抄録
以上被服衛生学的考察を要約すると次のとおりである.
1) 綿織物や毛織物の被験服は, 衣服気候では, 冷房室冷風下で低湿度となり冷感があるが, 自然環境の作業時は合成皮革や人工皮革の被験服に比してやや良好である.しかし作業時に衣服圧の高くなる部位もあり, そのため仕事がしにくく衣服の不適合も訴えられた.
2) 合成皮革や人工皮革の被験服は, 冷房室冷風下の衣服としては防風性がすぐれるが, 夏季自然環境での作業時の衣服としては, 衣服気候が高温高湿化し, 快適でない.しかし衣服の適合は良好で作業がしやすい.疲労については衣服気候の悪化の影響で自覚的疲労症状の訴えが多い.
3) 綿織物, 毛織物と被服材料的性質に大差のある合成皮革, 人工皮革をほぼ同一形態に構成した衣服を着用した場合, 安静時では衣服気候上大差はないが, 作業時では, 衣服圧が大で不適合を訴えた部位について, また環境気候に適合させるための衣服のゆとり, 形態についての示唆を得た.