日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: B3-6
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調理実習における衛生に関する授業の効果
*桑原 智美藤田 智子阿部 睦子菊地 英明佐藤 安沙子西岡 里奈倉持 清美
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抄録

【研究の目的】

平成29年3月告示の中学校学習指導要領家庭分野において「食品や調理用具等の安全と衛生に留意した管理について理解し、適切にできること。」「材料に適した加熱調理の仕方について理解し、基礎的な日常食の調理が適切にできること。」を知識及び技能として身に付けること、とある。家庭科の授業において日常生活の衛生意識関連事項として、食材の扱いおよび調理時の衛生を取り上げることは自ら考える生活に繋がると考える。

現行の指導要領において中学生になり、使用可能となる食材の一つに生肉があり、調理品の幅も広がっていく。生徒からの期待の高い食材である。肉を使用する前に食中毒の予防のために安全で衛生的な扱い方を工夫できるようにする授業を行うことは、自ら考えながら調理実習を行う上で大切である。2016年度にはシールとアプリケーションソフト(loiloノート)を用いて、バナナケーキ作りで調理器具や調理台をどれだけの頻度で触るかを生徒自ら確認、録画を行う授業を開発した。食材であるバナナの皮を触った38名が手を洗わないまま触った箇所は0~15箇所、平均6.9箇所で、のべ回数は0~68回、平均は22.2回であった。今回は、実際に肉を使用する調理実習場面において衛生関連の授業の効果がみられるかを検討する。どの様な意識を持ち、どの様に肉を用いた調理実習に取り組もうとしているかを授業場面および授業後の実習ワークシートから検証し、衛生関連の授業効果を検討する。

【研究の方法】

(1)調査対象と実施時期 国立大学附属中学校、第2学年157名対象。

1.2017年9月衛生授業2時間実施。

2.2017年10月煮込みハンバーグ調理実習2時間実施。

(2)授業実践概要 1.衛生授業(バナナケーキ授業)流れ

・バナナケーキ調理実習 ・各班(4名班)、触った箇所を写真上にシールを貼る。・バナナの皮を触って、手を洗うまでをloiloノートアプリを用いi-padで動画撮影。・班員全員で映像を観て手を洗うまでの時間とシール合計枚数を記録。

・調理について「自分の考え」をワークシート記録。班で話し合う。「班の人の考え、つけたし」をワークシート記録。・衛生の視点から同様に記録、反省点をloiloノートで記入、30秒で音声入力。・次回の肉料理で気を付ける点を班でloiloノート記入、30秒音声入力。

2.肉調理実習授業の流れ 

・調理実習 ・調理後、衛生の視点から気を付けたことをワークシートに記録。

(3)その他 ・対象とした肉調理後のワークシート有効数は141枚。

・分析方法はテキストマイニング(KHCoder)を使用。

【結果と考察】

テキストマイニングにより前処理を行い、単語を抽出したところ、肉調理後のワークシートにおいて、「洗う」(237回)「肉」(ひき肉・生肉を含む:201回)「手」(187回)の単語が多く使用されていた。また、15回以上出現している語を対象にして階層的クラスター分析を実施したところ、いくつかのまとまりが抽出できた。そのうちの一つには、「触る」「洗う」「肉」「手」のまとまりである。これらの語は、例えば、次のように記述されていた。

・肉には雑菌が付着しているので触れたらすぐに手を洗うように心がけた。

・生肉をこねた手を他の所に触らないようにし、食材を触った手は基本的に洗うようにした。

・肉を触った時だけじゃなく、こまめに手を洗っていた。

 これらの結果から、事前の衛生授業で学んだことを活かして、調理実習場面でも手を洗うことの必要性を理解し実行している生徒の様子がうかがえた。

 本研究は東京学芸大学平成28、29年度教育実践研究推進経費「特別開発研究プロジェクト」の研究成果の一部である。

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