家政学雑誌
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鶏卵の泡だて方の相違がケーキの品質に及ぼす影響について
村田 安代岡本 純代茂木 文枝小林 トミ寺元 芳子
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1986 年 37 巻 3 号 p. 163-173

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抄録

スポンジケーキは調製方法によってケーキの品質は著しく異なるといわれているが, その成因はあまり明らかではない.そこで, 本報では鶏卵と砂糖によって作るフォームの調製方法に注目し, 別だて法としては, メレンゲの中に卵黄をさっくりまぜる方法 (別だてA法と記す) と卵黄・砂糖を十分に攪拌して加える (別だてB法と記す) の2方法および全卵・砂糖を合わせて同時に攪拌する共だて法の計3方法により, フォームとバッターを調製し, 主観的な測定法と客観的な測定法を組み合わせて, スポンジケーキの品質とのかかわりを比較検討し次の知見を得た.
1) フォームの比重は別だてA法が高く (0.26), 別だてB法と共だて法はともに低く0.22前後であった.しかし安定性は別だてB法, A法, 共だて法の順に低下した.またフォームの状態は, 共だては流動性が大きい.
2) よい性状のケーキは泡だて時間が別だてA法では6分, B法では8分, 共だて法では5分であった.
3) 共だて法のフォームとバッターは粘性的要素が高く, 相互に接触する泡が合併しつつ急速に拡大するのにくらべ, 別だて法のは弾性的要素の高い小さい気泡が独立して成長していくようすが観察された.
4) ケーキの表面の焼き色・内部の色は, 共だて法がもっとも濃く, 内部は黄色味を帯びていた.
5) ケーキの膨化度は別だてB法, A法, 共だて法の順で, きめの細かさは別だてA法, B法, 共だて法の順であった.共だて法のケーキは, きめが粗く, 官能テストの総合評価 (スポンジケーキらしさや好ましさ) ではもっとも劣るが, 風味はよくしっとりしていた.

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