日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第58回大会・2015例会
セッションID: P12
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第58回大会:ポスター発表
小中高生を対象とした児童福祉施設における「縫い物・編み物講座」の試み
家庭科の地域貢献
*井元 りえ亀井 佑子浅井 直美西原 直枝滝山 桂子
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抄録

【研究目的】   本研究は、小中高生を対象とした児童福祉施設における「縫い物・編み物講座」の実践から考察を行うものである。この実践のきっかけは、「生活やものづくりの学びネットワーク」の東京実行委員会が家庭科で扱うものづくりの魅力を一般の方々に伝える活動をしたいと考え、著者が在勤の江戸川区の社会教育担当者に問い合わせを行ったことに始まる。その結果、小中高生を対象とした児童福祉施設の指導者から「最近の子どもたちは手先を動かす機会が少なく生活力が低いと思われるので、是非ものづくり講座を開いてほしい」という要望があり、講座を実施することとなった。   そこで、本研究は、その実践事例の分析を通して、小中高の子どもを対象とした地域におけるものづくり講座の内容や意義を考察し、家庭科としての地域貢献の在り方を探り、また教材の内容や対象者に応じた教授法などについて学校家庭科への示唆を得ることを目的とする。 【研究方法】  ものづくり講座の実施にあたっては、「生活やものづくりの学びネットワーク」の東京実行委員会が内容について企画し、ネットワークのメーリングリストで講師を募った。そして実行委員と会員ボランティアが講師となった。場所は、2ヶ所の児童福祉施設(小学生の健全育成の施設と中高生対象の児童福祉施設)で、実施回数は4回(2014年夏と冬に2回ずつ)であった。夏には、マスコットホルダー(小学生対象)とティッシュボックスサイズのポケットティッシュ入れ(中高生対象)を、冬には小学生対象と中高生対象の両方において編み物(鎖編み、あや取りひも、リンゴのエコたわし等)を教材とした。なお講座の当日には、午前中に講師向けの講習会を行い、技術の習得と指導方法の確認を行い、午後に講座を開催した。  本研究では、講座後に実施した受講者および講師への質問紙調査を基に、ものづくりに対する受講者の反応や感想、および講師の意見や感想について分析・考察を行った。 【結果及び考察】主な結果と考察は以下の通りである。 1.  「作品が上手にできましたか?」という問いに対して、「とても上手にできた」と答えた受講者が33%、「上手にできた」が60%であった。「あまり上手ではなかった」は7%であった。講師対受講者の比率が1対1に近く、懇切丁寧な指導ができたことも、子どもたちの満足度が高かった一因であろう。 2.  小学生の受講生については、延べ人数で1年生1名、2年生5名、3年生11名、4年生5名、5年生6名であった。低学年や中学年における家庭科の実施可能性について示唆を得た。 3.  「むずかしかったところ」について受講者の回答は次の通りである。中高生を対象としたポケットティッシュ入れでは、10名が、返し縫い、ボタン付け、ゴムの縫い付け、まつり縫いなどを挙げた。編み物講座では、小学生は、編み始め、毛糸を通す時に丸が小さくなってしまった、などを10名が挙げ、また中高生は、たち上がり、糸の押さえ、手の使い方などを8名が挙げた。現在の家庭科の中には編み物は含まれておらず、講師の中にも編み物経験の浅い人もいたが、午前中に行った講習において、技術の習得や授業実践の交流ができたことが有意義であったとの意見が得られた。 4.  「家庭科は好きですか?」という質問に対して、「はい」と答えたのは15名、「いいえ」と答えたのは2名であった。 5.  講師となったのは、様々な校種の家庭科教員およびネットワークに所属する手芸家などの専門家であったため、それぞれの教材開発、指導法などを生かし、講座を運営できた。 謝辞:「生活やものづくりの学びネットワーク」の東京実行委員会の皆様には多大なご協力を頂き、御礼申し上げます。

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