日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: A1-1
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男子高校生が子育てに対するイメージを深めるための授業実践
*山崎 真澄池﨑 喜美惠
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抄録

[目的]
「親になることについての経験や学習」を学校の授業で学んだと回答した男性は1.8%(NWEC2005年調査)であり、多くの場合は特に何もしないと回答した男性は52.5%と多い傾向にある1)。学習指導要領には「乳幼児との触れ合いや交流などの実践的な活動を取り入れるよう努めること。」とあるが、全寮制の高校であり、平日の外出が管理上で難しいという学校の特性上、保育体験学習を実施することが困難であるため、保育分野の授業では視聴覚教材を用い、乳幼児の様子を授業に取り入れている。子どもと接することが好きな人が「子どもを育てたい」と思うだろうが、父親となった際、子育てをするとしたらどのようなことをしたいか。と問うたところ、「一緒に遊ぶ」と回答した生徒が多くいた。周囲の子育てをしている父親も、初めは子育てに参加したいが育児の方法が分からなかったりする人も多くいる。そこで、本研究では男子高校生が子育てに対しどのように考えているのか調査し、保育の授業で親の役割と子育てについて認識を深めさせるための有用的な授業方法の検討を行う。
[方法]
 調査時期は2018年1月K高等学校生徒233名に対し、子どもに対する意識や子育ての印象について5件法で回答させた。また、子どもの頃、一緒に遊んでいた人については4件法で尋ねた。さらに、自由記述により子育てをするとしたら、どのようなことをしたいかについて調査した。アンケート実施後、「ママたちが非常事態シリーズ2(NHK)」を視聴し、子育てに対する感想を記入させた。分析方法は統計ソフトSPSSを使用し、単純集計やクロス集計等を行った。
[結果及び考察]
1 子どもが好きな生徒は、子どもが「かわいい」96.6%、「柔らかい」89.8%、「嬉しい」66%、「美しい」22.3%、「あたたかい」86.4%と回答し、子どもが嫌いな生徒との間に有意差が認められた。
2 子どもが嫌いな生徒は、子どもが「面倒くさい」80%、「汚い」64%、「邪魔」40%と回答し、子どもが好きな生徒との間に有意差が認められた。
3 子どもが好きな生徒は、「成長を見るのが楽しい」94.7%、「触れ合いが楽しい」93.2%、「家族の絆が深まる」89.8%、「生活に張りがある」75.7%と回答し、子どもが嫌いな生徒との間に有意差が認められた。
4 子どもを好き嫌いに関わらず、多くの生徒は育児の関わり方として「一緒に遊ぶ」を挙げている生徒が多く見られた。その中でも、小さな子どもと接する機会のある生徒は育児の関わり方としては「ごっこ遊び」「おむつ替え」「寝かしつけ」等具体的なことを記入していた。
 DVDを視聴し、子どもが好きと回答した生徒が育児に関して感じたこととしては「育児=楽しい、幸せではないと感じた。しかし、育児をすることによって得られるものも多くあるということを知った。」や「子育ては大変だが、夫婦で考えることで家庭内の絆がより深まる。父親になったらおんぶ等積極的に子育てに参加したい。」という具体的で好意的なことを感想で述べていた。
 子どもが好きと回答した生徒が約90%と高い割合であるため、子どもに対し好意的な意識の生徒が多く、保育分野の授業を実施しやすいという特性がある。保育分野の授業に高校生が子どもと直接接しなくても、子育ての大変な面を見せたとしても、その内容の解決方法が具体的に用いられているような内容のDVDを用いることにより、生徒の子育てに対する考えを深め、好意的なのイメージを持ち、積極的に子育てに関わろうとする姿勢をみることができる。この育児に対する姿勢を今回の授業を体験した生徒が5年後、10年後に実践したという感想を聞けるとより授業の効果が見えてくると思う。
1)牧野カツコ編 国際比較にみる世界の家族と子育て ミネルヴァ書房 2010 P130

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