家政学雑誌
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糠味噌床成分の熟成に伴う消長に関する研究
槇 光章佐藤 幸夫
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1968 年 19 巻 2 号 p. 99-102

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抄録

糠床の熟成に伴う成分の変化について調査した結果次の事が認められた。
1 糠の加熱処理区は無処理区に比し、香気良好で悪臭が感じられず、硫化水素の発生もなく、酸量も少ない風味良好な糠床が形成された。
2 熟成に伴ない、糖類中キシロースは変化なく、グルコース及びフラクトースの発酵性糖は仕込初期に消失するが、蔗糖は加熱処理区では案外その存在が後期においても見られた。
3 熟成に伴ない、アミノ酸は無処理区では初期に濾化して減少するが、アンモニアの発生と共に一定化し、後期にはアミノ酸の再現も見られた。しかし加熱処理区では減少率も低く、ヒスチジン及びリジンは10日以後に.消失した外は後期までその存在が認められた。
4 有機酸としては、仕込初期に糠中のクエン酸、リンゴ酸、リン酸の3種が検出されたが、5~10日になると酢酸、ピルビン酸、フマール酸、蓚酸、乳酸が見られ無処理区の場合は10日後に酪酸の発生が認められた。
5 以上を総括して風味佳良な糠床は、酵母によるアルコールの生産、更に乳酸菌による乳酸の少量の生成がある場合である点からして、香味良好な糖味噌を作るには乳酸菌の繁殖を適度に禁抑し、酵母を一定の割合に存在させるようにすることであると推定した。
本研究の要旨は昭和40年7月、日本家政学会東北支部大会で講演した。

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