家政学雑誌
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乳幼児の身体発育ならびに精神発達に関する逐年的研究 (第11報)
生後5年間の身長・体重の発育と、知能指数との関係
斎藤 マサ
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1968 年 19 巻 3 号 p. 219-226

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抄録
1) 本研究は、乳幼児の身体発育と精神発達の関連性を知る手がかりとして、乳児初期の栄養方法別に、対象児の諸発育・発達について、縦断的に継続研究をすすめて来たものである。生後5年間の結果については、既に一連の報告をした。今後はこれに引きつづいて、個々のこどもの発育の変動について検討する計画である。その第1回の試みとして、今回は、生後5年間の身長・体重の発育の変動と、IQとの関係を検討したものである。
2) 資料の対象児は、生後5年間の調査資料が完備しているものを選んだ結果、男児は56名、女児は48名となった。調査は出生後6ヵ月前後から着手し、1才以降は6ヵ月毎に各家庭を訪問して、こどもの身体発育の計測と、精神発達検査を行ない、その他の参考事項は、主として母親から聴取した。
3) 生後5年間の身長・体重の発育の変動については変動係数と発育曲線を以て検討した。変動係数は、個々のこどもについて、各年令の発育の順位を求め、一定の方式によって算出したものであって、これによって生後5年間の発育の変動状況を検討したものである。変動係数が最も低い群は、男児においては、身長・体重ともに約1/3であり、女児においては、これより少なく、且つ男児にくらべて変動が大きい。この変動は、男女児ともに1才前後に最も著しく出現している。
4) 発育の変動の状況から、発育のPatternを分類し定増型、急増型、緩増型、複雑型の4型とした。
定増型は、発育の変動が少なく、調和のとれた型であって、男児は身長・体重ともに全例の約1/3をしめているが、女児はこれより少ない。女児で比較的多い型は、身長では緩増型であり、体重では急増型である。複雑型は男女児ともに身長よりも体重の方が多い。
5) 各年令の発育平均値±0.5σを中群とし、これより上位を上群、下位を下群として、3階級に区分し、これによって個々のこどもの発育の経過を検討した。検討の対象は、発育が比較的安定を見はじめた3才から5才までの3年間とした。この3年間を通じて同一系列を経過するものは、身長では85%前後であり、体重では70%前後である。従って身長の15%、体重の30%前後はこの3年間に2~3系列にわたったものであり、これらは3階級外として雑群とした。このような分類の結果、中群は身長・体重ともに上群および下群よりも少なく、又、雑群は身長よりも体重の方が多い。
6) 全般にわたって、身体発育において、下降の経過を示すPatternのものは、上昇のPatternのものよりもIQは低く、又、発育の分類において、下群のものは上群および中群のものよりも、IQは明らかに低い傾向である。
7) 発育の変動や発育の大小と疾病の関係は、6ヵ月毎に行なう調査では、直接の関連性を明らかにすることはできなかったが、食慾が常に旺盛なこどもは、いずれの発育においても良好な結果を示した。
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