抄録
本研究は、永井荷風の日記「断腸亭日乗」を用いて、四季にわたって、その温熱環境をどのように表現しているのかを明らかにすることを目的とする。特に、語「寒」「暑」「涼」「暖」「冷」の月毎の使用頻度と、相互にどのように使用されるかを解明する。その結果、「暖」は、「寒」が用いられている時に対立表現として用いられている。「涼」は「暑」が用いられている時に対立表現として用いられている。「冷」は季節の端境期に用いられる傾向を見いだした。さらに、暑さと寒さにおいて、その影響の強弱に応じた表現が行われていることを示した。