抄録
繰り返し暑熱曝露によるストレス評価に関する先行研究を引き継ぎ,曝露時間の違いによるストレス表出への影響を検証することを研究目的とした.若年男性8名を対象に,人工気候室の主室の気温(Ta)を33℃に制御し,副室の気温を26℃に制御し,2室間の温度差をΔ7℃とした.主室の滞在時間を10分間(条件1),15分間(条件2),20分間(条件3)の3条件とし,5回の繰り返し暑熱曝露中の心電図,皮膚温,耳内温,発汗量,および唾液アミラーゼを測定した.また,自覚症状調査及び温冷感,快適感を記録した.その結果,HFの結果は,曝露時間が長くなると慣れの効果が見られないことを確かめた.体温は条件2及び条件3で高く,発汗量も多い結果を示したが,自覚症状の経時変化では,条件1が高く,曝露時間が長い条件2や条件3では値が低かった.以上を総合的に考察すると,曝露時間の違いは生理的ストレスの大きさに影響を及ぼさないことが示唆された.また,暑熱曝露後の回復度の違いも推定したが,総合的に判断すると,条件間に違いを確認することはできなかった.