日本総合健診医学会誌
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総合健診長期反復受診者の縦断調査
―耐糖能障害発症に及ぼす因子の検討―
奥田 克子津下 一代岩塚 徹
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2001 年 28 巻 4 号 p. 434-438

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抄録

個人の健診成績を長期管理し, 正常から糖尿病発症に至る過程を検討すること, またその危険因子を探り, 一次予防に役立てることを目的として解析を行った。対象は, 過去20年間の総合健診延べ47万件のうち, 過去5回以上かつ10年間以上の反復受診者で, 成人男性かつ, 初回の空腹時血糖値 (FPG) が110mg/dl未満であった11, 123症例, 延べ約13万件をデータベースとした。FPG値が, 経過観察中1度でも126mg/dl以上となった者を糖尿病群, 110mg/dl未満が継続している者を正常群, 両者いずれにも含まれない者を境界群の3群に分け, 初回受診時の臨床検査項目を3群間で比較した。初回受診時FPG値, BMI, ALT, トリグリセライド (TG) は3群間で有意の差を認めた。最終回FPG値の説明因子を初回検査項目より検索した。最終回FPG値に関与する因子は, 初回FPG値, BMI, ALT, TGであった。さらにFPG値別に糖尿病に移行しない割合をCox回帰分析で算定した結果, 初回FPG値が90mg/dl以上95mg/dl未満であれば, 20年後に糖尿病に移行する可能性が10%程度であることが, 逆に105mg/dl以上110mg/dl未満の場合46%が糖尿病に移行することが予測された。

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