家政学雑誌
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中高年男女の勤労観
酒井 ノブ子篠原 冬
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1984 年 35 巻 4 号 p. 287-293

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抄録

1) 勤労観に対して基本的に関連のある生きがいの対象については, 総じて男子は仕事・勉強に対象を求めており, 自己実現志向型が多く, 女子は子や孫の成長と毎日の生活そのものなどが対象となっており, 家庭志向型が多かった.
2) 生活に対する姿勢では, 男女ともに努力型が多いが, 女子は男子より人の和を大切にする傾向がみられた.
3) 勤労に対する態度としては, 年齢や学歴によって男女間に多少の違いはあるが, 男子のほうがより意欲的であることがうかがえた.
4) 仕事の選択では, 男女ともに, 収入よりも能力発揮できるものや, 世間の評価の高いものを望んでおり, 男子よりも女子のほうが, より世間の評価の高いものを選ぶ傾向がみられた.なかでも35~44歳の年齢層と低学歴の人にその傾向が強かった.
5) 勤勉については, 年齢や学歴などによって多少の差異はあったが, 男女とも約半数は, 勤勉は美徳であり, まじめに働けば報われると考えていた.また日本人は働きすぎということについては, 男子のほうがより否定的で, 女子よりも勤労に対して積極性がうかがえた.
6) 余暇についての姿勢は, 男女の間に多少の違いがみられ, 女子が男子よりもやや真摯的であった.しかし一般の人びとの余暇の過ごし方に対する評価は, 男子のほうがより批判的で客観的であり, 女子は視野が狭いためか, 評価しねかているものが多かった.
以上のように, この研究はあくまで事例研究にすぎないが, この調査によって中高年男女の勤労観の比較についてある傾向を知ることができた.また仮説は一応検証できたと考えている.今後は老年男女の勤労観について調査研究し, 日本人の各年代層の勤労観についての特徴を明らかにして, 家庭経営上に活用したいと考えている.

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