抄録
1. かんぴょうをもどす時、塩もみ操作を行なうことは、組織をいためることによりかんぴょうの吸水が急速にかつ均等に行なわれるために有効であり、その結果細胞を膨潤させ、後で添加する調味料の浸透の均等化を容易にすると考えられる。特に浸漬と併用すれば一層効果的であり、この場合、重量増加は最大を示す!また、かんぴょうの引張強度、破断強度に対してもかなり影響を与え、塩もみ操作を行なうことによって加熱時間を短縮できた。
2. 無添加でもみ操作を行なうことは、浸漬時におけるかんぴょうの吸水を促進するが、かんぴょうの引張強度、破断強度に対しては、もみ0回、50回の両者間に有意差は認められなかった。
3. かんぴょうの引張強度と破断強度に対して、もっとも影響を与えるのは食塩と思われ、0.5%食塩水を煮汁に用いると、もみ操作を省略しても加熱時間は短縮できた。したがって、後で調味に用いる醤油の妨げにならぬ程度の稀薄な食塩水でかんぴょうをゆでることは、加熱時間の短縮に有効であると考えられる。
4. 糖分の溶出について、直接還元糖を定量した結果、洗浄水、浸漬水、煮汁中にきわめて急速に溶出するので、塩もみ操作後洗浄するという初期の物理的調理操作を少なくする必要があるが、本実験の結果からかんぴょうの調理にこの操作は有効と思われるので、できるだけ短時間に手早く完了させ、浸漬水、煮汁の利用も考慮すべきである。