抄録
数種の市販砂糖についてDTAを用いて加熱による変化を研究し次の結果を得た.
1) 純度の高い砂糖は90℃付近で最初の変化を示し, 170℃前後で分解の始まる顕著な吸熱カーブを示す.この温度は砂糖が加熱により融解し褐色になる点で, 吸熱ピークをすぎた190℃から黒変する.
2) 不純物を含む砂糖は付着水や不純物の影響で純度の高いものより吸熱カーブの起点温度が低い.
3) 無水ブドウ糖は純度の高い砂糖と似たカーブを示すがピーク起点温度が142℃で純度の高いショ糖より低い.含水結晶ブドウ糖はピーク起点温度70°, 120°, 148℃の吸熱カーブに大きな特色があり, 70℃のとき脱水が起り, これによって低温で変化が起るとと考えられる.
4) 数種の単糖類並びに少糖類のDTAを測定した結果, ほぼそれぞれmpに対応したmainpeakが現われた.この結果は砂糖類ブドウ糖類とも共通したものでこのピークの温度差は糖の種類の違いであると考えられる.
5) TLCと定性反応の結果
上ザラを200℃に加熱した際の分解生成物をTLCにかけた結果7種類のスポットが認められた.そのうちサッカロース, グルコース, フラクトースは確認されたが, 後の4スポットは今後ガスクロマトグラフィ等により検討したいと思う.
以上の実験によってわかるように加熱温度のわずかな相異により加熱糖類の物理的な性状が異なるので, その性質を利用することは調理上大切なことである.さらに今後DTAによる変化を熱天秤により重量変化を測定し考察を深めたいと思う.