抄録
児童の食物嗜好に影響を及ぼす性格特性や両親の養育態度の各要因を重回帰分析および判別分析によって検討した.その結果は次のとおりである.
1) 性格特性および親の養育態度は, 児童の食物嗜好と密接に関係するが, その寄与率は女子に比べて男子の場合がいずれも高かった.
2) 性格特性12因子のうち, 寄与率80%以上で食物嗜好を説明する少数因子は, 男女それぞれ6因子ずつであった.主要因子としては, 男女に共通の活動性, 主導性の因子であり, この他男子では回帰性傾向, 協調性欠如, 女子では劣等感, 客観性欠如などの諸因子が関連した.
3) 同じく両親の養育態度10因子のうちの少数説明因子は, 男女それぞれ4因子であり, 保護的態度や矛盾・不一致的態度に関するものが主要因子であったが, この他に積極的拒否型, 期待型, 盲従型などの諸因子にも関連がみられた.
4) 性格特性, 養育態度の少数因子計10因子を用い, 好き嫌いのある群, 普通群, 好き嫌いのない群の3群について判別分析を行った結果, その誤判別は15~32%の範囲であったが, 好き嫌いのある群とない群の判別の精度はかなり高かった.
5) 調査サンプルについて, もとの分類群と判別関数により求めた判別群の検証を行った結果, 前項の判別結果とほぼ一致した.