本研究は、夏期の温熱環境の実測調査を通して、奈良市の旧市街地「奈良町」の町家における温熱・空気環境形成機構を把握することを目的とする。主に前庭・中庭・それらの間に位置する屋内において、温湿度、風速、グローブ温度、水平面全天日射量、放射温度、中庭と前庭の差圧の測定、気流の可視化を行った。それにより、以下の知見が得られた。測定時間全体において、地面が土の部分の方が、砂利の部分より地表面温度が高い傾向がみられた。気温は屋外よりも屋内の方が低温である傾向がみられた。風速の測定により、前庭と座敷の風速に相関がみられるが、中庭と座敷、中庭と前庭の風速の相関は弱いことが確認された。CFD解析に基づく流れ場・温度場形成メカニズムの分析が今後の課題である。