家政学雑誌
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床面の特定条件における電気掃除機の除塵性能
申 京珠上林 博雄
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1983 年 34 巻 11 号 p. 713-722

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抄録

家庭用電気掃除機の除塵性能の評価方法として日本では最大吸込仕事率のみをとり上げている.
しかし諸外国の規定ではそれ以外にも生活の中で必要な種々の床面の特定条件での実際的な試験方法をとり入れている.そこで掃除機の国際規定IECおよび英国規定BSIにもとついて, 床のクレバスからの除塵性能, カーペットからの糸屑の除塵性能をとり上げ, これらの性能とJISの最大吸込仕事率および平滑な床面に床用ノズルを使用する場合に相当する吸込仕事率との相関を調べた.また集塵量の増加による吸込仕事率の変化を求め, 本実験使用のゴミ量の実験データへの影響を検討した.
1) 機種別の吸込仕事率 : 平滑な床に床用ノズルの使用を想定した場合の吸込仕事率は入力ワット数に正比例する.掃除機の機種を変えればこの関係はやや弱くなるが, 一応は成立する.また実使用時はどの機種も最大吸込仕事率の15%以下の性能になるが, 一応は最大吸込仕事率が高い機種ほど, 前述の吸込仕事率が高くなるといえる.
2) クレバスからの除塵 : 採用掃除機のうち, シリンダー型とショルダー型はよく除塵するが, アップライト型はこの掃除にはむかない.したがってクレバスからの除塵は最大吸込仕事率や使用時の吸込仕事率との関係よりも掃除機の機種によるといえる.これは床用ノズルの吸込口付近の局部気流の様相に支配されるのである.
3) カーペットからの除塵 : 毛が長いほど除塵率が低く, 機種別ではシリンダー型, アップライト型, ショルダー型順に低くなる.しかしどの機種も1サイクル掃除で20%以下, 5サイクル掃除で60%以下の低い除塵率であった.したがってカーペットの除塵用の機種の開発が望まれる.またカーペットからの除塵性能は前述の吸込仕事率よりもむしろ最大吸込仕事率との相関が見られた.
4) カーペットの糸屑の除塵 : もっとも掃除機の機種に影響され, ピーター付のアップライト型は1サイクルで100%, シリンダー型57%は, ショルダー型は48%の除塵をした.
5) 集塵による吸込仕事率 : 無機質ゴミ35gを使用したカーペットの積塵の場合のみやや問題が残るが, この性能は使用時の吸込仕事率よりも最大吸込仕事率と相関することが明らかになったので, 本実験のデータは集塵量に影響されていないといえる.
以上を結論すれば電気掃除機のJIS規格において消費者の機種選択に資するため, 「吸込仕事率」の規定のほかに, なおクレバスからの除塵およびカーペットからの糸屑の除塵に関してその能力を示す試験法と示度を追加すべきであると結論される.

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