抄録
総所要時間の上からみると、A・A'とB・C・D・E・F・B'・C'・D'・E'・F'との問には著しい差があり、A・A'は他の1/3以下に短縮されている。又部位別所要時間についても同じ傾向を示している。このように作業時間に及ぼす要因としては、作業方法が最も大きなファクターと考えられた。
作業時間要素別割合は、作業者条件、設備条件、作業方法が一定であればデザインが異っても同じような傾向を示すのではないかと考えられた。又個々の作業要素についてみると、いずれも「手縫」が大きな割合を占める。B・C・D・E・Fに於て「待針」が大きな割合を占めているのは私達の被服工作の一つの特徴かと思われる。又、一般に縫製作業の主要々素の一つだと考えられている「ミシン」は時間的にはかなり小さな割合しか占めていないということは注目すべきことである。
作業要素の発生回数についてA・A'とその他の間に大きな差が見られるのは、主に作業方法の違いによるものと考えられた。又、作業要素別にみると、「下手間」の発生回数がいずれも多いが、これは「下手間」が殆んどの作業要素に必然的に付随する作業であることから生じた二結果である。又、一般的に言えることは、発生回数は仕事の単純さ、複雑さとは大きな関連があるということである。
以上、三点から考察したが、婦人スーツ縫製作業には
a. B・C・D・E・Fで代表される作業形態
b. Aで代表される作業形態
c. もっと高度に機械化された作業形態
が存在すると考えられる。いかに機械化されるとは言えa.のような形態は婦人スーツに関する限り当分残るであろうと思う。又、今日盛んに言われている“縫製作業のシンクロ化”も薬品、食品のように材料を入れれば、人間の手を借りずに、機械的に包装されて出てくるという完全なる機械化を意味するのではない。すなわちbからcへ、cからそれ以上の形態に、段々移行するにしても、手作業と機械作業とは共存していくであろうと考えられる。しかしa、b、cいずれにしても、除々に「手」が「機械」におきかえられていくのは事実であり、私達の研究結果で大きな比率を占めた「手縫」「下手間」とかいったものが除々に減少していく傾向にあることは考えられる。私達は被服工作を数量的に分析し、その現状と傾向をみたが、この研究結果が、今後の被服工作を考える一つの資料になれば幸いである。