日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第54回大会・2011例会
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口頭発表
経済的側面から考える社会的自立
~高等学校家庭科の授業ディスコース分析~
*齊藤 遥子望月 一枝
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p. 106

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抄録

1、問題の所在
 新学習指導要領において生徒が自立して生活する能力を育むことが重視されている。しかし高校生が日常行う経済活動は小遣いをやりくりする程度であり、自分の家庭の経済活動はほとんど知らないのが現状である。また、高校卒業後の生活を進学や就職というように漠然とは考えているが、経済的な側面はほとんど意識することがない。これからのリスク社会において経済的な不利益や損失を回避し、主体的に生活設計をするための基礎として、自分の生活と経済のつながりを認識し、社会的自立を考えさせる必要がある。

2、研究の目的
 本研究の目的は、高校生を対象にした生活設計の授業ディスコースを分析し、教師の言語活動の特徴と生徒の学習過程を考察する。

3、研究方法
1)アクション・リサーチ法
 秋田県内の公立高校1年生「家庭基礎」の授業全11回(605分)を参加観察した。期間は2010年10月18日~11月29日。
 事前に授業者と筆者らが議論し、グループごとに調査・発表させる授業をデザインした。なお、大学院生の経済生活を紹介するために、筆者(齊藤)が授業に一部参加した。

2)分析方法
 全授業をICレコーダーとビデオカメラ、フィールドノーツで記録した。ディスコース分析は以下の手順で行った。
①記録した授業の発話をすべて文字におこす。
②発話者別に発話数を数え発話内容をカテゴリー化する。教師の発話に関しては、望月(2009)を参考に「教師の権力」「教師の方略」「教師の知識」の三つを主な括りとして12項目にカテゴリー化する。
③カテゴリー化した発話内容を分析し、各授業における教師の手立てや生徒の学習過程を考察する。

4、授業の概要
 高校生に5年後の生活をシミュレーションさせ、経済生活について具体的に考えさせる。貨幣の機能(1時間)、家計の収入や支出(2時間)、家計管理(2時間)、大学院生の経済生活の紹介(1時間)、家計シミュレーション(調査2時間・発表3時間)。将来経済的に自立した生活を送るためにはどのような知識が必要であるかについて学ぶ。

5、結果及び考察
 授業は知識中心の講義形式、グループ学習、ロールプレイ、シミュレーションのテーマ決め、調べ学習、ゲストによる授業、発表と相互評価という流れであった。
 ディスコース分析した結果、教師は「質問」をして個人の生活経験を出させてから、生活に結び付けた経済の「知識の説明」をする特徴が見られた。グループ活動では、「活動の指示」やグループへの「質問」をしてこれまでの学習経験を思い出させていた。発表では、内容をまとめる=「レトリック(問題の整理)」が多く見られた。最後に、発表内容に結び付けて経済の「メタ知識」を使っていた。
 このような学習過程において、生徒達は具体的なイメージを持って経済的な自立について調査し発表することができた。多くの生徒が他グループの発表からも学び、自分の生活と社会のつながりを視野に入れ経済的自立について考えていた。
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© 2011 日本家庭科教育学会
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