1990 年 17 巻 4 号 p. 397-407
標準体重法あるいは皮脂厚法によって, 肥満あるいは正常と判定された被検者の生化学検査成績の平均値と異常値の出現率を比較し, 中高年男性に対する臨床的集団スクリーニング方法としてのこれらの肥満判定方法について検討した結果, 以下のような知見を得た。
B, C群間には, TC, HDL-C, β-L, TG, FBS, GPTの平均値においてそれぞれ有意な差は認められないが, 両群はA群よりもTC, β-L, TG, FBS, GPTにおいて有意な高値を示し, HDL-Cにおいて有意な低値を示した。またB, C群間にはTC, HDL-C, β-L, TG, FBS, GPT, γ-GTPの異常値の出現率においてそれぞれ有意な差は認められないが, 両群はA群よりもそれぞれ有意に高率であった。
しかし, C群はB群よりもTGの平均値が有意に高く, TGとγ-GTPの異常値の出現率においても有意に高率であった。従って, 標準体重法は皮脂厚法よりも脂質代謝異常や肝機能異常とより密接に関連していると思われる。
以上の結果から, 現時点での肥満の臨床的スクリーニング方法としては, 標準体重法を主として, 皮脂厚法を参考にするのが妥当であると思われた。