抄録
家庭科における家族の授業の動向;家族の授業の分析から1はじめに家族の内容は、平成元年(1989年)学習指導要領で、「家庭生活」領域が設定され、30年ぶりに家族の内容が家庭科の内容として復活した。平成10年(1999年)の改定では、「家族と家庭生活」と名称が変更された。平成20年(2009年)の改定では、「家族・家庭と子どもの成長」と名称が変更されて、A領域となった。このように家庭科の中で重視されてきている家族の内容について、今、なぜ家族の内容が、重視されることになったのか、どのような家族の授業が必要かを検討する必要がある。本論では、これまでの家庭科教育においてどのような家族の授業が実施されているかを分析し、指導要領で重視されることになった家族の授業の方向性を探る。2先行研究牧野(2012)は、本来家庭科が扱う領域は、家族・保育が中心にあって、自分自身の生命をつなぐために、食べる、着る、住まうことを学ぶのであってこれ全体が家庭科教育であるとし、家庭科の学びの中心は家族・保育であると述べている。しかし、片田江(2010)は、高等学校家庭科の教員への調査を実施し、家族の授業が難しい理由として、「とりあえずお知らせみたいな感じで」「私だって私の人生しか知らないから」「気を使い過ぎて・ちょっと怖い」と思いながら教えているという3つのエッセンスをあきらかにした。片田江は、教員は、さまざまな家庭環境に配慮し、誰ひとり傷つく者を出してはならないという恐怖心抱いており、学校現場で家族の授業を扱うことの難しさを指摘している。3研究対象と研究方法 研究対象は、20冊の出版物(1986年~2013年の27年間)である。学術論文、紀要論文、雑誌は対象としない。研究対象は、基本的に実践者が授業実践の内容、生徒の活動を具体的に記述している実践とした。4結果【家族の授業内容】家族の授業の内容を11に分類された。①家族とは何か・家族の形態(14編)、②生命誕生・自分の成長(10編)、③住居および地域(9編)、④子育て(9編)、⑤高齢者・死(9編)、⑥家事労働・生活時間(7編)、⑦法律・歴史(6編)、⑧コミュニケーション(5編)、⑨食(2編)、⑩消費(2編)、⑪虐待(2編)。さらに、11の分類は、大きくつぎの3つに分類することができる。A:家族を学ぶ・・・家族そのものを学びの対象とする。(家族のはたらき・さまざまな家族・家族の歴史・世界の家族)B:人間の成長から家族を学ぶ・・・・保育に関連させ、人の一生の学びとして家族を学ぶ。(生命誕生・子育て・虐待・高齢者)C:衣食住、経済、環境などから家族を学ぶ・・・・家庭科の他の領域で家族を学ぶ。(サザエさんの家の設計図・食事の風景・コンビニの変遷・遊び場の調査から要望書づくり)【家族の授業方法】家族の授業の方法は、討議・デイベート(19編)、感想(13編)インタビュー(9編)、ロールプレイング(7編)、データの読み取り(7編)などが行われていた。家族の授業の特徴は、多様な授業方法が採用されていることである。5終わりに 家族そのものを学ぶ授業づくりとともに、食や住や環境の領域においても、家族の学びを実施することが重要である。家庭科は、これまで社会の変化に応じて、社会の要請に応える教科であった側面がある。家庭科における家族の内容の重視は、家庭科に少子高齢化に対応することが求められているのかもしれない。しかし、家庭科の学びは、社会の要請に応えるものではなく、子どもの生活から初めて、子どもの生活にかえるものである。家族の学びを家庭科としてどう展開していくのか実践の積み重ねと授業研究が求められる。