家政学雑誌
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小麦粉の調理に関する研究 (第2報)
手動操作によるドウのファリノグラム及びエキステンソグラム
松元 文子松本 ヱミ子高野 敬子
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1960 年 11 巻 5 号 p. 348-352

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抄録

1, 手ごねドウとミキシングドウを、ファリノグラム及びエキステンソグラムで比較すると、本質的な根違は別として、電力ごねの力は大きく、手で“よくこねた”場合(200回)においても、その力ははるかに小さく、また、手ごねの場合は、一応均質化されたかに見えるドウについても相当に違いのあることがわかった。
ミキサー使用の場合でも、ファリノグラフにおいては、その回転速度によって、著しく製品の質に相違をもたらすといわれているから、電力ごねと手ごねの間の混捏操作に著しい達いのあることを思えば、その相違が更に大きくなることも止むを得ないものと考えられる。1図における抵抗値の変化はミキシング間のドウの性質を示すものであることはいうまでもないから、手ごねにおいては、その出発点(ミキシングタイム0点)における抵抗値が手ごね結果を表わすものとしての意味が大きい。
即ち、手ごね0のドウは、対照の30秒ぐらいのドウに相応じ、従って、その後のミキシングによって大いに上昇を示すこと、対照に準ずる。手ごね150、200回のドウ(両者の出発点は一致している)は、その出発点がすでに対照の最高抵抗値に近く、従って、その後のミキシングによる上昇は殆んど示さない。
その他のこね回数をみると、大体、20、40は出発点がこね回数0に近く、60、100は200回に近いところから、こね回数60回くらいで一応ドウの均質性を得られるもののように考えられる。手で “ざっとこねる” とは、手ごね60回以前の、まだ均質化されないドウの場合であろう。
こね回数と0点における抵抗値の順位に狂いがあるのは、一定基準を保ったとはいえ、手ごねの操作上の違いと本機の再現性の弱さによるものと思われる。
又、手ごねに対応するミキシング時間は、ファリノグラムとエキステンソグラムの問では、必ずしも一致しない。これは両者が何れもドウの性格を表わすものであるとはいえ、前者は混捏中のドウの抵抗値を示すものであり、後者はドウの伸張抵抗(いわゆる腰)と伸張度(いわゆる足)を示すもので、それぞれドウのちがう面を表わすものであるからであろう。
2.ドウの“ねかし”を軟化による扱い易さの点から、エキステンソグラムでみると、一応まとまる程度にこねたドウでもねかしにより、充分軟化することができ、“こね”と“ねかし”の本質的な相違はあるとしても、ねかしはこね回数を節約することができ、30分までが最も効果的であった。しかし、ねかしにより、一旦軟化したドウは再びこねることで硬化し扱いにくくなるから、ねかし後の成形には注意を要する。
実用の場合、ねかし時間の長いもの、成形後に放置するものなどのねかしの効果はドウの本質的な質向上や、製品の組織への影響をねらったものと思われる。

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