日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第60回大会/2017年例会
セッションID: 2-4
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2017年例会
高等学校家庭科教員の教育内容・指導に関する認識・実態
2002年調査との比較から
近藤 清華
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抄録

【目的】
 本研究は、現在教育現場において求められている家庭科教育の必要不可欠な教育内容や知識・技術を把握することにより、大学における家庭科教員養成カリキュラム構築のための基礎的知見を得ることを目的としている。
 本研究者は、約10年前、現職高等学校家庭科教員を対象に、家庭科を指導する際に必要とされる能力等について調査しその結果を日本家庭科学会誌に報告した。(「大学における家庭科教員養成カリキュラムの現状と課題(第1報)-高等学校家庭科教員の教科内容・指導に関する認識・実態-」日本家庭科教育学会誌第47巻第1号、2004年4月)この度、約10年の歳月を経て、社会の変化に対応した現在および将来必要とされる家庭科教員の能力を改めて整理した上で、大学における新たな家庭科教員養成カリキュラムへの課題の抽出を試みた。
【方法】
調査対象:高等学校家庭科教員
調査機関:2014年2月~5月、2015年9月~2016年5月
調査方法:高等学校家庭科を指導するために必要な「知識・技術」「考え方」「姿勢・態度」の各内容について郵送法によるアンケート調査
【結果】
「知識・技術」において、高等学校家庭科教員が指導する際に得意であると考えている分野は、「食生活」に関する内容であり、また、得意ではないと考えている分野は「住生活」に関する内容であった。この結果は、2002年の調査と同様の結果であったが、「衣生活」に関する内容は、肯定的回答の割合が減少し、「消費生活と資源、環境」に関する内容は肯定的回答の割合が増えた。
各内容の質問項目をみると、2002年の調査と有意な差が見られたのは「着装に関する知識」、「安全に考慮した衣生活に関する知識」で、今回の結果は肯定的回答が半数を超え、肯定的回答と否定的回答が逆転した。また、「現在の消費生活の特徴に関する知識」においては、2002年の調査に比べ、肯定的回答が減少した結果となった。
「知識・技術」において、得意であるとした教員が身につけた機関としては、大学における専門科目がほとんどであった。「高齢者の生活と福祉」に関する内容のみ「独学」で知識・技術を習得した割合が最も多かったが、その他の内容に関しては4割から6割が大学の専門科目で知識・技術を習得していることが分かった。これは2002年の調査と異なる結果となった。2002年の調査では、大学の専門科目での習得が5割を超えていたのは、「食生活」に関する内容と「衣生活」に関する内容のみであり、その他の内容は1割から4割程度にとどまっており、「子どもの発達と保育・福祉」、「高齢者の生活と福祉」等、独学の回答が半数近くを占める内容もあった。
出身学部における比較では、教員養成系学部出身の教員と家政系学部出身の教員では、教員養成系学部出身の教員が家政系学部出身の教員よりも得意であるとした内容は、意思決定に関する内容、人間関係に関する内容、権利や福祉に関する内容であった。2002年の調査では、衣生活の製作に関する内容は、家政系学部出身の教員が得意であるという結果であったが、今回の調査ではこの傾向は見られなかった。
 年齢による比較において有意な差が認められたのは、「子どもの発達と保育福祉」に関する内容のみであり、概ね、年齢が高いほど得意であるとしていることが分かった。2002年の調査と比べると、年齢による差が少なくなった結果となった。
 教員経験年数に関しては、約10年の経験が家庭科教員の自信につながっていることが分かった。

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