家政学雑誌
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タブーよりみる日本人の生活慣習
埼玉県秩父郡大滝村の場合
根笈 美代子
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1980 年 31 巻 3 号 p. 202-213

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抄録
以上の調査結果を要約すると次のようになる.
(1) タブーの禁止形よりみると, 大半が, 「…するな, …しては悪い」「…すると…になる」という形で残っている.
(2) タブーがどの程度生活慣習として認められているかについては, 5割近くの人が, 「実践している」と答えたタブーが, 全体の約3割あり, また, 個人評点が3.0 (最高点6.0の半分) をこえる人が5割近くいる.ということは, タブーが生活慣習として, 割合に高く受け入れられていることを示している.
(3) 若年層から高年層になるにつれ, 社会的なものに関わるタブーへの関心が高まっている.
(4) 生業との関係では, 大滝村の場合, 最も自然との関わりが深い農林業に従事する者 (農林業従事者の人口は減少してきているが) のタブーへの依存度, 肯定度が高い.
(5) 竹中の全国調査結果と同様に, 「葬式の忌, 死のけがれ」に関するものが, とくに評点が高く, また, 生活内容別には, 食, 衣, 住生活など日常生活に関わるものの評点が高かった.
(6) 性別には, 月経など女性に関わりの深いものは, とくに大きな差がみられ, 女性のほうが評点が高い. 全体的には, 男女差はみられなかった.また, 地域的には.近接した3部落であったため, 顕著な差はみられず, 大滝全体の傾向であるとみてよいであろう.
以上であるが, 今後さらに, タブーをたんなる宗教としてとらえるのではなく, 生活慣習としてのタブーが, 人間生活において, どのような機能を果たしているのかなど考えてゆきたい.さらに, 地域的変化, あるいは生業との関わりについて等々, 研究を重ねてゆきたい.
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© 社団法人日本家政学会
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