抄録
15%エタノール水溶液および対照として蒸留水を用いて, 26℃, 90℃および沸点において処理された鯨肉の重量に及ぼすエタノールの影響を検討した.
温度が低いほど処理後の肉の水分含有率, 重量および水分は高くなり, 逆に処理液の固形分は低くなった. 一方, 肉の乾物量では温度の影響が比較的少なく, 26℃, 30分浸漬後のそれは直接加熱10分後の値とほぼ等しかった. 同一温度では, エタノール溶液の場合の重量, 乾物量および水分は水の場合よりも高い値を示したが, 水分含有率, 処理液中の固形分および可溶性物質は低い値を示した. 浸漬処理, 浸漬後直接加熱, 浸漬後浸漬液を交換して直接加熱および直接加熱の実験結果はエタノールの肉組織に与える影響が水とは異なること, 煮汁中の大部分の固形は少なくとも2つの成分の結合により形成されることおよびエタノールは酵素分解または自己消化を防ぐ効果のあることを示唆している.