抄録
目的
近年,ライフスタイルの多様化から中食の利用が増加し,加工食品は調理済み食品としてとらえられる傾向が見受けられる。中学校家庭科の加工食品に関する授業実践では調理済み食品に焦点が当てられることが多く,加工食品の意義に関する指導方法は十分に検討されていない。平成29年3月公示の新学習指導要領では,生活の営みに係る見方・考え方として,生活文化の継承・創造が取り上げられた。食品を加工する技術には豊かな食生活に向けた先人の知恵が込められており,加工食品の意義を理解することは生活文化のとらえ直しにつながる。また,学習指導要領の改訂にあたり,主体的で対話的で深い学びの実現を目指した授業改善が求められている。そこで本研究は,主体的に対話を通して学びを深める指導法として,協調学習の手法を取り入れた加工食品の意義を理解する授業を開発することを目的とする。
方法
加工食品の意義を理解することをねらいに,「加工食品の特徴を知ろう」を題材にした授業をデザインした。協調学習として知識構成型ジグソー法を用いた。導入では「加工食品にはどんな目的があるだろう」という問いを提示した。エキスパート活動では冷凍食品,酢漬け・砂糖漬け・塩漬け,発酵食品,缶詰・レトルト食品,乾燥させた食品の5つのグループに分け,関連する食材の写真資料を配布して,問いに対する解を探究させた。ジグソー活動では配布資料を用いて話し合い,クロストークでは各班で導き出した解について発表させた。その後,配布資料をもとに加工食品の意義についてワークシートにまとめさせた。授業は2017年に実践し,調査対象はS市立中学校1学年34人(男子18人,女子16人)である。本授業の効果を検討するために,授業直後に意識調査を実施し,4件法で回答を得た。また,授業実施の1ヶ月前(授業前)と授業直後(授業後),授業半年後(以下,半年後と示す)に,「加工食品にはどのような目的があるか」の問いについて自由記述で解答を得た。また,授業後と半年後の間に,加工食品の意義の理解を問う穴埋め式のテストを実施した。分析対象者は32人(有効回答率94.1%)で,意識調査のデータは統計的処理を行い,記述データは内容をカテゴリーに分類して比較検討した。
結果
意識調査では,全10項目の評価平均が3.09以上であった。本授業は総合的に肯定的評価を得たことがわかった。最も評価平均が高かった項目は「②「加工食品にはどんな目的があるだろう」の課題はわかりやすかった。」で,評価平均は3.56であった。また,「⑥最初の班活動では,班の友達と一緒に資料の内容を理解しようとした(3.44)」,「⑦最初の班活動で班の友達の考えを聞くことは,資料の理解に役立った。(3.44)」,「⑧2回目の班活動では,自分の言葉で意見を述べることができた。(3.38)」の順に,高い評価を得た。配布資料をグループで協力して読み取るエキスパート活動が,資料内容の理解に役立っていた。加工食品の意義の理解について,「調理の手間を省く」は,授業前に約8割の生徒が解答していた。本調査対象者においても,加工食品として調理済み食品がイメージされていることが示唆された。「保存性を高める」と解答した生徒は,授業前が6人(18.8%),授業後が26人(81.3%)で,授業後に有意に増加した。しかし,テストで本設問を正答できたのは14人(43.8%)であった。半年後の解答者は21人(65.6%)で,その内訳をみると,授業前に同解答をした生徒は4人,半年後に初めて解答した生徒は2人であった。したがって,残りの15人(46.9%)については,本授業で獲得した知識が定着していたことが推察された。また,授業後の解答を分析した結果,エキスパート活動の影響と考えられる解答が24人(75.0%)に,ジグソー活動またはクロストークの影響と考えられる解答が10人(31.3%)にみられた。ジグソー活動に比べて,エキスパート活動の影響と考えられる解答が有意に多かった。