日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: B1-3
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第60回大会:口頭発表
魚食文化の継承・創造に向けた授業デザイン
調理師養成施設における授業実践から
中川 寛大, *堀内 かおる
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抄録
【目的】 2013年,「和食;日本人の伝統的な食文化」が,ユネスコ無形文化遺産に登録された.これは日本人が継承・創造してきた食文化が世界に認められた証だといえる.一方,ユネスコ条約の本来の意図は,危機に瀕している文化を保護することとされており,日本から伝統的な食文化が消えつつあるという状況が認められたともいえる.これからも食文化を継承・創造していくためには,今まで受け継がれてきた食文化の価値を認識し,その継承・創造について学習することが必要だと考える.そこで本研究では,研究の端緒として,調理師養成施設在学生を対象に,食文化の継承・創造に向けた授業デザインの1事例として,魚食文化を題材とした授業実践を行い,学習者の学びの状況を分析し,魚食文化の継承・創造に向けた授業デザインについて考察することを目的とする.
【方法】 魚食文化の継承・創造に向けて,「魚食文化の価値の認識」,「魚食文化の捉え方の模索」,「魚食文化の継承・創造への考察」の3つの段階を踏む,全6時間の授業をデザインした.2016年6月にX調理師養成施設1年生51名の学生を対象に授業実践を行った.分析対象とした学生は,6時間の授業すべてに出席し,ワークシートを提出した37名で,分析資料は,ワークシートとする.分析方法は,先述の3つの段階別に,ワークシートの記述をもとにして質的・量的に分析を行い,学生の学びの状況について考察した.
【結果と考察】 第1段階の「魚食文化の価値の認識」の第1次①「魚食の歴史」では,日本の魚食の歴史について学習した.分析結果から,日本の魚食の歴史を振り返り,日本人が魚食に価値を見出してきたことを理解できたと推察された.
 第2段階の「魚食文化の捉え方の模索」の第2次「魚食文化とファストフィッシュ」では,鯵の塩焼きとファストフィッシュ選定商品の鯵の焼き魚の調理実習を行い,ファストフィッシュは魚食文化の継承・発展につながるかについて考えた.分析結果から,「つながる」と考えた学生と「つながらない」と考えた学生とでは,魚食文化の捉え方が異なることが明らかになった.「つながる」と考えた学生は,魚食文化とは魚介類を「食べる」という行為のみだと捉えていた.一方,「つながらない」と考えた学生は,魚食文化には調理する過程も含まれると捉えている傾向があった.
 第3段階の「魚食文化の継承・創造への考察」の第3次①「子どもたちに伝えたい魚料理」では,未来の子どもたちに伝えたい魚食文化の継承・発展につながる魚料理を考えた.分析結果から,料理を考案した意図を,<継承>,<創造>,<普及>の大分類に分類することができ,全意図の数に占める大分類に関する意図の割合は,<普及>,<継承>,<創造>の順に高かった.<普及>の割合が高かった理由として,魚食文化の継承・創造のためには,魚料理を普及していくことが大切であると考えているためだと推察した.次いで,<継承>の割合が高かった理由として,魚料理や魚の調理法をそのままの形で継承していきたいと考えているためだと考えられた.一方,<創造>の割合が低かった理由として,新しい料理の創造は,非常に困難なためであると推察された.
 第3段階の「魚食文化の継承・創造への考察」の第3次②「これからの魚食文化」では,「魚食文化を残していきたい」か,「魚食文化はなくなってもよい」か考え,これからの魚食文化について考えたことを記述した.分析結果から,「魚食文化を残していきたい」と考えた学生は,本授業デザインを通して,魚食文化の価値を認識し,魚食文化の継承への思いが深まったことがうかがえた.そして,魚食文化の継承・創造に向けての方策を考え,主体的に取り組もうという姿勢を醸成することができたと考えられた.
 今後の課題は,高等学校家庭科でも本授業デザインを実践し,高校生の学びの状況について検証することである.
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© 2017 日本家庭科教育学会
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