日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: A1-3
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幼児触れ合い体験実施における必要事項の検討
中学校家庭科教員に対する質問紙調査から
*松岡 晃代倉持 清美
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抄録

【目的】
 中学生が幼児と関わることについては、現行学習指導要領からすべての生徒に履修することとされ、新学習指導要領でも、「幼児とのよりよい関わり方について考え、工夫すること」と引き続き示されている。また、同学習指導要領解説書には、直接的な体験を通して関わり方について考え、関わり方を検討できるようにすることが示され、直接的な体験が推進されている。また、2017年1月には内閣府、文部科学省、厚生労働省の3者連名で、各都道府県・政令指定都市教育委員会、児童福祉主管課、少子化対策主管課等宛てに、「乳幼児触れ合い体験の推進について」事務連絡も発出され、関係部局で連携を図りながら、積極的な直接的体験の実施を求めている。少子化対策とも関連を図りながら教育・福祉の両面から触れ合い体験を推進していこうという国の施策としての方向性を感じる。
一方、実際に授業を実施する中学校家庭科教員は直接的な体験の実施についてどのように捉えているのかについては、学習指導要領上触れ合い体験がすべての生徒が履修することとされてなかった時代に伊藤(2007)が、現行学習指導要領移行措置期間に新垣ら(2010)が検討している。両研究からは、直接的な体験実施における課題が示され、実施の困難性が明らかになっている。そこで、本研究では、その課題解決につなげるため、現場教員が直接的な体験実施のために何を必要と考えているのか明らかにすることを目的とする。その際、現行学習指導要領実施から5年以上経過し、現場での実践も積み重ねられた今、直接的な体験実施に向けて教育委員会の支援を受けている地域の教員と、そうでない地域の教員の意識の比較も可能と考え実施する。支援有無により、教員が必要と考える支援に違いがあるのかについても検討していきたい。
【研究方法】

 本研究では質問紙調査より、直接的な体験実施のために中学校家庭科教員が必要と考える事項を調査し、推進方策を探った。方法は郵送調査法(2市)と集合調査法(4市)で実施した。(調査時期2017年1月~8月)調査紙は、触れ合い体験実施について教育委員会からの支援を受けている群(3市:209名)と、そうでない群3市:215名)に配布し、回収率は合計50.9%(216名)であった。うち、欠損値のない有効回答率は合計45.3%(192名)であった。質問項目は、「勤務校での勤務形態」「平成28年度の直接的な体験実施有無」ならびに「実施形態」、「直接的な体験を実施可能とするため、もしくは実施継続していくために必要と考える事項」について4件法で回答を求めた。また、直接的な体験実施のために必要な支援や、実施する際に役立った支援について自由記述形式で回答を求めた。

【結果及び考察】

アンケート調査の結果、「平成28年度の直接的な体験の実施」については直接的な体験を実施した教員は全体の68.8%だった。4件法で回答を求めた直接的な体験を実施するために必要と考える事項については、教育委員会の支援有無に関わらず、共に、保育施設の存在や理解ならびに職場の同僚の理解・協力が上位にあがっていた。また教員が必要と考える事項について、支援有無による差があるかを明らかにするためにt検定を行った。結果、支援を受けていない教員では、触れ合い体験を実施する学習集団規模の必要感が上回っていた。直接的な体験実施のために必要な支援や、実施する際に役立った支援についての自由記述では、4件法の結果と同様に保育施設の理解や協力、地域保護者との関係について多くの記述が見られた
 本調査から、支援のない教員は、学習集団規模の段階で立ち止まり、次への一歩を踏み出せない状況が伺えるものの、支援有無にかかわらず直接的な体験実施のために必要と考える事項は、就学前施設や学校内での理解・協力が得られるような環境を整備することであるということを明らかにすることができた。

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