抄録
研究目的:世界の情勢と私たちの日常生活が繋がり、家庭科においてもグローバルな視点を育む教育が必要とされている。日本にいながら地球規模の課題や世界とのつながりを生徒にとらえさせるためには、生活を題材とし身近なことから考えさせる家庭科では実感させやすいことが期待できる。本研究は、スーパーグローバルハイスクール(以下SGH)に指定された高等学校で学校設定科目として設置された「グローバルライフ」(家庭科関連科目)を対象として、グローバルな視点を育むための家庭科のカリキュラムに対して、その後に生徒がどのように振り返り考えたのかを振り返り記述から分析し、グローバルな視点を育むためのカリキュラムについて検討することを目的とする。
教育現場において、グローバル教育の実践は個別の実践として行われてきてはいるものの、教育課程において明確な位置づけを与えられていないことが多い(石森2013)。家庭科においては世界とのつながりを考える実践やグローバルな課題に取り組む実践があるものの、グローバル教育の実践として把握されていないのが現状である(石森2013)。特に本研究で対象とするグローバルライフのような科目は、年間を通したカリキュラムの開発など家庭科教育として検討すべき課題が多くある。またこのように家庭科関連科目においてグローバルな視点をどのように育むかを検討することは、これからの家庭科教育のカリキュラム開発にとっても有用となるであろう。
研究方法: 研究対象とした「グローバルライフ」の2015年度のカリキュラムは、(1)グローバルな課題から世界に視野を広げ、(2)衣生活と食生活の学習を通じて自分の生活と世界とのつながりを理解し、(3)自分自身の生活を見つめ直すという流れで構成した。具体的には、(1)水・パーム油を題材に、私たちの生活とつながりが深いが気づきにくいグローバル課題について知る。(2)衣生活分野では、私服を持参し相互インタビューから着装、素材、原産国を確認し、高校生にとって身近なファストファッションをテーマにディベートを行い、ファストファッションのもたらす光と影について考察する。食生活分野では、インドネシアからの留学生との交流を通じて日本の食文化を考えるきっかけとし、日本の主食、米についての文化的な側面と、米の生産上の課題、日本における食品ロスを世界の食糧問題と対比させながら考察する。(3)世界中の植生研究をしている研究者によるモンゴルの沙漠化と日本の衣生活とのつながりについての講演、ホセ・ムヒカ大統領のスピーチ、エクアドルの先住民の昔話などをふまえて、1年間の取り組みについてふりかえる。という内容とした。
本研究で対象としたこれらの授業について、学習から1年後に印象に残ったテーマについて、①どの部分が印象に残ったか、②なぜそれが印象に残ったのかについて生徒が書いた振り返り記述をデータとした。生徒は自分の生活と世界とのつながりについて、何をどのように学んだのか、どのような題材が生徒の心に響き、学びを深めたのかを考察した。
結果と考察:生徒の記述から印象に残った理由について(1)ビジュアルな教材を用いる、実習・実験などの体験的な学びや調べて討論するなどの授業方法が印象に残ったとする記述、(2)「内容が衝撃的だった」「ものごとの裏側を知った」「自分に関係があるとわかった」などそれまで知らなかったことを知って印象に残ったという記述の2つに分けられた。実習などの身体的な学びや、調べる、討論するなどの能動的、主体的な取り組みは印象に残りやすいと考えられる。一方、日常的に見過ごしていることや生活と関連がありながら全く知らないままでいた部分を知るということは生徒にとって衝撃として印象に残り、学習内容が深く刻み込まれることになったと考えられる。
参考文献:石森広美(2013).グローバル教育の授業設計とアセスメント.学事出版