 
     教科としての家庭科の発足とあゆみ、社会の進展に伴う生活の変化と生活課題と家庭科の変遷など、家庭科教育や家庭科教員をめぐる歴史的背景に対する「専門職性」の自覚に関する認識形成と、家庭科を支える知識・技術の「専門性」を高め探究する意識に関する認識形成が必要である。

    <参考文献>
    1)アレルギー疾患に関する調査研究委員会『アレルギー疾患に関する調査研究報告書』2007年
  • 齊藤 紀子, 伊藤 圭子
    セッションID: B1-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    【目的】

    特別支援学校高等部には、特別支援学校中学部だけでなく、中学校特別支援学級や通常学級と異なった校種から進学した生徒たちが在籍し、共に学んでいる。このことについて中央教育審議会答申においても「幼・小・中・高等学校と特別支援学校間での教育課程の円滑な接続」の必要性が強調されている。

    特別支援学校高等部の家庭科授業では、地域の中学校からの進学者は「技術・家庭」、特別支援学校中学部からの進学者は「職業・家庭」「作業学習」「生活単元学習」等と異なった科目で履修した生徒が共に学んでいる。そのため、家庭科として小学校・中学校からの連続した学びを高等学校での発展的な学びに繋げることが難しい状況がみられる。さらに、特別支援学校高等部に在籍する軽度知的障害生徒数は増加傾向にあり、特に知的障害特別支援学校における家庭科において、多様な学びに対応する中・高の学びの連続性をどのように確保するかが緊急な課題となっている。しかし、家庭科の観点から校種間での学びの連続性に関して検討した先行研究は認められない。

    そこで本研究では、特別支援学校における初等・中等教育をつなぐ学習の円滑な移行や接続を検討する研究の一環として、 特別支援学校中学部・中学校(特別支援学級,通常学級)と高等部の接続に関して、 特別支援学校高等部家庭科における教師の課題意識等を明らかにすることを目的とする。

    【方法】

    調査時期;2017年7月から9月

    調査対象;全国の特別支援学校知的障害部門高等部Ⅰ類型の家庭科担当教員737名を対象として質問紙郵送法による調査を実施した。有効回収数は224名(有効回答率 30.4%)であった。その内訳は、女性182名(81.3%),男性29名(12.9%)であり、家庭科教諭免許と特別支援学校教諭免許を共に有していたのは108名(50.9%)であった。調査内容は、教師の基本属性,特別支援学校家庭科の履修状況、特別支援学校中学部・中学校(特別支援学級・通常学級)と高等部の接続状況などであった。

    【結果】

    1.特別支援学校高等部への入学者の割合は、地域の中学校(通常学級)からの入学者「1割以下」の学校が91.9%であり、特別支援学級からの入学者「8割以上」の学校が24.4%みられた。特別支援学校中学部からの入学者割合は「1割以下」の学校が21.2%みられた。

    2.特別支援学校高等部入学前の家庭科履修状況の違いによる高等部家庭授業での困難状況について自由記述で訊ねた結果をKJ法によって分類すると、7つに大別された。

    《学習履歴の相違による知識や技能の習得差による指導困難》(162件)では、中学校(部)での道具使用経験の差が基礎技能の習得差として生じ、同一教材での指導が困難であることや、学習内容の差を克服するための基礎学習時間の不足などの記述がみられた。また、生徒の障害状態や家庭での経験不足などによる多様性により《個に応じた支援困難》(17件)や、教師の指導意識の差が生徒の安全や衛生、危険の認知に差をもたらす《危険認知の差》(7件)などの記述もみられた。さらに、家庭科的な内容を日常生活面と関連付けて生活単元学習や作業学習で《合科による指導》(7件)をすることで意欲的な学習が可能であるが、家庭科の深い内容の学習は難しいという意見もみられた。一方で、《困難なし》は57件であり、具体的には、生徒に実態差があっても、個に応じた支援をして基礎・基本を繰り返し学習して定着を図っているため困難に感じないなどの記述がみられた。これは、生徒の実態把握が不可欠とされる特別支援教育においては、個々の学習履歴や到達目標の違いを前提として捉えられていることに起因していると考えられる。
  • 中西 佐知子, 堀内 かおる
    セッションID: B1-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    【目的】文部科学省は「学校における教育の情報化の実態に関する調査」として,平成16年度から「学校におけるICT環境の整備状況」,平成18年度から「教員のICT活用指導力」調査を全国の公立学校(小学校,中学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校)を対象に毎年実施している。ICT環境の整備状況,教員のICT活用指導力いずれの実態も年々向上しているが,都道府県,市町村における地域差も存在している。各教科におけるICT活用の状況については調査されていない。全国家庭科教育協会(ZKK)は,「家庭科におけるICT活用の実態に関する調査」を平成27年度に指導主事,平成28年度にはZKK会員を対象に実施し,平成29年10月に結果が公表された。しかしZKK会員の回答者の約7割が高等学校教員であり,中学校教員の実態が明らかになったとは言い難い。先行研究では,ICTを活用した授業づくりや指導については見られるが,中学校家庭科教員のICT活用の実態については,明らかにされていない。そこで,本研究では平成28年度に神奈川県を対象とした調査に続き,平成29年度に最先端の取り組みと実績をもつ佐賀県を対象に調査し,ICT環境の整備状況が家庭科教員のICT活用指導力に与える影響やICT活用指導力とICT活用に対する意識との関わり等を,神奈川県の調査結果との比較から明らかにすることを目的とする。
    【方法】平成28年度に実施した神奈川県の調査と同じ内容で,ICT活用の先進県である佐賀県公立中学校86校の技術・家庭科(家庭分野)担当教員を対象に,郵送による質問紙調査を実施した。質問項目は,1.文部科学省実施調査「教員のICT活用指導力」(A教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用する能力,B授業中にICTを活用して指導する能力,C生徒のICT活用を指導する能力,D情報モラルなどを指導する能力,E校務にICTを活用する能力),2.家庭科の授業におけるICT活用,3.家庭科担当教員としてICT活用に関する意識・考え,4.属性とした。
    【結果】1.文部科学省の調査結果から,佐賀県はICT活用指導力A~Eすべての項目で神奈川県の結果より大きく上回っていたことから,佐賀県中学校家庭科教員(以下,佐賀)も神奈川県中学校家庭科教員(以下,神奈川)より高い結果になると予測されたが,5項目中4項目が神奈川を下回る結果となった。また,佐賀県中学校の結果と大きな差があることが明らかになった。佐賀と神奈川の共通した課題は,項目C「生徒のICT活用を指導する能力」であり,佐賀が神奈川を上回った項目B「授業中にICTを活用して指導する能力」は,ICT環境の整備されていることで盛んに活用されている表れと言える。2.ICT活用の実態は,神奈川では「毎回,ほぼ毎回」と頻繁にICT活用する割合が約10%に対し,佐賀は約45%を超えていることから,授業中にICTを活用する経験を積み重ねていることがわかる。「ICT活用した授業をほとんどしない,全くしない」という割合が約30%と高い神奈川の理由は,ICT環境の不備によるもの,自身のスキルや自信のなさによるものが多かった。ICT活用の方法は,総じて「教員が主体」となり「普通教室・被服室」で,「一斉学習」の形態で,「導入・展開」の場面での活用であった。佐賀では「まとめ」にも多く活用されていた。さらに,佐賀では電子黒板,タブレットが多用され,神奈川に比べて様々な目的で活用されていた。3.ICT活用の意識について,佐賀は「得意で積極的に活用している」割合は神奈川より少ないが,「楽しく積極的に活用している」が約70%と高かった。
    【今後の課題】両県共通して,電子黒板・タブレットに対して授業改善の可能性を意識し,その操作スキル,デジタル教材作成のスキル獲得が求められていた。学校内でのICTに関する学び合いの醸成,家庭科教員間の教科指導におけるICT活用の検討が求められる。
  • 小川 裕子, 藤原 恵里, 伊深 祥子, 飯野 由香利
    セッションID: B2-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【研究の目的】本研究では、昨年度の本大会でポスター発表した
    2016年度授業実践研究の成果から、住生活に関わる知識の獲得につ
    いてはほぼ達成することができたものの、不十分に終わった「思考
    の深まり」を得るために、以下の諸点を改善して改めて取り組んだ
    2017年度授業実践の成果について明らかにする。授業の改善点は、
    ①「問い」の改善、②エキスパート資料の量を削減することと質の
    改善、③ジグソー活動における課題の提示とクロストーク時間の確
    保、そして④評価方法、ルーブリックの改善である。
    【研究の方法】(1) 2017年度授業デザイン 2017年度題材「将来
    の住生活について考える」授業プログラムは、以下の指導計画であ
    る。第1時は導入・エキスパート活動(資料の読み込み)、第2時は
    エキスパート活動(資料の読み込み)、第3,4時ではジグソー活動
    (課題:5つの視点で4種の住居を比較)、第5時ではクロストーク
    を行うというものである。また、授業プログラムの事前と事後に実
    施した「問い」は、「あなたは将来どのような住居に住みたいと思
    いますか。(1)将来住みたい住居の特徴を箇条書きでできるだけ多
    く挙げなさい。(2) (1)で書いた特徴の中で最も大切にしたいことを
    一つ選びなさい。また、その特徴を大切にしたい理由を、将来の自
    分のライフスタイル(職業生活、家族像や余暇の過ごし方などをま
    とめた生活像)と関連させて具体的に書きなさい」として、20分間
    で自由記述による解答を求めた。授業の対象者は静岡県立K高等学
    校の1年生3クラス「家庭基礎」受講者計40名であり、授業の実践
    時期は2017年11月である。
    (2) 授業実践の評価方法 「視点の広がり」については、「問い」
    (1)の解答に基づいて、2016年度と同様に行う。「思考の深まり」
    については、「問い」(2)の問題文を修正したことに伴い、ルーブ
    リックの修正を行った。住生活で最も大切にしたい要素を選んだ理
    由について、将来の自分のライフスタイルと関連させて、現実的な
    思考を持ち具体的に論述している場合はA評価、現在の自分の住要
    求と関連させて論述している場合はB評価、単純な理想に過ぎず、
    現実性を持たない住居に関する論述である場合はC評価、記述が無
    い場合をD評価とした。
    【結果】 まず、生徒の住生活に関する「視点の広がり」(基礎的
    な知識の獲得)について述べる。生徒の記述率が有意に上昇した住
    生活の視点項目(高等学校の学習内容計22項目中)は、2016年度
    では14項目、2017年度では13項目あった。2017年度はクロスト
    ークの時間を確保するため、エキスパート資料を量的に2016年度
    の半分に削減したが、以上の結果に大きな差異は表れなかった。こ
    のことは、本授業実践が、限られた授業時間の中で住生活に関わる
    基礎的知識の獲得に効果があることを示すものと考える。次に、
    「思考の深まり」については、2017年度、将来の住生活で大切に
    したい要素や理由について具体的に記述できる生徒が増え、半数が
    A評価に達したことは成果である。この理由としては、ジグソー活
    動やクロストークの時間が増えたことと、ジグソー活動中に課題と
    した4種の住居・住生活を、新学習指導要領で取り上げられた「各
    教科等の特質に応じた見方・考え方」を参考に、5つの視点を設け
    て比較・考察させたことが考えられる。一方で、2017年度の「問
    い」(2)における課題も明らかとなった。「問い」(2)の内容から、
    A評価には「将来の自分のライフスタイルと関連させて」としたが、
    本授業の対象である高校1年生という発達段階では、将来の職業や
    家族像を、住生活と結び付けて具体的に想定することはまだ難し
    く、「将来」ではなく「現在」の自分の住要求と結び付けて記述し
    た生徒が少なくなかったと考えられる。すなわち、住生活に関して
    具体的に思考できたとしても今回のルーブリックでは十分に評価で
    きなかったのではないかと考えられる。本研究は文部科学省科学研
    究費助成事業(基盤研究(C)課題番号:17K04767)による。
  • 金子 京子, 伊深 祥子, 小川 裕子, 飯野 由香利, 藤原 恵里
    セッションID: B2-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    1、問題と目的

     平成29年告示の中学校学習指導要領では、技術・家庭(家庭分野)の住生活は、「衣食住の生活」として扱われることになった。住生活の内容は「住生活の機能と安全な住まい方」とされた。高等学校の調査では住生活の学習は教えにくいとされている(宮崎ら2008)。中学校でも住生活の授業実践は教えにくいとされる内容である。小川ら(2014)は、住生活領域の授業配当は4~6時間がもっとも多いことを示している。本研究の授業内容は、中学校技術・家庭(家庭分野)の「住居の機能と安全な住まい方」の中の「家族の生活と住空間との関わりが分かり、住居の機能について理解すること」である。ジグソー法を用いた4時間の住生活の授業開発を行った際の効果について明らかにする。

    2、研究方法

     研究対象は、さいたま市H中学で初任者が指導する1年生2クラスである。授業実施時期は2018年1・2月である。研究方法は記述分析である。授業後の3回の生徒の記述を分析対象とした。

    3、授業の概要

     5時間扱いのカリキュラムの2時間目から5時間目の4時間を使い、ジグソー法を用いて「家族の生活と住空間との関わりが分かり、住居の機能について理解すること」を取り上げた授業を実施した。2時間目の初めにジグソー法の学習を実施することを伝えた。使用した資料は、A日本家屋・Bスマートハウス・C高層マンション・Dコレクティブハウスの4つである。4~5人のホームグループで、各自が資料を読み込んだ後、3時間目に発表原稿の作成を行った。4時間目と5時間目は、ジグソーグループ゚による活動を実施した。発表は、質問時間を含めて10分とした。ジグソーグループでは、質問を考えたり答えたりすることが、学びに効果的であると考え、質問することを、ジグソー学習中の机間指導の重要な配慮事項とした。最後に授業から学んだこと、自分の理想の住まいについて記述した。この課題の完成は家庭学習となった。

    4、結果と考察

     計3回の授業後の生徒の記述(ホームグループの学習後とジグソーグループの学習後、および自分の住みたい理想の家を考えた後)をまとめた結果を、下記に示す。

    :ホームグループ学習後:ジグソー学習直後 :理想住まい記入後

    1位家に関する知識  1位家に関する知識 1位住む家の条件

    2位発表に関する学び 2位発表に関する学び2位家に関する知識

    3位授業感想     3位住みたい家   3位住みたい家

    4位住まいを知りたい 4位授業感想    3位住みたい間取り

    5位住みたい家    5位将来への参考  3位授業感想

     計3回の記述から、ジグソー法を用いた学習では、生徒は授業を進めるごとに家に関する知識・理解を深めていることがわかる。特に「いろいろな家の特徴が分かった」等の『家に関する知識』は3回とも上位に入っており、自分が住む家について考える指針となっていた。次に授業の中にでてくる4つの家のどれかに住みたいという意思を明記する『住みたい家』に関する項目が回を増すごとに高くなっていた。最後に、自分の理想の住まいを書いた後の記述では、「今までは豪華でおしゃれな家に住みたいと思っていたけれど、様々な家の勉強をして、ただ広くておしゃれな家なのではなく、住みやすさや何十年住んでも飽きない家が1番いい家だと実感しました・・」等住む際に配慮したい『住む家の条件』が1位になっていた。

     このように住居学習をジグソー法で学ぶことから、住生活について知識や考えが自分の生活とかけ離れていた生徒が、生活者として住むという視点にたって「住まい」について理解していくことに至っていた。今回の授業は新任の授業者であったが、経験が浅くても対話する授業を実施することができていた。今後どのような内容がジグソー法に適しているかを検討することが課題である。

     本研究は文部科学省科学研究費助成事業(基盤研究(C)課題番号:17K04767 代表者 小川裕子)による。
  • 飯野 由香利, 小川 裕子, 伊深 祥子
    セッションID: B2-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【研究の背景と目的】
     アクティブ・ラーニングの1つである知識構成型ジグソー法を用いた授業が中学校や高校で実践されている。知識構成型ジグソー法による授業を小学校で実践する場合、配布資料の内容を理解する力や説明する力及び対話する力が十分に備わっていない小学生には難しいと考えられることから、授業実践上の工夫が必要である。一方、小学校の家庭科では新学習指導要領において住環境全般の習得を目指している。
     そこで本研究では、小学校で住環境に関する実験型ジグソー法の授業を実践し、問題点や改善点を明らかにする。

    【授業の内容】
     2017年12月16日に新潟県A市立B小学校の5年生(男子15人、女子14人)を対象に、「現在住んでいる家でより快適な生活をするためにどんな工夫ができるか」という課題について、4つの住環境テーマ(A:暖かく住まう、B:涼しく住まう、C:健康に住まう、D:近くに住む人々と共に住まう)から捉える授業を2回行った。4・5人の児童で班を構成し、各人が1テーマを担当し、授業前に自分のテーマに関する資料を各人が読んできた。1回目の授業のエキスパート活動では、各住環境テーマの原理に関する実験を理科室で次の内容で実施した。A実験ではアルミホイルや新聞紙で腕を覆って保温の仕組みや床材の種類による足裏での熱伝導の相違を体感し、B実験で体から熱と水分が出ることをビニール袋を使って理解し、日光を想定した赤外線ストーブからの熱放射を体感し、C実験で箱の2つの窓の開け方の相違による流出量の相違の可視化、及びD実験で紙コップを用いて音の伝搬の仕組みを理解した。2回目の授業前に、各自のテーマの資料内容を復習するために中間課題を出して穴埋め問題に回答してもらった。教室で行った2回目の授業では、ジグソー活動班毎に各自のテーマの要点を他のテーマ担当の児童に説明し、説明を受けた児童はワークシートに理解した内容を記入した。その様子をiPadで収録した。さらに、同授業内で行ったクロストークでは班毎に各テーマで理解できた内容を発表して教員が板書した。総まとめは板書に基づいて行った。分析はルーブリック評価(心地よさ、健康性・安全性、工夫・改善方法の理解、省エネの4つの観点から理解度を評価)と1・2回の授業後に行ったアンケート及びワークシートの記述に基づいて行った。

    【結果】
    1)住環境に関するテーマ毎に、資料を読み、エキスパート活動で視覚的・体験的な原理実験を行った結果、児童は実験に積極的に取り組んでおり、理解できた内容数は資料内容より実験内容が多かったことから、原理実験は理解の向上に繋がることがわかった。
    2)ジグソー活動において、ほとんどの児童が各テーマについて資料を丸読みしており、実験内容に関する説明が少なかった。しかし、アンケート結果からは他のテーマの内容を理解できた割合が8割以上であった。A・Bテーマは身体からの放熱と温冷感との関係の知識が必要であることや資料内容の説明が多少難しかったために理解度が多少低かった。ルーブリック評価により各班でのジグソー活動後の理解度を分析した結果、平均的な理解度や理解度のばらつきが班により異なった。班による相違は主に説明力や聞いて理解する力によると考えられる。
    3)クロストーク時に発表された内容は資料内容のみの列挙に留まった。
    4) 各テーマにおける家庭実践の内容は、健康に住まうために換気をする(Cテーマ)が最も多く、次いで涼しく住まうためにカーテンを閉める(Bテーマ)や騒音の原因をなくす・遠ざける(Dテーマ)が多く、暖房器具(Aテーマ)も挙げられた。5)小学生が住環境の内容を理解する際に、資料内容の原理を実験するエキスパート活動を取り入れたジグソー法の授業はある程度有効であることがわかった。一方で、ジグソー活動時の伝達や対話を補うための実験時の写真やイラストを活用した資料の必要性が認められた。
     本研究は文部科学省科学研究費助成事業(基盤研究(C)課題番号:17K04767 代表者 小川裕子)の研究助成を受けた。
  • 池下 香, 妹尾 理子
    セッションID: B2-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    <研究背景と目的>
    グローバリゼーションの進展のもと、私たちの暮らしから長く守り伝えられてきた伝統や生活文化が失われつつある。その中で、学校教育においては伝統文化に関する学習の充実が求められており、家庭科の新学習指導要領においても、生活文化を学ぶことが重視されている。そこで本研究では、中学校家庭科での住生活に関する学習において、住文化に対する関心と理解を深めるための授業および教材の開発に取り組んだ。授業開発にあたっては、主体的・対話的に学びを深められるよう意識した。
    <研究方法>
    1若者の住文化に関する意識・知識に関する整理
    2教科書における住文化の扱いに関する整理 
    3体験的・実践的に住文化を学ぶための教材の検討
    4授業計画の作成と実践およびその効果の検証
    <結果>
    1住文化に関する若者の知識の実態と教科書の記述内容
    筆者らの調査では、中学生・大学生ともに和室に関連する名称や特徴についての知識や理解は十分とはいえないことがわかった。
    2教科書の記述内容
    住文化に関する教科書分析によると、小学校ではすだれやよしずといった伝統的な住生活の工夫の内容や意味を学ぶことが多い。中学校では日本の伝統的住まいや住まい方について、和室と洋室を比較しながら理解するというのが主な内容である。
    3教材の検討と開発
    住文化に関する知識や理解の現状をふまえ、伝統的な和室について学ぶ際には実物に触れ、五感を使って感じながら考える学びとなることが重要であると考えた。そこで、地元の職人の方に、ミニサイズの畳、障子とふすまの建具(引き戸)のミニチュア製作を依頼した。畳には新素材である和紙畳も含め、現代の主たる床(フローリング)材である木材も教材として準備した。
    4授業計画および実践
    授業として、開発教材を活用した題材「ライフステージに合わせた住まい」を計画し実践した。授業では、実体験と対話を重視し、対話に説得力(根拠)を持たせるために、事前にレポート課題「高齢になったら和室と洋室のどちらに住みたいか」を与えた。これにより主体的な学びが促されると考えた。本課題設定にあたっては、住生活学習に家族や家庭生活を関連付けることを意識し、現在と将来の両方の家庭生活を展望し、実践的な態度を育むことをめざした。事前学習により根拠を持った活発な対話が生まれ、新たに得られる知識や実体験が活用され、今後の生活を展望する力が育まれることを重視した。
    <考察>
    授業の結果、生徒たちの考えの変化は興味深いものであった。当初、洋室派と和室派では洋室派がやや多くいたのだが、安全面や活動性から洋室の良さを主張していた生徒の中から、伝統的な和室の良さを多面的に知り、考えが変化した生徒が複数みられた。しかし、その逆の変化はみられなかった。変化の要因としては、他の生徒の生活実感に基づいた発言や実際の体験を通して、自分だけの経験や学びでは得られない伝統的住文化の長所を知ったことがあげられる。例えば、高齢者の精神面での和室の意味に気づいたこと、和紙でできた畳など新たな素材により従来の短所を補うことができると知ったこと等である。日本の住文化の象徴である和室の特徴について、主体的・協同的に学んだことで、生徒らは住文化に対する新たな認識を獲得したことが示唆された。
  • 栗原 恵美子, 和田 早苗
    セッションID: B2-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>
     平成29年3月に中学校学習指導要領が告示され、移行期間を経て平成33年度より全面実施される。実践研究してきた余熱保温調理の学習に関して振り返ると、新学習指導要領の基本理念、技術・家庭科の目標の実現、SDGsの実現、に合致する内容が多いことがわかった。
     そこで平成33年度に向けて、今まで実践してきた内容を更に省察し、余熱保温調理の学習の効果と課題を明確にし、また家庭科教育及び学校教育で、SDGsへの意識を高める余熱保温調理の学習の可能性を提案すること、を目的とした。

    <方法>
     先行研究として、保温調理に関する文献等にあたり、保温調理のメリット・デメリット等を調べた。その後、中学校家庭科調理室で保温実験等実施し、授業への展開を探り、授業実践研究を行った。
     学習後、生徒へ自主的な取り組みとして課した探究活動レポートを分析し、また振り返りアンケートを実施し、学習の効果等を明らかにした。
     また実施上の課題解決の方策を検討すべく、協力を得られた教員にインタビュー調査を実施し、余熱保温調理学習の可能性を探った。

    <結果・考察>
     第2次世界大戦中の余熱保温調理に関して記載している文献(沼畑金四郎著・宮崎玲子著等)があり、それらから「…助炭と称して、やかんを覆う綿入れカバー、鍋の保温におがくずや綿を詰めた保温箱…」等、当時限られたエネルギーを大切に使う様子が掴め、また先行研究・著書(香西みどり著『加熱調理のシミュレーション』)より「…沸騰を続けなくても比較的高い温度が保たれれば、温度に応じた反応速度で調理が進んでいく…」等の情報を得ることができ、授業実践研究に活かすことができた。
     都内の国立大学附属中学校調理室で諸条件の下実施した、温度降下測定実験(2014年5月)では、約1時間保温後は約98℃から約90℃、約2時間保温後は85℃前後、と充分調理に適する温度が得られることがわかり、授業実践に繋げることができた。
     授業では、市販の保温鍋と手作り保温鍋(鍋を新聞紙とフリース布地で包んだもの)の温度降下等の比較実験を実施し、生徒は調理したスープを試食した。「思っていたよりも温度が下がらず、多くの利点があると思った」等、授業後に回収した生徒のワークシートの自由記述から、驚きと楽しく学べた様子や意欲等みとれ、学習の効果が確認できた。
     長期休みに生徒が自主的・発展的に取り組んだ余熱保温調理レポート(2014年度実施 n=11)分析からは、保温方法として「発泡スチロールの箱」や「どてら」を利用する等の様々な創意・工夫が見られ、余熱保温調理のレポート発表後のワークシートでは「100年後も同じ空が見ていられるために」といった標語を記す等、持続可能な社会の構築に向けて、生活を工夫し創造しようとする実践的な態度がみとれ、余熱保温調理の学習の効果が確認できた。
     アンケート調査(2017年3月実施 n=112)では、エネルギーを大切に使う意識は93.8%が高まったと答えている。
     一方実践研究をすすめる中、学校によっては、授業内での保温時間の確保や、食中毒の懸念といった余熱保温調理の学習の課題が明確になった。そこで複数校の教員(n=5)にインタビュー調査をし、実施可能な対応策として、休み時間を利用しての計測、総合的な学習の時間を利用、食中毒の直前学習等様々な方策が上がり、実施するために可能性を検討できた。SDGsに直接的・間接的に繋がる、可能性のある余熱保温調理の学習を、継続研究し、家庭科授業から教育の場全体に提案したい。
  • 花輪 由樹
    セッションID: B2-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    1.研究背景と目的
     学校教育の基準である学習指導要領は、10年に一度改訂される。幼稚園、小学校、中学校については平成29年に、高等学校については平成30年に新たなものが告示された。今回の改訂の主なポイントは、各教科を通じて,①知識及び技能、②思考力、判断力、表現力等、③学びに向かう力、人間性等の「三つの柱」を獲得させることである。また家庭科に関しては、衣食住に関する生活文化や、食育、消費、環境に関する項目を重点化させることが記されている。また平成28年6月より選挙年齢が18歳以上に引き下げられたことから、家庭外の生活に関心を向け、政治や社会に参加できる資質・能力が、これまで以上に求められていることが示されている。
     家庭科は主体的に自分の生活をより良くしていく教科であり、それは地域を含む家庭外も対象となる。これまでも高等学校家庭科においては、自分の住む地域に主体的に関わっていくことが、小中学校の家庭科以上に示されてきた。本研究では、このような住まいへの主体性が、新学習指導要領では、どのように提示されているのか明らかにすることを目的とした。

    2.研究方法
     方法としては、「地域」をキーワードに、現行学習指導要領との比較において、主体的に地域に関わる表記がどのように提示されているのかを探った。なお日本の高等学校の多くが「家庭基礎」の科目を採用していることから、「家庭基礎」に焦点をあて、全領域を対象に検証した。

    3.結果
     まず「地域」について記載されていたのは、「教科目標」「家族」「住生活」「ホームプロジェクト」の箇所であった。
     教科目標においては、「男女が協力して主体的に家庭や地域の生活を創造する」力の育成という記載があり、このように生活創造の場に地域も含まれていることは、現行学習指導要領(以下「現行」)と新学習指導要領(以下「新」)の両者に表記されていた。「新」で新しく追記されたものもあり、それは生活課題を家庭や地域及び社会の中から見出して解決策を考えるといったことや、よりよい社会づくりに向けて地域社会に参画し、「地域の生活を主体的に創造しようとする実践的な態度」を養うといった内容であった。ここでは自分が住む場所に主体性をもって関わっていくことが、かなり明確に表記されるようになったことがうかがえる。
     一方、家族の領域と住生活の領域、ホームプロジェクトの箇所においては、「現行」と「新」で、特に大きな変更は見られなかった。
     まず家族の領域に関しては、青年期において、家庭や地域でのよりよい生活創造のために、「自己の意思決定」と「責任をもった行動」をとることが、「現行」でも「新」でも記載されていた。また保育の分野では、「子どもの生育環境として地域」が重要であることが示されていた。また高齢者の分野では、「高齢者が自立生活をする場としての地域」が示されていた。また福祉の分野では、「共生社会を支える場としての地域とそれを支える一員」であることが記されていた。
     次に住まいの分野に関しては、「居住する家とその周辺社会の安全環境として地域」が示されており、「新」では、快適性や防災の面からも触れられるようになっていた。
     最後にホームプロジェクトでは、「生活上の課題を解決する場としての地域」が、「現行」でも「新」でも記載されていた。
     以上にみてきた「地域」に関する記述は、生活をする場として地域という空間が示されている場合が多かった。しかし、そこに主体的に関わっていくことの記述は、「教科目標」に特にみられ、「家族領域」の青年期の自立や共生社会の分野において少し記載がみられた。今後は、教科書レベルで具体的にどのように提示されているのか探ることが課題である。
  • 荒井 きよみ
    セッションID: B3-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】第5期科学技術基本計画では、人々に豊かさをもたらす超スマート社会の実現を提起し、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化を喫緊の課題にあげ、科学技術イノベーション活動を担う人材を巡る諸問題の解決に向けたシステムの改革を求めている。そのひとつが、女性の活躍促進である。女性研究者数は未だ低い水準にあり、幅広い教育活動を始め、改善へ導く取り組みに期待が寄せられている。本研究では、理系女子高校生のライフデザイン学習に、キャリアパスの明確化やロールモデルがもたらす効果について明らかにすることを目的とした。

    【方法】首都圏のスーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)指定校の1年生364名を対象に2017年度の「家庭基礎」においてライフデザイン学習、そして同年11月にSSHクラスの女子を対象にSSH事業の理系女子交流会を実施した。対象校の1年生はSSHカリキュラムで学ぶ生徒(以下、SSHクラス)が2クラスと学習指導要領で学ぶ生徒(以下、非SSHクラス)が7クラスであった。本研究では、SSHクラス女子25名(以下、SG群)と非SSHクラス女子124名(以下、NG群)を比較した。なお、「家庭基礎」のライフデザイン学習で、100年間の人生設計をワークプリントに試作し、主体的・協同的な学びを通し、高校生のキャリアパスの明確化を図った。SSH事業の理系女子交流会では、理系女子大学生・院生の研究発表を聴き、さらに自らの研究発表に対する助言を直接受け、昼食を共に摂る等、ロールモデルと過ごす時間の提供を行った。分析データは、質問紙調査(2017年5月及び2018年2月実施)、理系女子交流会感想及び質問紙調査(2017年11月実施)、人生設計感想(2018年3月実施)である。
     2017年5月及び2018年2月実施の調査項目は科学技術イノベーションを担う人材に求められる資質・能力について「課題発見力」「課題解決力」「プレゼンテーション力」「英語力」の4項目を6段階のルーブリックで示し、得点化した。さらに「環境問題解決に貢献できる」「経済成長に貢献できる」「地域文化の振興に貢献できる」「社会の安全・安心に貢献できる」「科学的な知識や技術を日常生活で活用できる」の5項目を5件法で示し得点化した。また、研究者志望について「自然科学系研究者になりたい」「社会科学系研究者になりたい」「人文科学系研究者になりたい」の3項目を5件法で示し得点化した。理系女子交流会の調査項目は「ロールモデルを見つけた」「将来就きたい仕事が見えた」など18項目を4件法で示し、得点化した。

    【結果】2017年5月及び2018年2月実施のデータを2要因分散分析(対応あり)で分析したところ、「課題発見力」「プレゼンテーション力」についてはSG群がNG群より有意に高く、両群とも2017年5月より2018年2月が有意に高かった。「課題解決力」「英語力」についてはSG群がNG群より有意に高く、SG群は2017年5月より2018年2月が有意に高く、NG群は2018年2月が有意に低かった。4項目とも交互作用が有意であり、2017年5月にNG群がSG群より高かった。「自然科学研究者になりたい」についてはSG群がNG群より有意に高かったが、両群とも2018年2月が有意に低かった。

    【考察】SG群では科学技術イノベーションを担う人材に求められる資質・能力が育成されていた。また、記述データから以下の2点を導いた。
    ①キャリアパスを意識することで、今すべきことを見出していた。
    ・苦手科目である数学を克服して、将来生物関係の職業に就きたい。
    ・様々な人や文化に触れる機会を増やし、東京オリンピックでボランティアをやる。そして日本から世界を変える仕事を見つける。
    ②ロールモデルからなりたい職業を決定するというよりは、働く意義を考えていた。
    ・人のために頑張ることができる人になりたい
    ・色々なことに挑戦しつつ、何か一つ極めたい
    ・やりがいのある仕事がしたい
  • 鈴木 真由子
    セッションID: B3-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    1.研究目的
     日本では、1990年代から非正規労働者の増加が注目されるようになり、2016年には全労働者の37.5%に達している。中でも、非正規労働者全体の3分の2以上を女性が占めている。女性労働者を年齢階級別にみると、15歳から64歳までのすべての階級で、4割以上が非正規雇用である。これまでにも、非正規雇用は正規雇用と比較して、社会的・経済的に不利な労働条件が問題視されてきた。具体的には、賃金格差、福利厚生制度の適用率の低さ、職業能力育成の機会の少なさなどである。こうした状況の下、2017年3月に発表された「働き方改革実行計画」では、同一労働同一賃金など、処遇格差の是正の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備の方針が具体的に示された。
     その一方で、厚生労働省の『就業形態の多様化に関する総合実態調査』(2014年)によると、自身の雇用形態に不満を感じている非正規労働者は3分の1程度にとどまっており、処遇の格差に労働者自身が問題意識を持っていない状況がうかがえる。このようなギャップを埋めるためには、労働者が働き方に対してどのような意識を持っているかを把握した上で、学校教育におけるキャリアデザイン学習の見直しが必要ではないだろうか。
     そこで本研究では、就職活動を目前に控えた大学生、特に女子大学生が、非正規雇用に対して持っているイメージや、職業選択の際に必要と考えられる基本的事項をどの程度認知しているのか等、”働き方”に関する意識の実態を把握する。その結果をもとに、高等学校までのキャリア教育をより充実させられるような、職業選択に関するキャリアデザインの課題を明らかにすることを目的とする。

    2.研究方法
     ”働き方”に対する女子大学生の意識の実態とそれに対する影響要因を把握するために、自記式質問紙調査(委託法)を実施する。コントロール群として、一部男子大学生も調査対象とした。
      調査時期:2017年 6月~7月
      調査対象:四年制大学生(女子大4校,共学2校)及び短期大学生(女子大4校,共学1校)
      配布と回収:1,020部配布、961部回収(有効回答率:98.9%)
      主な質問項目:将来の働き方の希望、非正規雇用に対するイメージ、労働に関する基本的な事項、
             自己肯定感*、ジェンダー意識*、社会参加意識*

     なお、*印のある質問項目については、「そう思う(4点)」、「どちらかといえばそう思う(3点)」、「どちらかといえばそう思わない(2点)」、「そう思わない(1点)」の4件法で得点化(一部逆転項目を設定)した。

    3.結果および考察
     回答者は、四年制女子大学生68.9%(女子大37.9%、共学31.0%)、短期大学生16.0%(女子大+共学)、四年制男子大学生15.1%(コントロール群:共学)であった。
     非正規雇用に対するイメージは、特に負のイメージほど、将来の働き方の希望に影響を与えることが明らかとなった。労働に関する基本的事項の認知度との関係については、認知度が高いほど、非正規雇用に対して否定的な意識を持ち、自分の将来の働き方の選択肢に入れなくなる傾向があった。さらに、自己肯定感は非正規雇用に対する正のイメージと、社会参加意識は逆に負のイメージとの関連が確認された。また、ジェンダー意識を含め男性との性差は働き方の希望に大きく影響していた。属性別(所属大学別、性別等)に見ると、多くの項目で有意差が確認された。中でも、短期大学生の非正規雇用に対する容認的な意識と、男子大学生の自分とパートナーに対する働き方の希望の偏りが見られたほか、大学で取得する資格と卒業後の職業に関連がない学生は、非正規雇用に対しても楽観的なイメージを持っていることが明らかとなった。
     このことから、労働・雇用に関する基本的知識の獲得に加え、自分が将来どのような働き方をしたいのか、そのためにはどのような資格取得や進学後の学習が必要なのか等、高等学校における職業選択に関わるキャリアデザイン学習が不可欠であると考えられた。
  • 森田 美佐
    セッションID: B3-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、女性が家庭科を学ぶことが、職業生活と家庭生活におけるジェンダー平等の達成と、女性も男性も働きやすく生きやすい社会の形成に、どのような影響を与えるのかを、女性の就業形態や、仕事と家庭に関する意識を通して明らかにすることである。

    先行研究では、家庭科の男女共修化は、学ぶ側の男女平等意識を高めることが示されている。また家庭科を男女で学んだかどうかにかかわらず、女性で家庭科を学んだという認識が高いことは,彼女たちの「将来の計画性」や「生活充実感」を高めるという。ただし女性が家庭科を学んだことと、彼女たちの実際の就業行動や働くことをめぐる意識に明確な関係は確認できていない。

    本研究は、2018年1-2月に、日本の雇用されて働く女性800人を対象に、WEB調査を行った。主な質問項目は、学生時代に将来の職業について学んだり考えたりした経験、学生時代に家庭科を学んだという意識、現在の雇用形態、(パートナーがいる人の場合)現在の家事分担の割合、現在の雇用形態、現在の仕事と家庭に関する考え方等である。

    結果は次の通りである。(1)学生時代に将来の職業について学んだり考えたりした経験と、学生時代に家庭科を学んだという意識を見たところ、両者には弱い正の関連性があった。(2)学生時代に家庭科を学んだという意識と、現在の雇用形態について見たところ、非正規雇用に就いている人よりも、正規雇用に就いている人の方が、家庭科を学んだという意識が高い傾向が確認できた。(3)学生時代に家庭科を学んだという意識と、(パートナーがいる人の場合)現在の家事分担の割合を見たところ、両者には明確な関連性はなかった。(4)学生時代に家庭科を学んだという意識と、現在の仕事と家庭に関する考え方等を見たところ、家庭科を学んだという意識と、家庭をもった時の稼得意欲、配偶者と子育てを共に分かち合いたいという意欲、そして現在の自身の昇進への意欲には、弱い正の関連性があった。しかし家庭科を学んだという意識と、職場では女性が男性を補佐することが向いているという意識には弱い正の関連性があった。また家庭科を学んだという意識と、子育てよりも仕事の方が難しいと考えることや、仕事のために家庭生活が犠牲になることを仕方がないと考えることにも、弱い正の関連性があった。

    女性が学生時代に家庭科を学ぶことは、学生時代に将来の自分の働き方について学んだり考えたりする経験を高める可能性がうかがえる。また、女性が学生時代に家庭科を学ぶことは、男女の賃金格差の是正を含めて働く女性の経済的な安定や、彼女たちの職場への参画意欲を高めることが考えられる。しかし女性が学生時代に家庭科を学んだと考えているからといって、それが家庭生活をパートナーとともに分かち合うという実践には、直接的につながっているとは言えなかった。加えて、学生時代に家庭科を学んだと考えている女性が、仕事と家庭責任を対等な関係の中でとらえているというわけでもなかった。彼女たちの仕事と家庭におけるこのような考えは、家庭生活や家族のケアよりも、有償労働は常に優位・優先だという考えを問い直す社会につながるだろうか。女性はもちろん男性にとっても働きやすく生きやすい社会形成に向けて、家庭科を学ぶことの中で、家庭責任を経済の中でどう考えるのかを扱うことも必要になるのではないだろうか。
  • 横瀬 友紀子, 河村 美穂
    セッションID: B3-4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    研究目的:グローバルな視点を育む取り組みが実践として広がりつつある。家庭科においては日常生活で手にしている物の背景に目を向けさせ、世界とのつながりを気づかせ消費行動を考えさせる実践、生活に関する文化比較などを通じて自国の文化と異文化を理解させるなど様々な実践がみられる。しかし、学習者の変容をとらえるということについては充分にできていないという課題があり、家庭科におけるグローバルな視点を育むということについての研究も途上である。本研究は、スーパーグローバルハイスクール(以下、SGH)に指定された対象校において開発・実践された「グローバルライフ」(家庭基礎代替科目)を研究対象とし、2015年度に実施された授業で学習した生徒へのインタビューを行った。そこで生徒は何をどのように学んでいるかを明らかにし、家庭科の学習を通じてグローバルな視点をもつということの内実について検討することを目的とする。

    研究方法:研究対象とした「グローバルライフ」は対象校のSGHカリキュラムにおいて「日常の生活の中から世界とのつながりに気付き、身近なこととして考えられるように視野を広げる」ための基礎科目として、1年次生の必修科目(学校設定科目)として設置されている。2015年度は、私たちの生活と消費行動全般について世界とのつながりについて考える分野、衣分野、食分野の内容を中心に構成されている。この科目では生徒が自分の生活から世界の現状へと視野を広げ、世界の現状から自分の生活を見つめ直すという往還を重視し題材の選定、配置を行っている。昨年度の発表では、2015年度実施の授業を受講した生徒の学習一年後の振り返り記述をデータとし、四つのカテゴリーを生成し分析した。生徒は授業から一年後、生徒それぞれが自分にとって身近なグローバル課題について興味をよせていたこと、特に生徒自ら調べる、討論するなど主体的な取り組みをした題材についての記述が多く挙がったことを報告した。今回は、学習直後の振り返り記述と学習一年後の振り返り記述を用いて学習後から一年経過した学習者の変化を分析した。その上で変化のあった生徒4名に対して半構造化面接法を用いてインタビューを行った。

    結果と考察:インタビューの対象生徒は、学習直後の振り返り記述、一年後の振り返り記述をもとにグループ分けを行ったなかで、学習直後の振り返り記述においては「日常の生活の中から世界とのつながりに気付き、身近なこととして考えられるように視野を広げる」という段階まで到達していると考えられるグループに属していた。直後の振り返り記述では全体の約半数の生徒が、同じく授業によって視野が広がり自分の生活と世界とがつながっていることを自分の内面に迫って振り返ることができていた。しかし、一年後の振り返り記述においては、自分の生活と世界とがつながっていることについての具体的な記述は減少していた。そこで「世界や社会と自分とのつながり」について、インタビューを通して詳しく知ろうと考えた。生徒の語りからは、グローバル課題に対して各自がそれぞれの向き合い方をし、自分に関わりのあることとしてとらえていることがわかった。これらは記述では十分に表現されなかったものであった。自分への関わり方については様々に語られたが、いずれも自分の言葉で自分の経験から語ることができていた。家庭科の学習を通じてグローバルな視点をもつということは、学習者にとって遠くにあるグローバル課題を自分の身近な問題とつなげることであると考えられる。
  • 佐藤 安沙子, 藤田 智子, 阿部 睦子, 菊地 英明, 桑原 智美, 西岡 里奈, 倉持 清美
    セッションID: B3-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     近年、学校現場における安全・衛生面への配慮が期待されている。中学校家庭科の学習指導要領には、「安全と衛生に留意し、食品や調理用具等の適切な管理ができること。」(文部科学省,2008)とある。田中他(2015)は、大学生の食の衛生管理の実施状況は、下準備・調理時、後片付け時で特に意識が低いことを指摘している。さらに、河村他(2006)によると、生徒にとって調理実習は、楽しい時間であると同時に、調理技能の習得を目指すものであることが明らかとなっている。これらのことから、小・中・高等学校家庭科で衛生管理について学んでいるはずであるが実践されておらず、学校での調理実習においても衛生管理に意識が及ぶことは少ないと考えられる。
     本研究では、小・中・高校生の食の安全における衛生管理に関する意識を調査する。学校種間の衛生意識の相違と、ICTを活用した衛生管理に関する授業と調理実習での実践前後の衛生意識の変化を明らかにする。それを通し、授業での衛生管理の扱い方を検討する。
    【方法】
    (1)調査対象および調査方法
     調査は、東京学芸大学附属小・中・高等学校の児童・生徒を対象に、2017年9~11月に2回行った。1回目は、409名(小5:102名、中2:149名、高2:158名)を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。2回目は、248名(小5:100名、中2:148名)を対象に、食の安全における衛生管理に関する授業実践と調理実習の後、1回目と同様の調査を実施した。なお、高校では2回目の調査は行わなかった。質問紙調査の有効回答率は、全て100%であった。
    (2)質問紙調査内容
     食の安全における衛生管理について、「家庭」と「学校での調理実習時」の2つの状況において気を付けている程度を5件法で質問した。質問項目は、下準備・調理時、食事時、片づけ時などである。
    (3)授業実践の概要(小・中学校)
     ICTを活用した衛生管理に関する授業と調理実習を行った。
    ・小学生:衛生を意識した手の洗い方についての授業を行った。蛍光剤入りローションを手に付け、手洗いの様子を撮影し、手洗い方法や洗い残しについて検討した。調理実習は青菜をゆでた。
    ・中学生:バナナケーキの調理を通して、衛生を意識した食材の扱い方と手洗いについて、授業を行った。バナナの皮を触った後、触れた箇所をシールと映像で記録し、食材の菌の繁殖や手洗いの重要性について検討した。調理実習は煮込みハンバーグである。
    【結果】
     衛生管理に関する授業前の学校種間の意識について比較をした。その結果、家庭においてはほとんどの項目において、「大変気を付けている」と回答した者の割合が、小・中・高の順に高かった。学校においては、小・高・中の順に高かった。これは、小学生は保護者や教員からの衛生管理への意識付けが高いことが考えられる。また、生肉の取り扱いに関しては、家庭・学校ともに中学生よりも高校生の方が気を付けている者が多かった。中学生はまだ学校で生肉を扱った経験がなかったことが影響していると考えられる。
     次に、授業前後の意識について比較をした。中学校では、ほぼ全ての項目で気を付けている割合が高まった。特に、手洗いに関する項目は大幅に増加していた。これは授業で重きをおいた、食材に触れた後の手洗いに関する学びの効果であることが考えられる。一方小学生では、意識変化があまり見られなかった。小学生は、衛生管理に関する授業前から意識が高かったことに加え、衛生に関する授業において食材を扱っておらず、具体的な調理場面における衛生意識との関連付けが難しかったことが考えられる。
     なお、本研究は東京学芸大学平成29年度教育実践研究推進経費「特別開発研究プロジェクト」の研究成果の一部である。
  • 桑原 智美, 藤田 智子, 阿部 睦子, 菊地 英明, 佐藤 安沙子, 西岡 里奈, 倉持 清美
    セッションID: B3-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【研究の目的】

    平成29年3月告示の中学校学習指導要領家庭分野において「食品や調理用具等の安全と衛生に留意した管理について理解し、適切にできること。」「材料に適した加熱調理の仕方について理解し、基礎的な日常食の調理が適切にできること。」を知識及び技能として身に付けること、とある。家庭科の授業において日常生活の衛生意識関連事項として、食材の扱いおよび調理時の衛生を取り上げることは自ら考える生活に繋がると考える。

    現行の指導要領において中学生になり、使用可能となる食材の一つに生肉があり、調理品の幅も広がっていく。生徒からの期待の高い食材である。肉を使用する前に食中毒の予防のために安全で衛生的な扱い方を工夫できるようにする授業を行うことは、自ら考えながら調理実習を行う上で大切である。2016年度にはシールとアプリケーションソフト(loiloノート)を用いて、バナナケーキ作りで調理器具や調理台をどれだけの頻度で触るかを生徒自ら確認、録画を行う授業を開発した。食材であるバナナの皮を触った38名が手を洗わないまま触った箇所は0~15箇所、平均6.9箇所で、のべ回数は0~68回、平均は22.2回であった。今回は、実際に肉を使用する調理実習場面において衛生関連の授業の効果がみられるかを検討する。どの様な意識を持ち、どの様に肉を用いた調理実習に取り組もうとしているかを授業場面および授業後の実習ワークシートから検証し、衛生関連の授業効果を検討する。

    【研究の方法】

    (1)調査対象と実施時期 国立大学附属中学校、第2学年157名対象。

    1.2017年9月衛生授業2時間実施。

    2.2017年10月煮込みハンバーグ調理実習2時間実施。

    (2)授業実践概要 1.衛生授業(バナナケーキ授業)流れ

    ・バナナケーキ調理実習 ・各班(4名班)、触った箇所を写真上にシールを貼る。・バナナの皮を触って、手を洗うまでをloiloノートアプリを用いi-padで動画撮影。・班員全員で映像を観て手を洗うまでの時間とシール合計枚数を記録。

    ・調理について「自分の考え」をワークシート記録。班で話し合う。「班の人の考え、つけたし」をワークシート記録。・衛生の視点から同様に記録、反省点をloiloノートで記入、30秒で音声入力。・次回の肉料理で気を付ける点を班でloiloノート記入、30秒音声入力。

    2.肉調理実習授業の流れ 

    ・調理実習 ・調理後、衛生の視点から気を付けたことをワークシートに記録。

    (3)その他 ・対象とした肉調理後のワークシート有効数は141枚。

    ・分析方法はテキストマイニング(KHCoder)を使用。

    【結果と考察】

    テキストマイニングにより前処理を行い、単語を抽出したところ、肉調理後のワークシートにおいて、「洗う」(237回)「肉」(ひき肉・生肉を含む:201回)「手」(187回)の単語が多く使用されていた。また、15回以上出現している語を対象にして階層的クラスター分析を実施したところ、いくつかのまとまりが抽出できた。そのうちの一つには、「触る」「洗う」「肉」「手」のまとまりである。これらの語は、例えば、次のように記述されていた。

    ・肉には雑菌が付着しているので触れたらすぐに手を洗うように心がけた。

    ・生肉をこねた手を他の所に触らないようにし、食材を触った手は基本的に洗うようにした。

    ・肉を触った時だけじゃなく、こまめに手を洗っていた。

     これらの結果から、事前の衛生授業で学んだことを活かして、調理実習場面でも手を洗うことの必要性を理解し実行している生徒の様子がうかがえた。

     本研究は東京学芸大学平成28、29年度教育実践研究推進経費「特別開発研究プロジェクト」の研究成果の一部である。
  • 若月 温美
    セッションID: B3-7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【研究の背景と目的】教師は自らの専門的力量を高めるために不断の学習が必要とされ、授業に関する力量を高めるためには日々の授業実践から学ぶ必要がある。高校家庭科の教師は一校に1人であることが多く、自分の授業について一人で振り返ることになるが、独り善がりにならずに他者の視点から授業をとらえ直すことで授業をより高い質へと改善することが可能となると考える。高校家庭科の調理実習で教師は事前に調理や献立のねらいの学習指導を行い、限られた時間の中で実習を安全に実施しなければならない。その時間に生徒が学んだことを確認することが難しく、事後指導で十分な振り返りをしなければならないが、「やりっぱなし」になっているのではないかという不安が残る。高校家庭科の調理実習の授業の課題を発見するための方法として授業リフレクション研究の効果について検討する。

    【研究方法】対象の授業は2017年6月に筆者が高校2年生に行った調理実習の授業である。「麻婆豆腐とごはん」の献立を中華料理用の調味料と材料を使って作り、レトルトの素で作ったものと食べ比べ違いに気づくことを目的とした。この授業をビデオ録画した記録と生徒の実習後の記述をもとに自己リフレクションを行い一人称で記述した。自己リフレクションは「自己分析シート」(家庭科の授業を創る会2007 をもとに作成)に記入して行った。録画された授業記録と自己リフレクションの記述をもとに8月に集団リフレクション(千葉県の高校家庭科教師19名)を行い、ICレコーダーで録音した発話のスクリプトを分析した。

    【結果と考察】自己リフレクションの内容は次のとおりである。事前指導では、示範により実際に作るところを見せ、その後班ごとに役割分担を決めさせた。材料と道具は事前にできる準備を行った。これらの準備は「やり過ぎか」と思ったが、実習がスムーズに進むために必要であるため時間をかけて行った。実習中の教師の発話は①作業内容と片付けの指示 ②生徒のふざけ、失敗への注意 ③生徒からの質問への返答 に分類した。①の最も多かった発話は「片付けの指示」であった。②は悪ふざけや致命的な失敗に対してははっきりと注意をし解決策を伝えた。③は説明したことでもその都度答える、またはレシピを見るように指示した。実習を安全にできるだけ失敗なく、時間内に終えることにこだわって授業を進めており、実習中に学ぶことを意識させていなかったことがわかった。事後指導では①作り方②作業③試食についてそれぞれ振り返り記述をさせた。①は調理のねらいについて意識して作業した様子を伺うことができた。②に時間内に終わらせるという目標も達成できていたが、作業手順について十分理解できていなかったことがわかった。③は食べ比べの目的を十分理解させていなかったことがわかった。集団リフレクションでは「事前準備が徹底しており『失敗しないこと』に主眼を置いている授業」との感想や「失敗からも学べるので失敗しても良いことを生徒には知らせている」など日頃の授業の在り方について意見が交わされた。この他者の視点は授業者が意識していなかった視点であり、実習中に生徒に学ばせたいことを問い直し、事前準備から考え直す必要性を示している。

    実施した授業についての自己リフレクションにより①実習中の指示、②授業の目的を理解させること、に課題があることに気づいた。さらに授業でこだわっていたことを明らかにすることができ、その後の集団リフレクションよりこの「こだわり」ついて自分が意識できなかった課題を明らかにすることができた。以上より、授業リフレクションの効果が明らかとなった。これらの課題を解決しより質の高い調理実習の授業を実践するために、さらに対話リフレクションを行い解決方法研究し、教材研究とリデザイン、実験授業の実施とさらなる分析と考察を実施することを課題とする。
  • 根本 亜矢子
    セッションID: P01
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】家庭科は実際の生活をよりよいものに変えていけるよう知識や技能を習得し、日常の中で実践できる力を身につける教科である。学習指導要領における家庭科の目標は、小学校では「家族の一員として生活をよりよくしようとする実践的な態度」、中学校では「生活をよりよくしようとする能力と態度」、高等学校では「主体的に家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度」を育むことが掲げられている。生活者が毎日の食生活に関心をもち健康によい食習慣を身に付けること、自分の身体に見合ったエネルギーおよび栄養素を摂取することや栄養バランスのとれた献立を立て調理ができることが必要である。そこで本研究では、大学生を対象に食意識と献立作成力の実態を把握し、今後の課題を明らかにすることを目的に行った。

    【方法】教員養成大学の学生で「食物学」の授業を履修した1~3年生30名(男性12名、女性18名)を対象とした。

    1)食意識調査 2017年4月、望ましい食生活が実践できるよう作成された「食生活指針」に基づいて29項目の質問を設定し、自記式質問紙法によるアンケート調査を実施した。回答は「はい」「いいえ」の2件法で評定してもらい、男女別の比較を行った。2群間の比率の比較はχ2検定を用い、有意水準は5%未満とした。

    2)1日分の献立作成 2017年6月、献立作成に必要な内容を学んだ後に調査を実施した。栄養バランスがとれた献立が作成できるように、献立構成は、主食・主菜・副菜・汁を揃えることを基本とした。料理の組み合わせ、食品の出現回数について料理内容の評価を行った。

    【結果および考察】

    1)食意識調査 29項目の設問に対し、「はい」と回答した割合が多かったものは、「食事を楽しんでいる」81.5%、「穀類を毎食とっている」85.2%、「食文化を大切にしようと思う」88.9%、「賞味期限や消費期限を考えて食材を利用している」92.6%であった。反対に、「いいえ」と回答した割合が多かった設問は、「外食の時は、栄養バランスを考えて選んでいる」77.8%、「果物を毎日とっている」81.5%、「食生活を点検する習慣をもっている」74.1%であった。男女別にみると、「普段から体を動かすことを意識している」の項目で「はい」と回答した者は、男性10名(90.9%)、女性7名(43.8%)であり、有意な差がみられた(p<0.05)。また「健康な食生活を心がけている」の項目で「はい」と回答した者は男性7名(63.6%)、女性15名(93.8%)、「食事作りに参加している」では、男性6名(54.5%)、女性14名(87.5%)であり、男女間に意識の違いがみられた。

    2)1日分の献立作成 主食の種類別の出現回数をみると、朝食では、ごはん12回(42.9%)、パン16回(57.1%)であった。ごはん献立の組み合わせは、全て主食、主菜、汁物が揃っていた。パン献立の組み合わせは様々であり、ごはん献立に比べて、副菜、牛乳・乳製品、果物の出現割合が高かった。昼食の主食がめん類である献立は、およそ3割を占めており、主食と主菜を兼ねた料理が多く見られた。副菜の調理形態は野菜を「生のまま、サラダ」料理の出現回数が多かった。以上のことから、大学生が食生活を改善するためには、まず日々の生活を振り返り点検する習慣を身につけることが必要であることがわかった。栄養バランスを考えた献立を作成する力を高めるためには、食品の栄養特性や料理の組み合わせについての理解を深められるよう、料理のレパートリーや調理する機会を増やす必要があることがわかった。
  • 角間 陽子
    セッションID: P02
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    【目的】
     平成29年3月に公示された小学校家庭科及び中学校家庭分野の学習指導要領では,「A家族・家庭生活」,「B衣食住の生活」,「C消費生活・環境」の3つに内容が再構成され,生活経営学に関わる学習の重要性がこれまで以上に高まっている。中間(2002)は生活の営みを「生活価値と生活資源を各生活領域にインプットし,意思決定過程を経て,価値の実現,資源変換がアウトプットされるというプロセスといえる」と説明している。生活の知識や技能は,生活課題の解決策を構想したり,それを実践したりするための生活資源であるといえよう。しかし小学校家庭科及び中学校家庭分野において,生活課題の解決に対する生活資源の有用性についての学習はほとんどなされていない。高等学校家庭科の「家庭総合」では,生活設計の内容に生活資源の学習項目が明記されているものの,他の内容で学ぶ知識や技能もまた,生活を営み,生活課題を解決するための生活資源なのである。小学校家庭科及び中学校家庭分野においても,どのような生活資源を有しているか,それらを活用できているかによって,生活のあり方や生活の質に多大な影響が及ぼされることへの理解を深め,生活の知識や技能を学ぶ意義を捉え直していく必要があろう。本研究は次期学習指導要領において中学校家庭分野の3つの内容すべてに位置づけられ,小学校家庭科でもAの内容に新設された「生活の課題と実践」を主軸とした家庭科教育の学習指導について追究することを終極的な目的としている。そのための一段階として,自己の生活資源を再認識し,それらを活用して他者や地域・社会の生活ニーズ・生活課題に取り組む主体的・協働的な学びの有効性を検討した。

    【方法】
     国立大学法人F大学における3年次生を対象とした開講科目「生活経営学」では,生活資源に対する理解を深める複数のアクティビティ(個人または3~4名のグループによるもの)を組み込んだ授業を実施している。グループワークの1回目は生活資源と生活ニーズのマッチング,2回目は生活資源を社会的に活用した企画の立案である。本研究の実施にあたって2017年度は,1回目にマッチングの結果を整理するワークシート,1回目と2回目の終了時にリフレクションシートを課し,受講生25名の記述内容を分析した。

    【結果】
    (1)生活資源と生活ニーズのマッチングは回答者全員が興味をもって取り組むことができており,「自分の生活資源を認識するために」,「自分の生活ニーズに気付くために」有効であったと評価した。また,生活資源を認識することは生活の質の向上につながると回答者全員が実感できていた。さらに,いま充実させたいと思う生活資源を質問したところ,第1位が「時間」,第2位が「情報」,第3位が「人的生活資源」という結果であった。
    (2)生活資源を社会的に活用した企画の立案は全員が興味をもって取り組むことができ,生活資源を認識することが生活の質の向上につながると実感できていた。一方,「自分の生活資源を認識するために」,「自分の生活ニーズに気付くために」有効であったとは「思わなかった」とそれぞれ2名,1名が回答しており,「他者の生活や地域・社会のニーズに気付くために」有効であったと「思わなかった」受講生が1名いた。企画の立案に際して「自分の生活資源を活用することができた」と「思わなかった」回答の受講生が3名,他者の生活や地域・社会の課題を解決するために自分が充実させたいと思う生活資源の第1位と第2位に挙げられたのは「人間関係資源」,第3位は「経済的生活資源」であった。

    【文献】中間美砂子.(2002).Ⅰ章 生活をみつめる.内藤道子ほか共著.生活を創るライフスキル―生活経営論―(pp.5-19).東京:建帛社

    本研究は,福島大学学内競争的研究資金(17RK001)の助成を受けた。
  • 福井 ともこ, 速水 多佳子, 福井 典代
    セッションID: P03
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     社会の急速な発展に伴い,文部科学省は教育の情報化を進めており,「教育の情報化に関する手引」や「教育の情報化ビジョン」等でICTの活用について言及している。家庭科の被服製作の効果的な指導を行うために高橋らは動画教材を製作し,動画教材導入の効果について検証している。その動画では,まつり縫いのみ右利き,左利き両方の縫い方が説明されていた。本研究ではインターネットによる基礎縫い動画の実態を把握し,右利き用・左利き用両方の動画を作成した。また,作成した動画の理解度を調査するとともに,大学生を対象として基礎縫い技能の実技調査を行い,教材の有用性を検証した。
    【方法】
    (1) 動画を作成するにあたり,インターネット(msn japan,YouTube)による基礎縫い動画の掲載内容に関する実態調査を行った。
    (2)基礎縫いに関する動画(玉結び,玉どめ)を作成し,大学生98名に視聴させ,動画への理解度についてアンケート調査を行った(2017年6月)。
    (3)(2)のアンケート結果を踏まえて動画を改善し,再度大学生125名を対象に動画への理解度についてアンケート調査を行った(2017年10月)。同時に,玉結び・玉どめについて実技調査を行った。その際動画を視聴しながら玉結び・玉どめを作製させた。実技調査は,各自にフエルト(10cm×10cm),縫い針,手縫い糸,糸切りばさみ,針さしを配布し,玉結び・玉どめのできばえ評価(3段階)を行った。動画を視聴しなかった状態で実技調査を行った(2016年10月大学生150名)結果と比較検討した。
    【結果】
    (1)基礎縫いに関する動画はmsn japanが7件,YouTubeが12209件投稿されていた。しかし,左利き用の基礎縫い動画が非常に少なかった。右利きの人・左利きの人両方が理解しやすい内容にするため,右利き・左利き両方の説明を行う動画を作成することにした。
    (2)縫製の基礎となる玉結び,玉どめの方法について右利き用・左利き用両方の動画を作成した(玉結び約10秒,玉どめ約30秒)。大学生を対象に基礎縫いに関する動画の理解度について調査を行ったところ,66.0%の人は「理解できた」と回答した。改善点として「動画の下に説明文をつけること」,「動画のスピードを遅くすること」,「指先をもっと見えるようにすること」が挙げられていた。
    (3)(2)の改善点を踏まえ,玉結び,玉どめ,なみ縫いについて右利き用・左利き用両方の動画を作成した。大学生を対象にこの動画への理解度について調査を行ったところ,91.2%の人は「理解できた」と回答し,その理由として「映像だけでなく,文字があったから」,「右利き用・左利き用両方の説明があったから」といった内容が挙げられていた。改善点を記入した人は3名であり,その内容は「動画のスピードをもっと遅くすること」,「動画の下の説明文をわかりやすい言葉にすること」であった。
     基礎縫いに関する動画の視聴の有無による実技調査の評価結果について,平均の差の検定を行った。玉結びについては危険率1%においてt=4.19となり,動画を視聴しなかった場合より視聴した場合の方が評価が高い。玉どめについては危険率1%においてt=3.15となり,動画を視聴しなかった場合より視聴した場合の方が評価が高い。つまり,基礎縫いに関する動画を視聴することで,正しい玉結びや玉どめを作製することができるようになった大学生が増加した。

    【参考文献】
    高橋美登梨,西村綾世,川端博子(2016)針と糸を使った製作学習におけるICT活用の提案,日本家庭科教育学会誌,59(3),135-143
  • 佐藤 園, 篠原 陽子
    セッションID: P04
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    1.問題の所在と研究の目的

     今日,学校教育では,教師の「実践的指導力」が求められている。しかし,現在の教員養成では,各教科の目標に合わせて授業を計画・実施・評価する一連の授業構想・展開力等が等閑視され,教育実践を核に据えた「教科教育と教科専門を架橋する研究領域」の確立が課題となっている。この課題に対し、岡山大学教育学部では,A「実践的な能力の育成を目指すコア・カリキュラムの実施」とB「教科及び教職に関する科目を有機的に結びつけた体系的な教育課程」の実現による実践的指導力を有する教員養成を目的として掲げた。

     Aに関しては,平成18年度に「実地教育」を核としたコア・カリキュラムを構築した。この中で、小学校教員養成では「在り方懇」の指摘を踏まえ、小学校における教科専門に必要となる教科の専門的な内容のみを取り扱うこととされた。具体的には、「小学校学習指導要領に規定されている教科の指導・学習内容を概観し、構造的に整理するとともに、その教科内容を指導する際に必要な知識や理論、技術や実験などの技能の基礎基本について指導する」科目として、教科内容研究の再編が求められた。

     Bに関しては,平成23年度から,教科内容構成の主課題を「子どもの発達段階や学習状況に応じて,教科の内容を構成し,授業を行うプロセスを総合的に教える授業内容及び方法を開発すること」とし,それを長期と短期の2つのプロセスで捉え,コア・カリキュラム全体で学べるよう授業科目を連携・統合する取組を行っている。

     この中で,家政教育講座においても,教科教育・教科内容・教育実習の関連を図る家庭科カリキュラムの構築を試み、平成22年度から実施してきた。本報告では,その中で、教科教育と教科内容の統合を目指して授業内容を構築・実施している「初等家庭科授業研究」と「初等家庭科内容研究」の平成26・27・28年度の実施結果から、「教科内容構成力」の育成について検討したい。

    2.研究の方法

     (1)毎授業終了時に学生が記述するシャトルカードの記述内容,(2)独自に作成した「教科内容構成力に関するアンケート」の分析による量的・質的研究方法を用いた。(2)は「長期の教科内容構成プロセスの前提となる力10項目」「教科内容構成の力9項目」「新しい授業を作る意欲」「教職志望の程度」に対して5件法で回答させる構成となっている。調査は,授業研究と内容研究の合計30回の終了時に行い、その場で回収した。

    3.授業の概要

     初等家庭科授業研究と内容研究は、小学校教育コース2年次生を対象に、教科教育の教員による授業研究と、教科教育・教科内容の教員がTT体制で指導する内容研究により、長期の教科内容構成力を育成するように計画している。授業研究では、家庭科の目的と内容・授業構成理論を講義し、内容研究では、小学校家庭科の現行学習指導要領と教科書を学生が分析し、その問題の解決を教科内容学と教科教育学から探求していく内容となっている。

     4.受講生に行った「教科内容構成の力」に関するアンケート調査の結果

     受講生に行ったアンケート調査の結果、平成26~28年度共に「長期の教科内容構成プロセスの前提となる力」に関しては、10項目共に「伸びた」と評価していた。しかし、「教科内容構成の力9項目」の評価に関しては、平成26・27年度と平成28年度では差がみられ、それは、学生の「教職志望の程度」に起因していると考えられた。調査の詳細な分析結果等は、当日、報告したい。
  • 田澤 紫野, 小松 恵美子
    セッションID: P05
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
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    【目的】中学校家庭科の衣生活学習では、ミシンを使用した授業を必ず行わなければならない。生徒はすでに小学校家庭科でミシンを学習しているが、その後家庭でミシンを使用する機会はほとんどなく、大半は使用方法を忘れている様子が見受けられる。また、あらかじめミシンの下糸や上糸の準備ができた状態であれば縫うことができるが、自分でミシンを出して準備するところまでが難しく、苦手意識を抱いている生徒が多い。そのため、ミシンを使用していく中で、生徒自身が使用しているミシンの特徴を捉え、上手く縫えない場合の対処法をつかむ必要があると考える。加えて、授業中に生徒がミシンの不調を感じても、人数が多ければ教師がその場だけでミシンの管理をしきれないという現状がある。以上のことから、ミシンの不調や上手く縫えなかった原因および対処法などを生徒自身で記録し、後で教師が確認できるようにすることが必要であると考える。
     そこで、ミシンの状態および問題発生時の対処方法などを、生徒自身が記録し管理する「ミシンのカルテ」を作成し、教材として取り入れることが有効ではないかと考えた。本研究は、生徒自身による毎時のカルテの記入が、生徒のミシン縫い技能の定着に与える効果について、検証を行うことを目的とする。
    【方法】O町立O中学校第2学年22名を対象とし、単元「布を用いた物の製作」において、「ミシンのカルテ」を取り入れた授業開発を行った。「ミシンのカルテ」とは、生徒がミシンを使用した際に、使用年月日・担当者・上糸調子・縫い目の長さ・問題点およびその対処などを記入する用紙である。カルテの活用実践は、生徒が毎時間カルテに自分でミシンの状況を記入して授業終了時に提出し、教師はカルテを確認して次の授業のはじめに生徒に返却する、という方法で行った。
    【結果】単元「布を用いた物の製作」(全11時間)は、第1次~第3次に分けて授業を行った。第1次「ミシンで縫えるようになろう(3時間)」は、本単元の導入であり、ミシン実習上の注意や基礎知識、下糸や上糸の準備の仕方など、ミシンの基本的な技能について学習し、白い布に書かれた線通りに直線や曲線を縫う練習を行った。第2次「リバーシブルランチバッグを作ろう(7時間)」では、教師が提示した作り方の手順を参照し、グループで積極的に助言し合い協力しながら製作を行った。最後に、第3次「実技テスト(1時間)」では、ミシンの準備から線に沿って縫うところまでを自分の力でできるかテストを行った。
     本単元の中で生徒は、授業の最初に割り当てられた一人一台の専用ミシンを使用し続け、毎時間「ミシンのカルテ」に書かれている管理項目を記入して提出した。教師はそれを授業後に確認し、気になる記入があった場合には生徒への聞き取りや、教師がミシンの点検を行った。毎時間「ミシンのカルテ」を記入することで、生徒自身が使用しているミシンの特徴を捉え、上手く縫えない場合に自分なりに対処している姿が、生徒の記録から読み取れた。このことから本単元において「ミシンのカルテ」を活用し、生徒自身でミシンを管理することが、生徒のミシン管理能力および問題が起こったときの対処方法など、ミシン縫い技能の定着に与える効果があるとわかった。また、授業中に生徒がミシンの不調を感じても、教師がついて見ることができない場合、生徒自身でその状況を記録し、後で教師が確認することができたため時間の短縮につながった。さらに、生徒が自分専用ミシンとして責任をもって使用するという意識も、もたせることができた。
  • 日景 弥生, 志村 結美, 青木 香保里
    セッションID: P06
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/08
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに                                        
     教員には、普通免許状教員(以下、免許保有教員)、臨時免許状教員と免許外教科担任制度による教員(以下、免許外教員)がある。中学校家庭科担当者は少子化に伴う小規模校の増加、少ない授業時数などを背景に免許外教員が増加している。また、免許外教員は、様々な課題(例えば「知識や技能に自信がない」「家庭科教育の意義や重要性を伝えられない」)を抱えているといわれている。そこで、本研究では都道府県における中学校家庭科担当教員、特に免許外教員に対する研修の実態等を把握することを目的とした。
    2.方法
    2.1.アンケート調査
    ①対象及び時期:47都道府県教育委員会を対象とし、平成29年8月~10月に実施した。②内容及び方法:「免許保有教員及び免許外教員の人数」「教員研修全体に係る内容」「免許外教員の実態及び研修に係る内容」「特筆すべき実態や研修等」などについて、自記式質問紙法により郵送配布・回収にて実施した。
    2.2.ホームページ調査
    ①対象及び時期:アンケート調査で「免許外教員向け研修を実施している」と回答した7県を対象に、平成29年12月~翌年1月に実施した。②内容及び方法:各県教育センターHPから「研修名」「対象者」「ねらい」「内容」などを調査した。
    3.結果および考察
    3.1.アンケート調査
     47都道府県中23府県から回答(回答率は48.9%)が得られた。①免許保有教員及び免許外教員の人数、教員研修全体に係る内容(研修数・開設時間等):府県により大きく異なった。②免許外教員への研修等の実施の有無:「実施している」9県、「特にしていない」8県,「無回答」6県だった。③免許外教員の参加状況:「多くの方が参加している」4県、「あまり参加していない」4県、「ほとんど参加していない」1県,「無回答」14県だった。④研修等の形態:「免許外教員のみを対象とする研修を実施」6県,「免許保有教員と同じ研修を受講」2県、「両者を併せて実施」1県、「無回答」14県だった。⑤研修等の内容:「家庭科の知識・技能に関すること」(7県)、「学習指導要領に関すること」(5県)が多かった。⑥免許外教員の指導力:8項目のうち「生徒の実態を踏まえた授業を行っている」は「とても/ある程度そう思う」7県、「家庭科の授業の進め方に自信がある」「自信を持って生徒を評価している」の2項目は「全く/あまりそう思わない」9県、「家庭科の知識や技能が身に付いている」は「あまりそう思わない」8県となり、免許外教員の指導力の評価等は低い結果となった。
    3.2ホームページ調査
     免許外教員研修を実施している7県のうち、HP記載の程度から、4県(D、E、F、R)を対象とし、調査した。
    ①研修の日程:D県、E県、F県は5月に2日~3日間、R県は10月に1日の日程で開催されていた。②対象者:D県は免許保有教員も受講可能であり、E県・F県は前回の受講から時間が経過した教員も対象としていた。③目的:4県とも教科の知識・技能習得及び指導力の向上が目的だった。④内容:4県とも実技研修があった。E県、F県は内容別、E県、F県、R県は評価について、R県は授業改善の具体策について講義・協議を行っていた。⑤対象教科:4県とも技術と家庭の研修があり、5教科以外が多かったが、F県は全教科の研修を実施していた。
     以上のことから、免許外教員の実態は府県により差異があること、免許外教員の指導力は総じて低いこと、免許外教員研修を実施している県は少ないことが明らかとなった。
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