抄録
一般家庭と共稼ぎ家庭の家事労働時間を第2報に引つづいて検討した結果、次の結論を得たが、調査対象が若年層にかたよっていたり、分類によっては極めて少数となったため、所期の目的をじゅうぶんに果すことはできなかったと思われるので、今後、尚研究を重ねたいと思っている。
1. こどもの人数による影響は、こども1人のほうが育児時間も家事労働時間も長く、第1子に対する両親の関心の深さを示すものであろう。
2. 家族員数による影響は少なく、2人家族が家事労働が少ないが、これは第2報のこどものない家庭の1部、同居家族のない場合で当然である。
3. 家事手伝い人の有無による影響は、手伝い人のあることが、戦前のように妻を家事労働から解放する結果となっていない。
4. 夫の年齢による影響は、調査対象が若年層に片よっていたため、あまりはっきりとは表われない。
5. 妻の年齢による影響も同様にして、20歳代と30歳代の比較に止まり、30歳代の妻の家事労働が多い結果となっている。
結局第2報・第3報を通じて
6. 最も家事労働時間を伸縮させたものは、予想される通り職業労働であり、次に、こども特に乳幼児のいることである。
7. 何れの場合にも、家事労働への影響は妻に大きく表われ、夫は第1子のある時に育児時間の増加となって表われている。
8. 夫の家事労働は大部分が育児である。
9. 共稼ぎ家庭の妻は少ない家事労働時間を育児に重点をおいた生活をし、その場合、埼玉県の共稼ぎ家庭より東京都のほうが育児に重点をおいている。これは第1報の要約4を裏づけるものである。
10. 体養率をみると、妻は一般家庭の1~2の例を除けば、殆どその夫より低く、埼玉県の共稼ぎ家庭の妻が特に低いことから、家事労働の能率化は妻にとって、特に共稼ぎ家庭にとって重大かつ緊急事である。