抄録
アワビ肉を試料としてコラーゲンの存在を追求し, コラーゲンおよびテクスチャーの, 加熱による変化を調べた結果は, 次のように要約される。
1) アワビ肉中に多量に存在するNaOH不溶性蛋白の大部分は, コラーゲンであることが明らかとなった。
2) このコラーゲンは, 80℃加熱ではほとんどゼラチン化せず, 100℃加熱によって徐々にゼラチン化するが, その量はきわめて僅少である。
3) アワビ肉コラーゲンは加熱によって酸性および塩基性の極性基が増大し, 同時にアンモニヤの生成が認められた。
4) アワビ肉の硬さは, 他の肉類と異なって, 加熱によって減少することが認められた。またこの事実と, コラーゲンの極性基の加熱による増加とは, 密接な関係があるものと推定される。